Ex.1-2 intermission -レンの記憶-

 気づけば、俺は、その部屋にいた。

「おっ、この世界にようこそ。お前は今日生まれた。いいか、おまえの名前はレンだ。」

 そんな事を言われた俺は、ただ、黙っている事しかできなかった。

 

 ***


 朝になった。今日も名札をつける。名札には、「DNA Anylysis IDentification Card 1005 LLENN」、と書かれている。意味はよくわからない。


 起きると大抵、壁のボードに次のように書いてある。

LLENN 今日は第三セクター実験室15号室。


 日によって第二セクターだったり、12号室だったりもするけれど、あまりされることは変わらない。


 ***


「はい、じゃあ今日は、檻の中に入ってください。ここからこの中へ急に動物が 入ったりしますので、戦ってくださいねー。喰われたら死にますよー。」

 試験員が言う。

「……」

 俺は無言で返す。


一匹、二匹、三匹……着実にナイフをトラやオオカミの首筋にいれていく。45匹めの息の根を止めたところで、試験員が、

「はい、終了です。」

と言った。やっと、終わりか。

 ***

 

「1005、変身の兆しがみえませんよ。」


「その名前で呼んでやるな。彼は、レン。レンだ。」


「はい。すみません。しかし、どうしましょうか。」


「仕方あるまい。リミット・エクスペリメントに移行しよう。」


「いいのですか。所長は、かなりレンのことを気に入られてたのに、」


「もう、二年も待ったんだそろそろ頃合いだろう。」


「了解しました。各員に通告。ターゲット1005、リミット・エクスペリメントに移行。」

 

 ***


朝になった。今日も名札をつける。名札には、「DNA Anylysis IDentification Card 1005 LLENN」、と書かれている。意味はよくわからない。


 起きると大抵、壁のボードに次のように書いてある。

LLENN 今日は第三セクター実験室15号室。


 ここまではいつもと同じだった、同じだったはずなのに……。


***


七十五匹、七十六匹、なじゅうななひき……、

 おかしい、いつもなら、50匹行かないところで終わるはずなのに、なんで、おわらないんだ?

 そろそろ息が苦しい。動悸が激しい。このままだと、次の敵を倒せなくて死んでしまう。俺まだ死にたくない。


***

 245匹、246匹、にひゃくよんじゅう、、………七匹。

 俺、もう死ぬのかな…。もっと、生きたかったな、この建物からいつかでて、広い”セカイ”ってものを見に行きたかったな。もう、俺は、生きれない、…、…か。


………


……やだ、こんな所でオオカミたちに貪られる最期なんていやだ!!


***

「所長!!バリアントムーバ脳波上昇!神経系等ディスコネクト!!『変身』の兆し見えました!」


「なに、すぐ向かう。」


***

 なんだこれ。体がむずむずする。なんか毛が生えてる。身体の芯が熱い。これなに?

 そんな事を思っていると、俺は気づいた。いつも見ていた、あのオオカミの姿にじぶんが似てることに。


よし、このまま外にでよう、外にでて、セカイってものを見に行くんだ!


俺は檻を蹴破って外にでる。逃げ惑う人々を無視しながら。


***


「所長!1005が、レンが逃げていきます!」

「……放っておけ。アイツはどうせ、すぐに死ぬさ。レンには狩りの仕方を教えてない。しかし、ついに、『変身』をさせることができたな。この実験が成功したということは、機械をつかわずに────」


 ***

 さて、俺はどうすればいい。人間の形に戻れたのはいいけれどこれから生きていく当てもない。

 でも、まあ、いいや。一つずつ、いろんな事を知っていこう。一つずつ、探していこう。


 まずは、食料からか。

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