新たなる未来へ・・・
勝利だギューちゃん
第1話
俺はもうじき、この市を離れる。
離れる前に、数日かけて、この市での思い出の場所を、回ってみようと思った。
既にいくつかの場所は、回ってみた。
小学生の頃に通っていた、駄菓子屋が取り壊されていたり、
空き地だったところに、マンションが建っていた。
公園も無くなっていた・・・
思い出の場所は、もう殆どがその面影すら残していなかった。
当時の友達の家にも行ってみた。
その友達に会う気はなかった。
ただ、その家がどうなっているのか見ておきたかった。
しかし、その家は取り壊されていたり、人手に渡っていたり、
たどりつけないところも多かった。
場所がどうしても、思い出せないところの方が、多い事に気づく。
時の流れの残酷さを感じる。
最後に、母校である高校に行ってみることにした。
卒業以来、一度も行かなかった。
ここも例外ではなく、場所は変わっていなかったが、近代的になっていた。
だがおかまいなしに、校舎に入る。
当時の場所はなく、教師も変わっていて、俺を知っている人はもういなかった・・・
旧友たちとも、疎遠になっている。
ただ、ひとりを除いては・・・
「あっ、あなたも来てたんだ・・・」
その声に振り返る。
そこには、ひとりの女性が立っていた。
「お前も来てたのか?」
「うん、私も最後に見ておきたくてね。もう、来れないから・・・」
この女性は、高校で出会った同級生。
当時は付き合いがなかったが、数年前に再会し、意気投合した。
今では、俺の奥さんである。つまり、夫婦になった。
「じゃあ、そろそろ行こうか・・・」
「うん」
2人で校舎の外に出る。
門のところで2人で、校舎に一礼をする。
「ありがとうございました」
運命とは不思議なものだ。
2人がこの高校に通わなければ、結婚はもちろん出会う事もなかった。
俺たち夫婦は、明日にはこの市を、いや、この国を飛び立つ。
海外での移住を決めたのだ。
海外で、上手くやれる保証はない。
ただ、愛する彼女となら怖くない。
海外での、新しい出会いを期待して、この国とは決別しようと思う。
もう、帰る事はないだろう・・・
そして、明日の旅立ちの前に、この国での、2人だけの思い出の最後の場所に行こうと思う。
そう、2人だけの・・・
新たなる未来へ・・・ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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