第93話~呪いの森にある一本の樹《き》

 思った通りありました。

 渦巻で結界を張る方法です!


 渦巻の中心の魔法陣を展開する為に、周りの魔法陣から魔力を供給している連携魔法陣。

 強力な魔法陣だけど、魔法陣からしか魔力を供給出来ないみたい。

 そして、周りの魔法陣は、発動していない時は魔力を吸収し続ける魔法陣で、設置した時から効果がある。なので必ず魔力がある場所で描く必要がありますと書かれていました。発動した魔法陣は、消滅すると書かれています。


 という事は、一瞬周りに魔力が無くなった状態があったって事なのでしょうか?

 とりあえず、ユージさんに内容を話しました。


 「うーん。それって、本来は中央の魔法陣を起動する為の魔法陣なのかもね。だから役目を終えた魔法陣は、消滅するようになっている。それを使ったからきっと、不具合が出たんだろうね」


 なるほど。アレンジしたわけね!


 「今回、中心の魔法陣が何の魔法陣なのかな? 本は結界ってなっているけど。ヒムネさんに聞いたらわかるかな?」

 「え? 結界じゃないの?」

 「じゃないと思うよ。もし結界だとして、それで呪い、つまり魔力を抑えたとしたら、それ以外の魔法陣は全て消えていておかしくないからね。魔力の放出自体は、抑えられてはいない。だから周りの魔法陣は、今でも存在しているんだからね」

 「そっか。じゃ、もしかして、中心の魔法陣の方がおまけみたいな感じなのかな?」

 「かもしれないね。でもヒムネさんに均等を保つ様に伝えられているから、何らかの役割は果たしているとは思うけどね」


 私達は、テントの外に出た。そして、ヒムネさんに近づきます。


 「あの、大変の中すみませんが、質問宜しいですか?」

 「あぁ。大丈夫だ」

 「さっき、均等を保つと言っていましたが、具体的に何をしているんですか?」

 「うん? この樹木を生命のにする為に、均等に生命マナが行き渡る様にしています。この魔法陣から供給される生命は、ばらつきがあるのです」

 「ばらつき?」

 「はい。元々そうだったのですが、呪いが溢れだしたせいで、私が均等を保つ様にしないと、うまく均等に出来なくなったようなのです!」


 生命の樹……って、もしかして、あの生命の枝の木?

 よくわからないけど、こうやって作ったものだったの?!


 「ユージさん! この木って!」

 「ソレイユさん。この魔法陣は……うん? 木?」


 私に振り向いたユージさんは、私の言葉で木に振り向きました。


 「生命の枝ってあったよね……。それの木かなって」

 「あ! なるほど! そうだね。ソレイユさん! この魔法陣の仕組みがわかったよ。きっと、あの木の所の魔法陣は、この森にある魔法陣を反映しているんだと思う!」

 「え? えっと……」

 「たぶん、湧き出る魔法陣は、均一じゃなくて場所によって濃度が違うんじゃないかな? それに合わせて吸収力を変えて魔法陣を設置してあった。だから濃く出ていた魔力が減って、一瞬魔法陣が魔力を吸収出来ない事が起き消滅したんじゃないかな?」


 そっか!

 周りの魔法陣も魔力を吸い取っているから弱まった魔力で、吸収出来なくなった。魔法陣は発動して消滅した。

 でも、魔力は出なくなった訳ではないので、そういう魔法陣が増えれば、残りの魔法陣では吸収しきれなくなった。

 だから周りの木々が、魔力に犯され枯れて行った……。


 「ここの人達は、魔法陣の事については疎いから原理なんてわかってないと思うんだよね。たぶん、これ以上魔法陣が消える事はないと思うけど、今残っている魔法陣では、魔力を吸収しきれないって事だろうね」

 「じゃ、直接的には、生命の樹の魔法陣とは関係ないって事?」

 「そうだね。仮説が正しければだけど。均等を保つというのは、集めた魔力は、配置した魔法陣と連携していて、それにそうとうする場所に生命として変換されて、湧き出てるんじゃないかな? だから魔法陣が消滅するとその場所からは生命が放出されなくて、ムラになってるってことじゃないかな?」

 「それって、そうしないと生命の樹が育たないからって事?」

 「かもしれない。吸収した魔力を利用して、生命の樹を育てていたんだろうね」

 「え、でも。今みたいな事が起きる可能性があるってわかってるよね? 作った時も」

 「たぶんだけど、そういう特性の木なんじゃないかな? 生命の樹になれば、魔力を生命に変えて吸収できる。それまでの仮の処置。だけど、それまで上手く魔法陣が働かなかったんじゃないかな?」

 「そっか。なるほど」


 ユージさんの言う通りならこの魔法陣を直せば、いずれこの木は生命の樹になるって事だよね? そうしたら生命の枝が使える!

 って、どっちにしても元に戻さないと、ここが魔物だらけになるって事だよね?


 「この木が後どれくらいで、生命の木になるかだけど、僕達が出来るなら魔法陣を復活させた方がいいんだろうね。じゃないと魔物の住処になる可能性がある」

 「わかったわ! 魔法陣を復活させましょう!」


 ユージさんは、力強く頷きました。

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