第92話~呪いの正体と渦巻
その昔、この森は精霊達で溢れ程、精霊の花が咲き誇っていた。
だが異変が起き始める。木が枯れ始めたです。
そこにちょうど現れた錬金術師が、呪いを吸い取る魔法陣を描き、木々が生気を取り戻します。
とても神秘的な森が戻ったのです。
ただし、吸収用の魔法陣は発動させてはならない。
この魔法陣は、呪いの力を使って、違う魔法陣を展開する事によって均等を保つ。その為、発動させると均等が崩れ、呪いを吸収しなくなる。
もし万が一、魔法陣が発動した場合は、森番が均等を保ち、その間に発動した魔法陣を元に戻す様にと伝えられたのです――。
森番のヒムネさんが、語ってくれました。
「発動してしまった魔法陣は、一旦魔力を抜く事で発動が止まる。そうすればまた、元の呪いをここに供給する魔法陣となる」
「いくつぐらいの魔法陣が、発動してしまったのでしょうか?」
ヒムネさんは、首を振った。
「わからない。気が付いたら森が枯れ始め、慌てて均等を保つ様にしたのだが、呪いが溢れ出ているようだ」
「……そうですか」
ユージさんは、ヒムネさんの答えを聞いて軽くため息をつきました。
これって、魔法陣を消してもいけないって事だよね?
私に出来るでしょうか……。
「取りあえず、板の地図で魔法陣の数を確認しようか」
「うん」
なるほど。板の地図を使えば、魔法陣が表示される。発動しているかどうかは、わからないけど数と位置は確認できます。
私は、リュックから地図を取り出しました。
「あれ?」
何故か板に地図が浮き出ています。
変です。魔石を粉にして穴に入れないと、起動しないはずなのに。何故でしょう?
「ユージさん。何か地図が表示されてる」
「……これって」
覗き込んだユージさんが、驚いています。
「ここ見て」
ユージさんが、板の地図のある部分を指差しました。そこには、この地図が起動していられる時間、つまり地図として使える時間が表示された場所でした。
その数字は普通は、減って行くものなのですが、ゆっくりと増えていっています!!
「何これ!?」
「これが呪いの正体かもね」
「えぇ! これが? どういう事?」
私が驚いて聞くと、ユージさんは辺りを見渡しました。
「この森全体が魔力を帯びていて、放出しているって事。ほら、そういう場所は、魔石が出来て魔物が出現するって言ったでしょ? それに近い状態じゃないのかな?」
精霊のシェリルさんとハーキュリィさんが居た森にもそういう場所があった。そこは、地図では毒沼という事になってますけどね。
魔石ができやすい場所って、色んな弊害があるって事なのね。
「うーん。まずは、地図で魔法陣の位置を確認しようか」
ユージさんは、そう言って地図を縮小していく。
「何これ……」
驚きました!
この森は、今ヒムネさんが止まっている木の下に描かれた魔法陣を中心に、渦を描くように魔法陣が描かれているようなのです!
ほぼ森全体に描かれています……。
「これ、探すだけでも手間だね。というか、ここら辺を見渡しただけでも見える魔法陣が、あの止まり木以外に無いみたいだから発動しても見えないのなら探しようがないかもしれないね」
ユージさんに言われ気づきましたが、地図上いっぱいある魔法陣は、ここからだとヒムネさんが止まっている木の下以外見当たりません!
たぶん、私達が立っているこの場所にも魔法陣があるはずです。
「ダウジングで探してみる?」
私は聞いてみた。
ダウジングで探してたとしても発動を止める方法があるかどうかだけど。
「まあ、それで探すのも一つの手だよね。問題は、ソレイユさんが魔法陣を描けないって事かな。いや、描けるけど、すぐに発動する可能性がある」
「うん? どういう事?」
「魔法陣の種類にもよるかもだけど、魔力を流し込むと発動するようなタイプだと、描き終わった瞬間に発動するだろうね。勝手に魔力が流れ込むんだと思う。だから板の地図も勝手に起動した。そして、消費するより多い量が流れ込んでいる。ここでは、MPいらずだね」
「あぁ、そういう事なのね!」
今更ながら納得をしました。
きっと、発動してしまった魔法陣を止めるのには、その魔力を魔法陣に供給されないようにしない限り無理って事ですよね。
そんな事出来るのかな?
「でもまあ、この状況下で魔法陣をこれだけ描いているのだから方法はきっとあると思うよ」
なるほど!
さすがユージさん! まだチャンスはあるのね!
「まずは、テント出してみようか」
「え? テント?」
「うん。試したい事があるんだ」
「わかったわ」
私は、リュックからテントを出しました。そしてテントを設置。
そのテントに地図を持ってユージさんが入って行くので、私も中に入りました。
「思った通りだ。ここは、外の影響を受けない空間になってるね」
そう言って地図をみせてくれて、地図に表示される時間が通常通りカウントダウンされています!
「もし万が一の時は、この中で黒板を使って魔法陣を描くって方法が使えるよ」
「そうだね! ユージさんって頭いい」
「でも、一歩外に持ち出せば発動するからね」
「そうだね。じゃ、まずは何か方法がないか本で探してみるね!」
私が言うと、お願いねとユージさんは、頷きました。
草原の結界もこのおじいちゃんが残してくれた本に載っていました。だからきっと、今回もあると思う。
私は、本を開いた――。
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