第4話 『真』鼻としての機能

とても良い香りで私は起きた。

パンの香ばしい匂いとラズベリーの甘酸っぱい香りだ。

ずいぶんと久しぶりに気分の良い目覚めだった。

最近は二日酔いで気持ちが悪くなって起きるか頭痛で起きるかのどちらかだった。

その間はとても後悔し当分飲むのをやめようとするのだが結局夜になると私の憂鬱な感情にお酒の魅惑さが絡まり合い、私の紙のように薄い決意をいとも簡単に破り捨てていくのだ。

元より私は優柔不断な性格であった。

このことが原因で私の人生を大きく変えるのだが詳しくは今度説明しようと思う。

話を戻そう。

私は隣で寝ていた彼女がいないことに気がついた。

ここがどこだかわからない以上動かないでいるのが得策なのだろうが、彼女のことが気になったのと私の空腹をくすぐるような香りが私を行動させた。

布団を剥ぎ、先程までベットの下に脱け殻のような形で落ちていたはずの私の服を探すと部屋の中央に置いてある机の上にたぶん彼女が畳んだのであろうものが目に入った。

すぐさまそれを身につけ部屋を出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る