第28話~重すぎです!
私とユージさんは、洞窟の入り口の壁によしかかって座っていた。私は本とにらめっこ。
森に戻った所で自分の居場所が把握できなければ、どうしようもないという事で、どうにかしてコンパスを活用できないかと本から探す事にした。
暫くして、とうとう見つけました!
コンパスと地図が連動した物を! でも私達は残念ながら地図を作る為に渡された紙しか持ち合わせていません。そこで紙に変わる板を作る事にしました。
粘土を平たく伸ばすだけなんですけどね……。
問題は魔石を粉にしなくてはいけなくて……。そこで、握力に経験値を全部振ろうかと思います。後はあの布を使ってみるのです。
「ねえ、ユージさん。地図とコンパスが一緒になったアイテムを発見したんだけど……」
「え?! すご!」
「……でも問題があってね。魔石を粉にしなくちゃいけなくて。経験値全部握力に振ってもいいよね?」
「う~ん。構いはしないけど……因みに今いくつ?」
「えっと、さっき減っちゃったから40かな……」
ユージさんは眉を顰める。
「ねえ、あの布を使うんだよね? それ僕でも使えるのかな?」
そっか! 砕くのは自分でしなくてもいいのね!
「お父さんのおさがりだから誰でも使えると思うわ!」
私はリュックから布を取り出した。そして、魔石を包んでユージさんに渡す。それを受け取ったユージさんは、ギュッと握った。
「硬いね……。砕けないや。握力は君の十倍はあるんだけど……」
「十倍!」
私の十倍あって砕けないんだったら、私が握力を増やしてやっても砕けなかったよね。ユージさんに試してもらってよかった……。
さて、魔石を粉にする方法を考えなくては……。
「困ったね。粉にさえ出来ればいいんだよね?」
私は頷く。
「本に方法がないか見てみるね!」
◇
「あった!」
もう一度見直してみると、なんと魔石専用の『ひき臼』を見つけた!
「よかったぁ!」
「兎に角作ってみるわ!」
私は川の近くに落ちていた石を使って下書きの魔法陣を描く。まず粘土を作る魔法陣を描いた。
ユージさんは、軍手をはめて土を集めて、魔石入りの水と混ぜて粘土の下地作り。
魔法陣が出来上がるとユージさんが、土を魔法陣の中に入れてくれた。そして粘土の出来上がり!
今度はひき臼を作るための窯の魔法陣を描く。パーツごとなので三つ必要なのです。面倒というか大変です。
ユージさんにはうす作りをしてもらう。本が見れないユージさんにもわかりやすくお願いする。
「コースターぐらいの大きさで一つは3センチ、もう一つは10センチぐらい厚みがある円を作って欲しい。細かい所は私が作るので。あとストローみたいな棒もお願いします」
「小さいね!」
臼と聞いていたので、作る大きさが小さく驚いている様子です。
「それにしてもこの粘土って凄いね。地面に置いて作成しているのに、砂とかが全くくっつかないよ」
「本当だ!」
言われるまで気づかなかったけど、私がやった時もそうだったかも。って、これ自体魔具みたいなものですよね!
それから一時間半ぐらいかけて魔法陣が完成する。大きな円の中に三つの窯の魔法陣。勿論外側の円も魔法陣なので、模様が描かれている。
腕がだるくならない仕様でよかった。でも精神的に疲れてます。
「すごいね。よく描いたよ。お疲れ様。後は乗せるだけだね。乗せるのは僕がやるから君は休んでいなよ」
ユージさんが作ってくれた粘土の円に、窪みなどの細かい直しを入れた粘土を三つの魔法陣の中に置いた。これも五分で出来上がるはず。
そして五分後、小さなカワイイひき臼が出来上がった! 不思議な事にちゃんと組み立てられて臼としてそこにあった。
「わー。すごーい。……あれ?」
出来上がった臼を持とうとするが持ち上がらない。なんで?
「どうしたの?」
ユージさんも私の行動を不思議に思ったようです。
「持てない……」
「持てない?」
どれとユージさんが臼を持ち上げた!
「もしかしてこれ、小さいけど凄く重いんじゃない? プレイヤーが持てる重さって、スタミナの半分って聞いた事ある。グラム換算。だから2,000で1キロ持てる計算」
そうだったの! 持てる重さに制限があったんだ。知らなかった!
慌てて私は本を見た。そこには重量に注意と書いてあった。重さは100キロと書いてあった。
重すぎでしょ! 私の今のVITって7000ぐらいだよ? これを半分だと4キロも持てません。最初のスタミナがわからないけど、どう考えても私が持てるの5キロが限度。
「100キロだって……」
「100キロ! これ持って歩く物じゃないよ。これ持って歩いたらすぐにスタミナ切れだよきっと……」
そういうものなのですね! 確かにリアルでもそんな重たい物を持って歩いたらすぐにへばっちゃうけど……。
「もったいないけど、ここで魔石を出来るだけ粉にして持っていくしかないね」
こればかりは仕方ないよね。
私はユージさんの意見に頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます