第24話~夢を信じて

 通常4時間掛かる道のりをユージさんは半分の時間の2時間で駆け巡った!

 私的には凄い! と思うのですが、大抵の人は長くやっていればこれぐらいの速さだそうです。


 ユージさんのお蔭で、光の刻の内に色々済ませそうです。

 キャットタウンは、村と違ってちゃんと道が舗装されていて、建物も煉瓦のような感じでしっかりした建物です。


 街の中心に探索隊の建物があるそうです。因みに、この街にある建物は二階建てが多い。というか、三階建て以上はありません。制限があるのかなぁ?


 「ここだよ」


 街に着いてからは、自分の足で歩いて建物を目指していた。煉瓦風なのに何故かこの建物だけ紺色です。かなり目立つ。


 大きな入り口から中に入ると、右と左の壁と目の前と三つのドアがあった。

 右のドアの上には『51~99』、左のドアの上には『1~50』と書かれており正面のドアには『探索隊受付』と書かれていた。

 私達はそのまま真っ直ぐに目の前のドアから更に中に入る。

 そこはカウンターがある部屋で、カウンターの向こう側にはお仕事をしている人たちが机に向かっている。リアルで言うともしかしてここは、役所なのかもしれない。そんな雰囲気。


 「すみません」


 ユージさんがカウンター越しに声を掛けると、お兄さんが近寄って来た。


 「職業カードを作りたいのですが……」


 「はい。ではこの板の上に手を置いて下さい」


 「あ、僕ではなくてこの子なんです」


 ひょいと私を持ち上げ、事務的に言っていたお兄さんにユージさんが言うと、お兄さんは驚いた表情をして固まった。


 「え……プレイヤーなんですか?」


 「はい。ソレイユさん、そのカウンターにある青い板に手のひらを乗せて」


 ユージさんに言われ、抱きかかえられたままペタッと手を乗せた。


 ラキガさん達も驚いていたけど、子供のプレイヤーっていなのですね。私的には、このお兄さんもプレイヤーの様で驚きです。


 手を乗せた板が青さをますと、お兄さんがもういいですよと言うので手を離す。


 「採取者と探求者と二種類発行できますがどうしますか?」


 そう言われユージさんを見ると頷く。


 「両方お願いします」


 「では、2,000ディールになります」


 ディール? って何と思っていると、ユージさんが紙を渡していた。


 あ! お金ですね! このゲームって紙幣なんですね。


 「はい」


 お兄さんは、私に二枚のカードを手渡してくれた。

 それぞれに私の名前が書かれている職業カードです。それをリュックの中に入れる。


 「ソレイユさん。そのカードはリュックにしまったらだめだよ。それと当座作るからどっちかのカード借りていい?」


 え? ダメなの? 私しか取り出し出来ないし安心だと思ったんだけど。あ、そっか。その事はユージさんも知らないんだった。


 取りあえず二枚とも出してそのまま渡した。


 「じゃ借りるね」とユージさんは受け取ると、お兄さんに話しかける。


 「ついでにソレイユさんの当座作りたいんですが。あ、それと、彼女が魔石のもう一人の発見者です。報奨金を振り込んでもらってもいいですか?」


 「え? この子が!」


 お兄さんは驚き急いで確認している。


 「職業カードがないと当座が作れないんだ。当座があればカードでお買い物が出来るから便利だよ」


 ユージさんは、私に振り返りそう教えてくれる。


 そうなんだ。あれですね。現金カード!

 ところで報奨金っていくらなんだろう? ここで聞くのもあれなんで後で聞こうかな。


 「はい。入れておきましたよ」


 お兄さんは、カードをユージさんに渡す。


 「あの、探索者ってギルド単位でって聞いたのですが、個人で入る事は出来ないんですか?」


 「はい。ギルド単位になりますので、個人で入る事は出来ないんです。どこかに入って頂くか、二人以上でギルドは作成できますので……」


 「うちは大歓迎だぜ」


 お兄さんの説明が終わらないうちに後ろから声がかかった。ラキガさんです。


 「俺達のギルドは『つなぎ』っていうギルド名で、好きな色のつなぎが支給されるぜ」


 振り向いた私達にラキガさんは、求めてもいないのにギルドの説明をしてくれた。


 逆に入る気が失せました。ごめんなさい!

 どう考えても自分が今装備している服の方がいいです!


 「あ、いや、僕の服、新調したばかりだし……。二人でギルド作るんで! そういう訳でお願いします!」


 「え? あ、はい。ギルド枠あるか確認します」


 ユージさんは、慌ててお兄さんに言うと、お兄さんも慌てて確認する。きっとユージさんが鬼気迫る感じで言ったからだろう思う。

 このままだと、言葉巧みに強引にギルドに入会させられそうだもんね……。

 ラキガさん達は、諦めた訳ではなかったんですね。私達がここに向かったのはわかっていたものね。


 「ちょうど一枠ありました。あの……ギルド作成に50万ディール掛かりますが、宜しいでしょうか?」


 勿論とユージさんは頷いた。

 そうすると、お兄さんはギルドの説明を始めた。




 ギルドには毎年維持費がかかり条件をクリアする事によって安くなる。

 貢献すると★が貰え、これを獲得する事でギルドステータスに振る事が出来る。貢献の仕方は、依頼をこなす、迷宮で探索をするなど。

 また一年に★を一つも獲得しない、維持費を払えなくなった場合は、自動的に解散になる。

 詳しくは部屋にある、要項を読んで下さいとの事だった――。




 そして驚いた事に、私達は既に国に大きな貢献をしているので、今ギルドを作成すると★10個からのスタートらしい。


 ギルドマスターはユージさんで、毎年1日に当座から維持費が自動的に引き落としになる。これが支払えないと自動的に解散になるので注意するように言われた。

 私達は、持っているカードを渡し手続きを行い、50万ディールはユージさんの当座から引き落として作成する事になった。

 ギルド名は『夢を信じて』だって!


 「歌のタイトルにあったわよね」


 「ほぉ。それを知っているって事はミケもそれなりに……おい、いてぇよ!」


 ラキガさんがミケさんに思いっきり踏まれたようです。よく見ればヒールがある靴です! 探求者でもこれありなんですか?


 ギルドの件は、二人で作った事により乗り切ったようだけど、ラキガさん達の私に対する興味は薄れていないようです。


 「私達ギルドは52番だから、何かあったら連絡頂戴ね」


 ミケさんはそう言い残し、その場を去って行った。投げキッス付きで――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る