第15話~おじいちゃんに託された未来
これ凄い!
魔石を発掘する度に経験値が100入る!
私は慌てふためくユージさんの横で呑気に魔石を発掘していた。
《粉砕を取得しました》
《目利きを取得しました》
うん? 二つも取得した?
これって探求者になるのに必要なスキルかな?
「ねえ、ユージさん、粉砕と目利きって探求者になるのに必要?」
「え? もしかして取得したの?」
私は頷いた。
「必要はないもので僕も取得していないけど……回数はわからないけど粉砕は砕く行為をすると、目利きはランクS以上を10個以上発掘だったかな? S以上なんて滅多に発掘できなからね。魔石ってランクS以上扱いなんだね。まあ魔石も普通発掘なんてないからね……」
はぁ……。と何故かユージさんは、ため息をついた。
そうだ。この発掘をすれば、ユージさんも覚えるよね?
「はい。ユージさん」
私は、ユージさんの前にアイスピックと金づちを差し出した。それを見て不思議そうな顔をする。
「ユージさんも覚えようよ! めちゃお手軽!」
「君ねぇ……」
呆れた様にユージさんは、私からアイスピックと金づちを受け取った。
ユージさんも私と同じように魔石を発掘する。
十分後、ユージさんはアイスピックと金づちを私に返してきた。
「ありがとう。僕も無事取得できたよ」
「よかったぁ」
「僕、焦り過ぎだよね……」
発掘していて、落ち着いたみたい。
では、袋がいっぱいになるまで砕きますか!
私は、袋一杯になるまで魔石を発掘したのだった。
◇
帰りはユージさんに抱っこされて帰った。何故かというと走って帰る為。私とユージさんとでは、移動速度に差があり過ぎるのでそうなりました。迷宮から家まで一時間あったけど三十分で着いてしまった。
「ただいま」
ドアを開けるとお父さんは驚いた顔をした。
そりゃ、見つけなければこんなに早く戻ってくるはずないものね。
「早かったな」
「うん……」
「バシリーさん、お話があります」
ユージさんの真剣な顔にお父さんもごくりと喉を鳴らす。
「な、なんだね?」
「実は、サササ迷宮にもう一つ洞窟があり、そこで魔石が大量に見つかりました。探求者の責務として、これから知らせに行って来ます。ですので、今回の件は改めてお願いします。それと彼女は、がんばりましたよ。出来ればそれを考慮して頂きたいです。では、僕はこれで失礼します」
ユージさんはそれだけ言うと、軽くお辞儀をして走って行く。
「え?! ちょっと待って! ありがとう~!」
こんなにパッと帰ると思ってなかった私は慌てて礼を言った。
お父さんに振り向くと、あんぐりとしている。
「ま、魔石だとぉ!!」
やっと我に返ったお父さんが叫んだ――。
私は魔石が入った袋と、鉱石が入った袋をテーブルの上に出した。両方ともパンパンです。
「こ、これは?」
「発掘したものよ。Dランクは無理だったけど……。片方は魔石が入ってる」
それを聞いたお父さんは、更に驚いた顔をする。
「ま、魔石がこんなに?!」
私は頷いた。
お父さんは、袋の中を覗く。
「ほ、本当に魔石だ……」
やっぱり貴重な物みたいね。
よく考えれば、魔物がいないという事は、ここに住んでいれば魔石もそんなに目にする事もないものね。
私は、おじいちゃんにも魔石を見せた。発見した事を教えると驚き険しい顔つきなった。魔物が出て来るかもしれないものね。
そしてリアルの都合上、私は虹の刻前にログアウトした――。
◇
INしたのはゲーム内で四日空けた朝だった。
私がINしていない間に色々あったみたいで、なんとおじいちゃんがいなくなっていた!
ユージさんが、発見した新しい迷宮を知らせた時に、自分と私の名前を伝えたらしい。それを知ったおじいちゃんは、自分がここにいるのがバレルと隊員が来る前に家を出て行ったのだった――。
もしかしてあの時に、おじいちゃんが険しい顔をしたのは、これを危惧しての事だったのかも知れない。
でもユージさんは、おじいちゃんが錬金術師でここに身を隠しているなんて知らないのだし仕方ないよね?
それが、私が迷宮から帰って来た翌日の話。それから四日も経っているから追いかけようがない。どこに行ったかもわからないし……。まさかこんな事になるなんて。
でも手がかりがないかと、おじいちゃんの部屋を覗いて驚いた。
あんなにいっぱいあった本も溢れかえっていた道具も何もなかった!
さすが錬金術師! というしかない。
どこに隠したのか?
それにもうおじいちゃんに教えて貰うのは無理なのかな?
よく見ると、机の上にあの水色のリュックが置いてある。
リュックは置いていってくれたんだ!
リュックの中を覗くと、帰って来た時のまま入っていた。
全部置いて行ってくれた。これってもしかして追いかけて来なさいって事ではないかな?
何か手がかりを置いていってないかな?
私は机の引き出しを開けた。
そこには手紙と薄い本と懐中時計が入っていた!
ソレイユよ。私はここには居れなくなった。探求者として実績を積みなさい。この時計の裏の中心をなぞってみるといい。そしてこの本は、お前をサポートしてくれるだろう。いずれ会おう。楽しみにしている。――
手紙にはそう書いてあった。
おじいちゃん……。私頑張って探求者としての腕を上げるね! まだなってもいないけど……。
懐中時計を開け、蓋の裏を見てみるも別に何もない。書いてある通りなぞってみた。
「え?!」
驚く事に82という数字が浮かび上がった!
もしかして日にち?
これって、魔具なの?
すご~い!
そして今度は、おじいちゃんが残してくれた本を手に取った――。
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