第9話連絡がない

 YunとSaku、Reo、Gen、Soyaの5人は、LKBOYSというグループを作って、歌を出した。ドラマの仕事も各自こなしながら、イベントにライブにと引っ張り凧になった。毎日が忙しく、メンバー以外の友達と会う時間はないに等しい。

 Yunは寂しさを埋めるため、4人のお兄ちゃんたちにべったりだった。座る時はいつも誰かによりかかり、立っている時は大抵誰かの背中にしがみついている。そして、スマホを見ては、すぐに放り出す。だが、ダンスや歌は上手くなり、アジアの魅力的な男性ベスト5に選ばれ、どんどん魅力を増していった。

「Yunは大丈夫かね。表では明るく元気にふるまってるけど、どう見ても元気がないよな。」

Soyaが言う。

「Roiロスだろうね。仲良かったから。」

Reoが言った。

「Yunはやっぱり、Roiの事が好きなのかね。特別に。」

Soyaが言うと、

「あれじゃね?いとこで男二人兄弟がいるんだけどさ、子供の頃は弟はお兄ちゃん大好きでさ、お兄ちゃんがいないと泣いて泣いて。ああいう感じでYunはお兄ちゃんを恋しがるように、Roiを恋しがってるというところじゃないのかな?」

Genが言う。

「それは子供の頃の話だろ?Yunはもう18なんだし。」

Reoが言う。

「Yunは子供だから。」

Genが言うと、

「いいや、あれは恋だね。」

とSakuが言う。

「だけどさ、Roiの方はどうなのかね。ファンの前では甘い雰囲気出してたけどさ、俺たちの前ではあまりべたべたしてなかったよな?」

Soyaが言う。

「Yunは猫みたいだからな。ほら、誰にでも自分からは甘えに行くくせに、俺たちが可愛がろうとするとスルっと逃げちゃうだろ?でも、Roiだけには逃げなかった。自分になついた猫っていうのは可愛いもんだろ?RoiにとってもYunは猫のように可愛いかったんじゃないかな。」

Sakuが言った。

「俺は気づいてたぜ、RoiはいつもYunの事を目で追ってた。」

Reoが言った。

「うん、俺もそれは思った。それに、Yunが誰かに近づくと、さりげなくYunの体に手を触れて、Yunの注意を自分に向けさせてたよ。」

Soyaも言った。

「Yunも、Roiの事見て幸せそうに笑ってたよなあ。」

Genが言う。

「つまり、二人は両想いって事か?」

Soyaが言うと、

「でも、Yunの元気がないって事は・・・。」

Genが言った。

「Yunがスマホを見て、すぐに放り出すのって、誰かからの連絡を待ってるんだよな?」

Reoが言った。

「Roiからの連絡を待っているのに、一向に来ないということか?」

Sakuが眉を上げた。

「あの二人、あんなに仲良かったのに、まさか全然連絡取ってないとか?」

Genがびっくり眼でそう言った。


 Yunは仕事が終わって家に帰ると、スマホを確認した。やっぱり着信はない。そしてベッドにスマホを放り出す。Yunはベッドにどさっと横になった。そして、もう一度スマホを手に取る。Roiと離れ離れになって、もう一カ月になる。その間、一度も電話をしていない。LINEは一度だけしたけれど、それからまた3週間以上経つ。LINEくらい、すればいいのにと自分でも思う。けれど、迷惑じゃないかと躊躇してしまう。本当は声が聞きたい。けれどもし電話をかけて、Roiの迷惑そうな声を聞いたら、立ち直れない気がした。

 Roiは今、ドラマの撮影中だ。女の子とラブシーンもあるだろう。Roiがドラマの為に自分の事を好きになってくれたとしたら、今は共演中の女の子の事を好きになっているかもしれない。いや、そうに違いない。また、涙があふれて、腕でぬぐった。

