第25話~ナルではありません!

 私達は手続きを済ませ、ギルドの部屋に向かっている。

 職業カードは、基本装備している服やズボンのポケットに入れておくように言われた。買い物など何かある度に提示する物だし、リュックなどの持ち物に入れて置いて万が一盗まれたりそれごと紛失するを防ぐ為でもあるそうです。

 カードはポケットから落ちない仕様になっているそうなので、ベストの胸ポケットに入れてあります。


 それよりも今私は、ゲームならではの体験をしています。

 私達は、玄関を入って右の『51~99』と書かれたドアの奥に入った。そこは両側の壁にドアが並んでいる通路だったのです!

 よく考えてほしい。右手の壁の向こう側は外のはず。それなのにドアが並んでいるのです! しかもこのドアには取っ手らしきものがありません。まるでドアが嵌めこまれているみたいな感じです。

 ドアの上には『51』と番号が書いてあり、向かい側のドアの上には『52』。つまり右側は奇数で左側のドアには偶数の数字が振ってある。

 突き当たると左に折れ直ぐにまた左に折れていた。ドアは右の壁側一つ多く『59』まであり、その正面、折れた奥の壁に『60』。そしてまた、左右交互に番号が振られている。驚く事に壁の厚さは10センチ程。……薄いです。


 ミケさんが、去り際に言った数字はギルド番号だったのです。私達は『99』です。


 「ここだね」


 ユージさんが立ち止まりドアに書かれた数字を見上げ言った。そのドアは、突き当りにあった。左右の壁ではなく行き止まりの壁に……。


 「確か、カードをかざすんだったね」


 ユージさんが、カードを壁にかざすとドアが七色に歪む。開くではなくゲートの様な感じのようです。ユージさんが、様子を伺う様に中に入ると直ぐに普通のドアに戻った!

 私も慌ててカードをドアにかざし、中に入った――。



 ◇



 やっぱり不思議な感覚。いや、普通に部屋なんだけど、あの壁の向こう側は外のハズなわけで……。画面から見てる分には、『変なの』と思う程度だけどリアル感あると違うものです。


 部屋の中は、入って直ぐにテーブルと椅子が二つ。壁に大人の腰辺り程の棚があり、その上の壁はすりガラスの丸い窓。私的には違和感が半端ないです! ――異空間に窓! って感じです。


 右手側は直ぐに壁で、二つドアがある。


 「あ、ここ寝室だね」


 手前側のドアをユージさんが開けた。私も覗くとベットが二つ頭を向こう側にして並んでいた。


 「同じ部屋なんだね……」


 別に構わないけど、男女別とかではないんだなと思った感想です。


 「別にも出来るけど、追加料金掛かるし。いいよね?」


 私は頷いた。どちらにしても今更です。

 ユージさんは、隣の部屋も覗いた。


 「こっちは、湯を浴びる場所みたいだね」


 そんな場所もあるんだと、私も覗く。ここはお家とは全く違う。リアルの現代のシャワールームの様です。


 私はパタンとドアを閉め振り向いて、あ! となった。向こう側の壁に姿見があったのです! 鏡です! やっと出会えました!

 村には鏡が存在せず、水面に顔を映してみるもよくわからなかったのです! これでやっと自分の顔を見る事が出来ます!


 私はダッシュで、鏡の元へ。と言っても狭いので五秒もかからない。そこは、鏡の端にカーテンがあり、円を描いて反対側にレールが引いてあった。多分、ここは着替える場所なのかもしれない。


 私は、ジッと鏡を見つめた。なんと言う事でしょう! そこには、女の子に見える美少年が立っていました!

 そうです。男の子です! 女の子と間違えられそうな可愛い顔の男の子! 服装がスカートなら絶対に女の子に見える男の子の顔立ちなんです!

 皆が男の子に間違えるのも納得します! って、何故女の子に見える男の子の顔なんでしょう! 普通は男の子に見える女の子でしょう!

 しかし、ミケさんが言っていた好みの顔にも納得です。私も好みの顔です。うっとりしちゃいます……って、自分にうっとりしてどうする! こ、これではナルではないですか! 断じて違います!


 「大人になるのが楽しみな顔立ちだよね」


 後ろに立ったユージさんがほほ笑んで言った。私もそう思います――。


 「さて、そこに座ってこれからの事話そうか」


 テーブルに振り向きユージさんは言った。私達は向かい合って座った。

 驚く事にA4サイズ程のタブレットがテーブルの上に一つあったのです!

 それには――



 ギルド名『夢を信じて』 キャットタウン『99』


 累計★―10  保留★―10


 来年度維持費予定額 100,000ディール


 ギルドマスター ユージ


 ギルドメンバー 2名


 ユージ

 ソレイユ



 と、あった。

 なんでしょうか……この部屋だけ現代風ですね。


 「取りあえず先に、INする時間を決めておこうよ。ログアウトはバラバラでもINは同じにしないと一緒に探索できないからね。時間はリアルの時間で合わせよう」


 私は頷いた。

 ユージさんの言う通り、その方がいいと思う。前回は気にしなかったけど、リアル一日でIN出来る時間は、ゲーム内の時間にして二日分もない6時間程。多くても8時間。ユージさんが仕事をしているかわからないけど、仕事をしている私にはそれが精一杯。


 時間を決めた後、ログアウトの仕方もユージさんからレクチャーを受けた。スタミナの回復は、ログアウトの仕方で変わるそうで、横になってログアウトすれば、ログアウト中は、横になっている事になりスタミナの回復が早いそうです。

 また、ログアウト中のキャラクターはこの世界から消えるそうで、装備も一緒に消える。リュックなども装備していれば一緒に消えるが、背負っていなかった場合はリュックだけ取り残されるので、外でログアウトする際には注意が必要。


 経験値も暫くはVITに全部振ってもいいかもって話になりました。但し、万が一死亡した事の時を考えて、全てに10ずつ振る事だそうです。

 経験値を見ればもう22,000ちょいあるので、取りあえず全てに10ずつ振って後はVITに振った。そうしてこうなりました――。



 STR:11      握力:50

 VIT:4,309+3,000  視力:100

 AGI:11+1,000   聴力:15

 DEX:11      読解力:30

 INT:11       創造力:1012

 MND:11

 LUK:212



 VITとAGIの+は、装備の分だとは思うんだけど、迷宮にいた時はなかった気がするんだよね。まあ、気のせいかな?

 後は左がユージさんで右が私と使用するベットも決めた――。

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