第27話~迷子になりまして……

 今私達は、お店に買い物に来ています。私が買い物をした事がないと言うと、じゃポーションを買いに行ってみようという事に。

 ケーキ屋さんのショーケースの様な所にポーションが置いてあります。札に『小ポーション一粒100ディール』と書いてある。

 そう、ポーションは見た目『飴玉』です! 中サイズがビー玉ぐらいで、小サイズが中サイズの半分ぐらいの大きさです。因みに大サイズは、中サイズの1・5倍程の大きさ。

 口に含むとサーと解けて、液体になるそうです! 甘いらしい。ユージさん情報です。

 色は、ポーションがピンク、MPポーションがブルー、スタミナポーションがイエロー。ポーションを入れる携帯ケースも売られていて、どのサイズも一つ100ディール。


 私は、リュックと色を合わせて水色の携帯ケースと小ポーションを3粒買った。お店のお姉さんが携帯ケースに入れて手渡してくれた。

 カードを出してお会計しようとすると、プレイヤーだったのかと驚かれたけどね。

 しかもユージさんは、そんな私の姿を見て、ニヤニヤしてます。


 「初めてのお使いが嬉しくて、目をキラキラ輝かせているのが、可愛いなって思って……」


 目が合うとユージさんはそう言った。また10歳の子供扱いです! ワザとなのか、それともまさかロリ……じゃないよね?! まあ、特に何かしてくるでもなし大丈夫でしょう。

 ユージさんが言う様に、嬉しかったのは本当だし。 




 私は部屋に戻るとポーションを飲む為、ケースから手に取った。


 多分、私は最大HPが400増えているが、HPはアイテムか魔法を使わないと回復しないので、ポーションを飲めば増えるだろうという事です。


 うー。ドキドキする。


 私は一粒パクッと口の中に放り込んだ。

 氷が解ける感じとは全然違う。なんか砂糖が溶け出してあっという間に水になった感じ? 初めての体験です!


 ステータスを確認すると、HPは300/100(+400)になったので、ユージさんの言う通りでした。

 私はもう一粒口に含んだ。これでHPは500/100(+400)の最大まで回復しました。


 おじいちゃんに感謝だわ。魔具だってバレた時、一個がよかったって言ったけど撤回します! 大満足です! おじいちゃんありがとう!

 早くおじいちゃんに会って、お礼を言いたいです。


 予備に買ったポーションはリュックにしまう。

 そしてまた、ユージさんの膝の上でタブレットを覗き込む。取りあえず何かギルドクエストを受けてみようという事になり、そんなに時間が掛からないのがないか探す事になった。



 ◇



 私達は今、うっそうと茂っている草木の中を歩いている。けもの道さえない。

 受けた依頼は、未開の探索です。新しく出来た『モンキータウン』の北東へ紙とペンを持ち地図を作製していくのです! これは誰か一人採取者なら請け負う事が出来たのでやってみる事にしました。

 あ、モンキータウンはキャットタウンの東にあります。

 そして紙と言っても簡略化した地図見たいのに、森とか書いたり珍しい物があれば記したりなどです。範囲は、歩いて一間程度の場所までなので四時間もあれば戻れるだろうという考えです。

 期間はゲーム内十五日間。

 私達は夜はログアウトしてスタミナを回復して、次の朝に出発した。一日減るが何とかなるだろうと思ったけど、二人で仲良く森の中を彷徨ってます……。

 よく考えれば私達は方向を知るコンパスを持っていなかった! 迷ってから気づきました。取りあえず森を抜けようと私達は進んでいます。


 「参ったね。森が深すぎて真っ直ぐ進んでいるかさえわからないよ」

 「ごめんなさい。やってみたいなんて言ったから……」

 「いや、君のせいじゃないよ。あ、ねえ、あっち!」


 ユージさんが突然叫んで指を指した。その先は他の所より明るい。そっちに向かって行くと段々明るくなる。木も少なくなって進みやすくなった。


 森の外だわ!


 青空が森の陰から見え、私達は走り出した。水の音も聞こえて来る。


 「川が近いね」


 走りながらユージさんが言った言葉に、私は頷いた。

 そして眩しさに目を細めて森の外へ出た時だった。


 「待って!」


 ユージさんの声が聞こえたと思ったら浮遊感があり、ガシッと私の腕をユージさんが掴む。私達は真っ逆さまに落ちた! 森のすぐ外は川が流れる崖だったのです!


 「きゃー!」


 ユージさんがギュッと抱きしめて庇ってくれた――。




 「ソレイユさん!」


 私はハッとする。この世界で気を失うとは!


 「多分、僕達死亡したんだと思う」


 ユージさんはボソッと私にそう言った。その声をかき消す程の大きな水音がすると思って横を見れば、大きな川が流れていた。

 私達は、一番近い安全地帯にワープしたようです。けどここは崖に囲まれた場所だった!


 「マジですか!」


 私は上半身を起こし辺りを見渡す。勿論上空も。

 晴天が見える。崖の上に森も見える。多分私達が落ちた場所。但し、川の向こう側から落ちたのかがわからなかった。

 私達側の崖の上も川の向こう側の崖の上も密林だったのです!

 そして、私達の目の前の崖にはぽっかり穴が空いていた。そう洞窟です!


 「ごめんなさい。私のせいで……」


 ユージさんは首を横に振る。


 「僕も気づくの遅かったから……」

 「ありがとう」

 「うん。で、どうしようか? 洞窟に入る? それとも崖というか川に沿って歩いてみる?」


 川に沿って歩いて行けばもしかしたら地上に……森に入る道があるかもしれない。でもそれがタウンとは反対ならまた迷子になる危険性もある。……今も迷子だけど。

 かと言って、洞窟の中に入って外に出られるかと言えば保証はない。私的には行き止まりだと思うけどね。


 「うーん。そうだ!」


 今更だけど、本に何か役立つ物が書いてないか見てみる事にした。遭難に役立つ何か……。本当なら遭難しない為の物を先に探せばよかったんだけどね。

 リュックから本を取り出しジッと眺める。


 「あーー!」


 私は叫んでしまった! だって羅針盤コンパスがあったの!


 「どうしたの?」

 「コンパスがあった!」

 「え! あったの!」


 私達は顔を見合わせる。


 「今度からは色々見てから……あ、でも待ってこれ……」


 本を見ながら話していると注意書きを読んで驚く。だって、発動時間は一分。


 「これ、描く動力見合わないわね……」


 魔法陣を描くのには、早くとも30分掛かる。一回で描けないのもあるけど、間違わない様に丁寧に書くからどうしても時間が掛かる。しかも今回は地面に描いても意味がない。持ち歩けないから……。


 「何? なんて書いてあるの?」


 本を覗いているにユージさんはそう聞いて来た。もしかして読めない?


 「もしかして文字読めないとか?」

 「うん。さっぱりだね。一応読解力に1000振ってあるんだけどね。これで全ての人と会話出来るって聞いたからさ……」

 「え?!」


 私、読解力100もないよね? 10分の1以下なのに私が読めてユージさんが読めないなんて……。これってもしかして私専用なの?


 「えっと。コンパスとして使える時間が一分らしいの」

 「一分かぁ……」


 ユージさんも渋い顔をする。見ながら歩ける時間ではないものね。

 私達は揃ってため息をついた。

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