「僕も、次のドラマが始まったら、相手役の事を好きになるのかな。」

Yunは独り言を言った。でも、どう考えても、そうはならない気がした。

そもそも、Roiは自分の事を好きだったのだろうか。ファンの前では愛している振り、演技をしていただけではないのか。ファンが喜ぶから。本当は、最初からただの友達くらいにしか思っていなかったのではないか。だとしたら、ストーカーのように追いかけたら、迷惑がられるに違いない。

「君も僕のことが好きだった?僕たちの関係は何だったの?今も、僕のことが好き?」

絶対に、聞けない。望む答えじゃなかったら、受け入れられそうにない。

本当は知りたい。けれど、尋ねようとは思わない。このまま普通の友達として、また会える日が来るなら、その方がいいから。


「Yun、最近Roiはどうしてる?元気なのか?」

Sakuは、Yunにそう尋ねてみた。

「え?Roi?ああ、最近連絡取ってないから、知らない。でも、ドラマを見る限りでは元気そうじゃない?」

Roiの出演するドラマの放送が始まっていた。早速キスシーンがあったりして、もしYunがRoiを想っているのだとしたら、さぞかしつらい思いをしているのではないか。

「Yun、なんで連絡取らないんだ?あんなに仲良かったんだからさ、元気?とかって電話とかLINEとかすればいいじゃん。」

当然、誰もが思う事をSakuは言った。

「仲、良かったのかな。Roiは、ファンサービスで僕と仲良くして見せてただけじゃない?」

「何言ってんだよ。いつも楽屋でも、仲よくやってたじゃないか。べつにベタベタする事だけが仲良しじゃないだろ?」

さすがお兄ちゃんであるSakuはいいことを言う。なので、Yunは言い返せずにちょっと黙った。仲は良かった。普通に友達として。だから、連絡してもいいのだ。けれど、それならRoiの方から連絡が来たっていいのに、この2カ月余りの間、何一つ連絡がない。

「僕から連絡したら、迷惑かなって思って。」

「そんな事はないだろう。RoiだってYunの事が好きだったと思うぜ。」

Sakuにそう言われて、YunはSakuの顔を凝視した。

「そう思う?」

Yunが問うと、Sakuは頷いた。

「でもさ、今はまた別の共演者と仲良くしてるでしょ、多分。だから・・・。」

「今はYunではなく、あの女優さんの事が好きになったんじゃないかって?」

Sakuは痛いところを突く。

「幸いさ、RoiとYunは男同士なんだからさ、恋愛とか関係なくずっと仲良くしていけると思うよ。」

「そう、だよね。女優さんの事が好きになってても、僕には別に関係ないよね。」

Yunは元気にそう言ったつもりだったけれど、最後は涙声になってしまった。Sakuは黙ってYunを見つめる。

「会いたい・・・Roiに会いたいよぅ。」

YunはSakuの肩におでこを付けて、泣いた。Genがそこに入ってきて、Yunの背中をさすった。

「やっぱりそうか。好きなんだな。」

Sakuがそう言った。

「俺がRoiに電話をかけてやる。食事にでも誘おう。」

Sakuはそう言うと、スマホを出して早速電話をかけた。YunはびっくりしてSakuから離れた。

「もしもし、Roiか?久しぶり。元気?うん、うん。ははは。あー、それでさ、たまには飯でも一緒にどうかと思ってさ。今日か明日、どうよ?え?あ、そうなのか。うん、うん、分かった。また今度な。YunもRoiに会いたがってるからさ。え?ああ、そうか。それがいいよ。うん、じゃな。」

Sakuは電話を切った。Yunは愕然とした。

「え?切っちゃったの?なんで僕に代わってくれなかったの?」

「ん?ああごめん。Roiね、撮影が押してて、しばらく夜中まで空かないんだって。ああYun、今日は早く帰って、スマホの電源入れとけ。」

Sakuはそう言って、さっさと行ってしまった。電源入れとけ?Yunは首を傾げたけれど、スタッフが呼びに来たので、仕事に取り掛かった。

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