締切前には幽霊がいる

ミムジー

第1話 大切なものは文字に書いてない

 あなたは幽霊と話したことがあるだろうか。


 私はある。とても怖い思いをした。今回はその時の話をしようと思う。


1 序章 大切なものは文字に書いてない


「その町は、北陸の山間にありました。人口は約2万人。戦前に繊維業と鉄鋼で栄え、すぐに廃れて、今は観光と農業でなんとかしのいでいる町です。町というより、もう、限界集落といっていいところです。そこで、ある事件が起こりました。子供が一人消えたんです。」


 それは誘拐か事故の話ですか?


「そういう話じゃないです。大勢の人の前で、子供がすうっと消えたんです。」


幽霊のように?


「良い喩えですね。その町である行事が行われていて、そのイベント会場にいた子供が、皆の見ている前で消えたんです。幽霊のように。」


それ、本当にあった話なんですか?


「本当の話です。だって、消えた子供は、この私ですから。よかったら、もう一度消えてみましょうか?」

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