第113話~頑張れチック

 「ソレイユさん。おはよう」

 「おはよう」


 INすると、いつも通りユージさんが、ゴリゴリと臼を引いて魔石を粉にしています。

 地面の下の魔法陣を復活させた私達は、虹の刻が終わる頃だったのでリアルの次の日にINしようと、テントを張りログアウトした。

 今日は、ゲーム内の10日の光の刻。


 「よし。じゃまずは、チックに会いに行こうか」

 「賛成!」


 INしたらチックに会いに行く。私達の日課? の様になってます。

 私達は、テントはそのままにヒムネさんがいる森へワープしました。


 ついて私は、あれっと一瞬周りを見渡してしまいました。だって、見覚えのあるふくろうが、プランターのミミズを美味しそうにつついているのです!


 「ロウさん!? 何故、あなたがここにいるんですか!」


 ユージさんが驚いて言うと、ロウさんはスッと人になりました。


 「君達に聞いてまずは見てみようと来てみると、ミミズがね……」


 ロウさんの所にも畑を作ったのに……。

 ロウさん以外の鳥も数羽いるので、集めてくれている事はいるみたい。

 枯れていた木も一割ほど復活しています。


 「ユージさんの作戦、大成功だね。復活して来ているね!」

 「うん。枯れた木がなくなれば、鳥じゃないお友達も来てくれるだろうし、精霊も来るかもしれないね」


 私は、うんうんと頷いた。

 そうなったらアニマルパラダイスだわ!


 「おかえり、二人共」


 ヒムネさんも人になり、そう挨拶をした。


 「ただいまです」

 『ユージ! ソレイユ』


 声の方を見ると、タタタっと走って大きな青い鳥が羽を広げ直進してきます!


 「きゃ」


 衝突するかと思ったけどユージさんが私を抱きかかえ、難を逃れました。

 危なかった。吹っ飛んでいたかも。


 「う、嬉しいのはわかるけど、危ないから」

 『ごめんなさい』


 チックだよね? 私が背に乗れるぐらい大きくなっています。って、大きくなりすぎでしょう!

 そしてチックは、すらすら話せるようになっていた。これも凄いです。


 「そうだ。二人にお願いがある」


 ロウさんが、真面目な顔でそう言った。


 「なんでしょう?」

 「ずっと向こう側に虹を望む丘という場所がある。今そこで異変が起きているらしい。私はここで待っているので、確認をしてきてほしい」


 ユージさんが聞くと、ロウさんはそう言って島の奥を指差しました。

 名前からして虹を見られる丘かもしれません。

 確認と言ってますが、解決してほしいって事だよね?


 「わかりました。そこまで運んでもらえますか?」


 ここは、離れ小島みたいで、陸続きになっていません。

 そのうち橋を掛けようとは思ってるけど、今は向こう岸に連れて行ってもらわないと進めません。


 「送ってやりたいのは山々なのだが、我々には領域が決まっていてここまでなのだ。そうだ、魔法陣でちょちょいと渡ったらどうだ?」

 「いや、それはちょっと無理かも……」


 この森はすでに、魔法陣だらけで描く場所がないのです。


 「はい! 送る!」


 そう名乗りを上げたのは、チックです!


 「それも無理じゃないかな? 僕達を運ぶんだけど?」

 「大丈夫!」


 チックは、私達の役に立ちたいのかもしれません。


 「じゃ、試してみようか?」


 ユージさんがそう言うと、チックは大喜びです。

 早速私達は、チックの上に乗ります。

 鷲掴みにするのには、掴む力が足りないので乗る事になりました。

 でも二人並んで乗れないので、私はユージさんに抱っこされて乗ります。


 「準備OKだよ」

 「はい!」


 ユージさんが言うと、チックは元気よく返事を返しますが、パタパタしても少しも浮きません。


 「う、浮けない……。うわあん」

 「え? 大丈夫だから」


 泣き出したチックに私達は大慌て。


 「ソレイユだけなら飛べるのではないか?」


 そうヒムネさんが言うと、泣いているチックにユージさんは私をちょこんと乗せた。


 「まず浮けるか試してみて」


 泣きながらチックは、一生懸命パタパタとします。そうすると、ふわっと浮いたのです!


 「浮いたよ!」

 「ちょっと待って!」


 そのまま飛ぼうとするチックを慌ててユージさんは止めた。


 「今、テントを取りに行ってくるから……」


 そういう事で、私は一旦チックから降りて、ユージさんと二人でテントにワープ。畳んでしまうと、またチック達がいる森へワープして戻りました。

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