第14話~虹色ってな~に?

 思ったより柔らかい……。

 もしかして私、死亡して自分の布団へ強制送還された?


 「そんなに撫でまわしたらくすぐったいよ」

 「へ?!」


 布団の上じゃなかった!

 私はユージさんの上に横になっていた!


 そう言えば落ちた直後引っ張られて、抱きしめられたような……。

 私は、慌ててユージさんの上からどいて、隣にちょこんと座った。

 そこはひんやりとしている。


 「HPは大丈夫? 低くて助かった……」


 ユージさんは、上半身を起こしながら言った。私は上を見上げた。

 私が立てるギリギリぐらいの高さがある。

 辺りを見渡せば、細長いようで、迷宮の通路とクロスしている。


 「しかしここの地面硬いね。お蔭でHPが10減ったよ」


 地面を擦りながらユージさんは言う。

 言われてみれば堅そうです。しかも擦ってみると削れない!


 削れないって、鉱石?

 私は立ち上がると、落ちた穴によじ登ろうと手を掛けるも無理だった。


 「はい」


 ぐいっと、ユージさんが腰を持ち上げてくれた。

 掘った穴に置いてあったルーペを手に取った。


 「下ろして!」

 「え? 出るんじゃないの?」

 「うん。ルーペが取りたくて!」


 ユージさんは私を下ろす。

 私は、ルーペを覗いて地面を見た。驚く事に虹色に見える!


 虹色って何? S? でもA以上は黒って言っていたよね? じゃ、これは何?


 「虹色! ユージさん虹色だよ!」

 「虹色って?」


 ユージさんがルーペを覗き込む。


 「……虹色に見えるね。何、このルーペ」


 そう言えば普通のルーペって、物を拡大して見るものだよね?

 あぁ、魔具だってバレタかも……。


 答えるのを待っているかのようにユージさんは、ジッと私を見ていた。

 見せちゃったし、仕方がないよね?


 「えっと。借りたルーペで、鉱石のランクを色で見分ける事が出来るの。でも、虹色になるランクがなくって。でも削れないし鉱石なのは間違いないんだけど……」


 「削れないって……。スキルで削っているんじゃなくて、もしかしてその軍手も魔具?」


 軍手の事までバレてしまった……。

 私は素直に頷いた。


 「何でそんな嘘を?」

 「え?! だって、こんなに魔具持っていたら変かなぁって……」

 「確かに。君のところだったら変かもね。って、僕ってそんなに信用ないかな?」


 腕を組みながらユージさんが、ちょっとムッとして言った。


 「そういうつもりじゃ……。ごめんなさい」

 「僕の事、信用してくれる?」

 「うん……」

 「じゃ、許す」


 頷いた私の頭をユージさんは優しく撫でた。

 絶対、10歳に対する対応だよね? まあ、いいけど……。


 「しかしこれ何だろうね? 凄い硬くて全然割れないし……」


 そうだ! アイスピックなら刺さって割れるかも!


 「リュック! それにアイスピックが入ってるから!」

 「わかった。持って来るよ」


 ユージさんは、ひょいと上ると這って行った。そして、リュックを持って戻って来ると、私に渡してから下りて来た。

 リュックから袋をだし、アイスピックと金づちを取り出す。

 地面にアイスピックを突き立てると、それを金づちで叩いた。そうすると地面にヒビが入った!


 「いけそうだね」


 ユージさんの言葉に頷き、私はもう一度叩いた。

 地面の一部が砕け欠片になり、不思議な事に青くなった。


 「え?! もしかしてこれって魔石?!」

 「魔石?」

 「魔力を含んだ石の事だよ。もしかしてここら辺全部?!」


 驚いた顔でユージさんは辺りを見渡す。

 もしかして凄い発見したのかな?


 「大発見だったりして?」


 ユージさんは、大きく頷いた。

 探していた鉱石ではなさそうだけど、これで認めてもらえるかも?


「大発見だよ! 魔力が溜まる場所に魔物が湧くんだけど、まずは魔石が出来るんだ。そして、その魔石を取り込んで魔物が湧く。だから、魔物を倒すと魔石がドロップするんだ。ここを発見した時に、経験値一万も入ったから変だと思ったんだ! 早く知らせないと!」


 「えぇ! 一万!」


 よく見れば、経験値が一万以上になっている。凄いビックリ。

 大発見だったけど、私が思っていたのとは違ったみたいね……。

 魔物からドロップするものなら、それなりに価値あるよね? せめて袋に入る分は持ち帰るかな。


 私は、新しい布袋を出し先ほど青くなった魔石を袋に入れた。そして、またアイスピックを突きさし金づちで叩く。


 「な、何してるの?」

 「え? 発掘? いいんだよね?」

 「……なんでそんなに落ち着いているの?」


 落ち着いているのって……。もしかして、凄い価値があるの?


 「だから、このままだと魔物が湧く! こんなところで湧いて魔物が外に出て来たら大変だよ。この島には、魔物を退治できる人なんて皆無なんだから!」


 あぁ、なるほど。慌てている理由はそっちですか。


 「大丈夫よ。この袋に採って帰るぐらいの時間は……」

 「はぁ……。君ってもう……」


 ユージさんは脱力して言った。

 そこまで心配しなくても今まで大丈夫だったんだから。

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