第11話もう耐えられなくて
そのまま無情にも月日が流れ、更に3カ月が経った。Yunはドラマに出て、女の子とのキスシーンもあった。Roiはそのシーンをテレビで見た時、持っていたスマホを地面に落とし、画面にひびが入った。これはマネージャーだけが知っている事である。そろそろ電話をしようか、いや、しない方がいい、と自問自答していたが、Yunをドラマで見る度に、Roiは感情を抑えられなくなる。たまたまドラマの時間に家にいたある日、ドラマが終わった瞬間にRoiはYunに電話をかけた。
Yunはすぐに出た。
「もしもし。Roi?」
「Yun、出るの早いな。びっくりした。」
何を言ったらいいのか、何も考えずにかけたRoiは、かけたはいいが黙ってしまった。
「どうしたの?何か用があったんじゃないの?」
Yunにそう言われて、Roiは焦った。
「いや、その。元気か?」
「元気か?じゃないよ。また何カ月待たせれば気が済むわけ?」
Yunは冗談ではなく、けっこう怒っていた。Yunはいつも家にいる時はスマホを手にして、Roiからの電話を待っていた。またかけると言われてからずっと。
「待ってたのか、電話?」
「だって、また電話するって言ったじゃんか。」
「・・・ごめん。」
また黙ってしまった。
「Roi、僕が出てるドラマ見た?」
「うん。」
「初めて女の子とラブシーンがあったんだよ。僕もやっと男として見てもらえるようになったのかな。」
RoiはYunのキスシーンを思い出してこぶしを握り締めた。だが、自分の方が先に他の女優とキスシーンを演じて、それをYunが見ているはずだった。自分ばかり嫉妬しているのも悔しい。
「Roi?何かあった?」
会いたいよ。Roiはそう言いそうになって言葉を飲み込んだ。
「ねえRoi、前に僕の事、分かりにくいって言ってたけど、そんな事ないよ。僕はみんなにいつも分かりやすいって言われる。見たまんまだよ、多分。」
Yunは、ずっと伝えようと思っていた事を言った。パンドラの箱を、自分では開けられないけれど、Roiがこっそり開けてくれないか、と思ったのだ。このままじゃ、つらすぎるから。待つのはもう、限界だから。
「見たまんま?」
つまり・・・?Roiは考えた。嬉しそうにしている時は嬉しい、という事?演技ではなく?じゃあ、みんなに笑顔を振りまくのは?自分の事を真っすぐな目で見つめるのはなぜ?
「やっぱり分からない。」
Roiは降参した。そして、こうした悶々とした日々を過ごしている自分も、嫌になった。はっきりさせよう、と魔が差したように衝動がRoiを突き動かした。
「Yun、俺の事、好きだった?」
「うん。好きだったよ。」
「他の共演者と同じように?」
「え?」
Roiの問いかけはYunにとって意外だった。
「同じじゃないよ。Roiは特別だった。」
Yunは穏やかにそう言った。
「Yun。」
Roiは胸が詰まった。目頭がツーンとした。感動が胸いっぱいに広がる。
「今も、大好きだよ、Roi。」
とうとう、言ってしまった。でも、後悔はしない。
「俺も、Yunが大好きだ。誰にも渡したくない。」
Roiは声を絞り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます