物書きは、白き塔から夢を見る。

えふお

第1話 開かれし物語

 気が付くと見知らぬ場所にいた、ここはどこかと記憶を巡らそうとしたが、自分がどこの誰かすらも思い出すことができなかった。

「ヴッ、頭が・・・!」

ひどい頭痛に加え、体も重い。


それにしても、ここはどこなんだろうか。

一面、白い部屋に扉はなく、ただ真ん中に台座のようなものがあるだけだ。


「なにも…ないのかなぁ」


ただ何となく、台座の表面を撫でてみる。


<システムを起動します>


「うぇ!?」


<個体を認証しました>


部屋に女性の声が響く。部屋を見渡しても、人の姿はない。


「誰かいるのか!」


<―――の成功を確認>


自分の声で聴きとれなかった。しまったなぁ。


<ステータスを表示します>


その声と同時に台座に光の文字が映された。


----------------------


未定/人間Lv.1


スキル/【戦斧の心得Lv.1】【視力強化Lv.1】


称号/【知を得た者】


----------------------

「すてーたす?…なんだかわからんなぁ」


僕のことが書かれているのだろうか。

それにしては情報が少ないし、まったく意味も分からない。


「せめてここの出方でもわかればなぁ」


ほかにも何かわかることはないだろうか、と台座を撫でてみたり、たたいてみたりする。


「ん?何だぁこれは」


台座の側面から何かが飛び出ているのに気づく。


「…鍵かねぇ」


この部屋と同じ材質でできているであろう白い鍵を手に取る。


「この部屋のカギかな、それじゃあどこかにカギ穴が?」


鍵穴を探そうと振り返った。


「あ、あれ?」


振り返ったところに壁はなく、通路が現れていた。


「行ってみるしかないよなぁ」


通路を進みいくつか階段を下りる、しっかりとした部屋のようなものはさっきの部屋を含めて二つのみ

だったが、道すがらなぜか通路に大量に落ちている衣服を状態のいいものを選んで着替えた。

鎧や武器は必要なのかわからないが、こういうものが落ちているということは必要なのだろう。

鎧は軽いものを、武器は、すてーたすとかいうものに、【戦斧の心得】というのがあったし、斧のほうがいいのかもしれない。


そして迷路のように入り混じっていた通路を抜けついに一番下まで来たようだ。

そこから外への道は遠くはなかった。


「んあ、眩し…」


光に間が慣れ、目に映った光景はとても、とても、


「美しいなぁ、壮大な冒険の始まりって感じだ」


風に波打つ広大な草原と青い空、遠くにはうっすらと街が見える。

ふと後ろを振り返ると、天高くそびえたつ、真っ白な塔があった。


「あのてっぺんにいたのかなぁ」


いったいなぜ、と疑問が浮かぶが、新たな冒険の始まりというものに高揚が収まらない。

頭の靄を振り払って、僕は草原を駆け出した。

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