健常と異常の境界線上で踊る阿呆に見る阿呆
ナイロンロープの首吊り男
明るい来世計画
神は言った。
「右の頬を打たれたら左の耳を切り落とせ。ソドムの市や。」
俺の頭の中には数時間前から神が居座っている。アフロなのにハットを被ったファンキーな神だ。散弾銃も持っている。
抱え込んだ案件がどれも燃え出しそうな状態なのに、更に仕事を積み上げられたまま迎えた夏休み。ブラック企業ではないという体裁を保つ為だけの休暇。
朝からふらりとロードバイクに跨がり無心で走り出した。無目的で無計画で。要するに現実逃避をしたかったのだ。
上司と同じくらい容赦のない夏の陽射しに耐えられなくなり、そろそろ休憩をしようとした時、突然目の前が真っ暗になった。熱中症になったか?流石にこの暑さだし無理もないがマズイ。街中を抜け出して山の麓にほど近い農村地帯まで来ていたが、歩いている人はいなかった。稀に通る車も温泉地へ向かっているのかかなり飛ばしていて、倒れたら轢かれる。そして死ぬ。
でもまーもう死んでもいいかなー。もう会社行きたくないし。
そう考えているうちに、視界に光が戻ってきた。と思ったが様子がおかしい。
昼過ぎだったはずなのに夜の様に真っ暗だ。道を走っていたと思ったのに椅子に座っている。そして何より目の前には変な格好の女の人がいる。
あ、コレはもしかして最近食傷気味になってきた異世界転生モノか?俺は死んだのか?色々な思いが駆け巡るが、先ずは目の前の女性の話を聞こう。
「あのー、すみません。俺っていったいどうなったんでしょう?」
答えはない。質問が曖昧過ぎたかな?
「死んでしまったという認識で良いのでしょうか?」
無言。というか全くこちらを認識していないような感じ。
どうしたものか?
相手の様子を窺うも無反応。ここまで反応がないといっそ清々しい気もしてくる。
そのまま10分程度黙っていたが全く反応がないので、椅子から立ち上がってみた。
と同時に世界は変わった。また昼の路上だ。立ち尽くす俺。立ち尽くす?あれ?ロードは?
健常と異常の境界線上で踊る阿呆に見る阿呆 ナイロンロープの首吊り男 @sink13
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