魔法研究所へ

1人悔しい思いをした次の日の朝。さっそく従者の人が用意した馬車に乗ってセタ教授のところへと向かう。


「いやぁ~それにしても昨日は楽しかったなぁマキノちゃん!」


「ほんとですよねぇ!色々終わってまた家に帰ったら、マジック・ビジョン買いましょうよ!お金ならいっぱいあるんだし!」


「ええなぁ!そうしよか。ほな頑張っていかなアカンな。」


どうやら女性陣はあの後一緒に夜更かしをしたようだった。今さらながらに自分の愚かさを呪う。



「でもあの番組は怖かった!もう寝られへんようになるかと思ったわ!」


「も~!そんな事言いながらガーガーいびきかいて寝てましたよよしえさん!」


・・・まぶしい。キャッキャウフフがまぶしい。どうしてこんな事になってしまったのか。それにしても、モンスターが人間を八つ裂きにする世界観で寝れなくなるほどの番組とやらが気になった。



「それに・・・。アレよアレ。いやぁホンマ凄かったなぁ。あれが大人の世界やで。」


「ほんと凄かったですよね・・・。私、初めて見ましたよ・・・。あんな風になるんですね・・・。声とかも凄かったし・・・。」


なにやら女性陣の会話が気になる。しかも、マキノさんはほんのり顔が赤い。もしかして・・・。いや、でも、あれは違うボタンだったのだから・・・。


「なかなか面白い仕掛けやったな。こう、あのリモコンの下の所をクルっと回したらボタンが出てきて・・・。」


「ねぇ~。確かにあれは子供は気付かないですよねぇ~。」


・・・な、なんだとっ!そんな隠し機能がっ・・・!


「それに、そっから先のボタンカバーの開け方がまた・・・あ、ところでマー君はもう体調は大丈夫なんか?」


「・・・え?あ、はい。もうすっかり大丈夫です!」


そんな事よりさっきの話もう少し詳しく。


「セタ教授かぁ。どんな人なんやろね?魔王の事について詳しい人なんやろか。」


「王様が紹介してくれるくらいだから凄い人なんですよきっと!」


あぁダメだ。もう完全に話が流れた。すげぇ気になるけど諦めるしかない。



「もうすぐセタ教授が勤める研究所に着きますよ」


なにやら気になるリモコンのマル秘機能の話をしている間に、どうやら目的地に到着するようだった。


「お~!ここが!」


広大な敷地の中に、見上げるほど高い建物がいくつも並んでいる。ここで、この世界で発展している魔法技術とやらを日夜研究しているのかと思うと、不思議と最先端の建物に思えてくる。そういえば工場とかもあるんだろうか。異世界流れ作業とかあんまりイメージないけど。


「では私の後についてきてください。この中も非常に複雑な構造になっておりますので、私を見失うともう戻れませんので。」



研究所の入り口で、各自セキュリティのチェックを受ける。セキュリティチェックと言っても、ちょっと長い目のトンネルのような入り口をゆっくり歩くだけ。なんでも、このトンネルの中でここに訪れた人達の個人の情報をスキャンして登録するそうな。もし中で何か悪い事をしでかして出禁になると、見た目を変えても何をしてもバレるのだそう。


「・・・はい。okです。ではお通りください。」


こうして、僕達は魔法技術研究所へと足を踏み入れた。




研究所の中は、見ても何が何やら全然わからなかった。まぁ僕の知らない技術を使って僕の知らない技術を研究している場所なので当然といえば当然なんだけど。


それは他の2人も同じようで、ヒコーネの城の中を見た時に比べて明らかにテンションが低い。そもそも、うるさくしていい場所なのかどうかもわからない。


「なんか緊張しますよね。」


「ホンマになぁ。ちょっとどっか壊したらエラい事なるでこれ。」


「あんまり静かなの苦手なんですよねぇ。早く帰ってマジック・ビジョン見ましょうよ。」


マキノさんはどうやらあれが相当気に入ったよう。


こう、魔法都市で魔法技術で研究所といえば、裏でなにやら怪しいモンスターの研究もしていて、冒険者達をキメラが襲ってくるのが鉄板だと思うんだけど、そういう研究はしてないんだろうか。


そんなハプニングがあったら困るんだけど。



「こちらになります。」



色々な場所をウロウロする事10分ほど。結構歩いたと思うんだけど、どうやらここがセタ教授がいる部屋らしい。



最先端技術を研究する研究所で働く教授とは、はたしてどんな人なんだろうか。白衣を来た堅物のおじさんで、気難しい人とかだったらどうしよう。


ドキドキしながら、まるで学校の校長室にでも入るかのような気分でそのドアをノックする。


「失礼します。」


ドアを開け、そこにいた人物は・・・。



「お!よく来た!お前達がヒコーネの王の言っていたよしえ一行か!」


肩まで伸びた金髪。そして、ピンと伸びた長い耳。


「エ、エルフだ・・・!」


思わず声に出てしまった。そう。僕がイメージするエルフの姿そのものだった。


「エルフを見るのは始めてなのか?まぁ、あまり私達は外に出る種族でもないしな。」


そう言ってなぜかドヤ顔をするセタ教授。しかし・・・。


「か、可愛い・・・!」


キラキラした目でつぶやくマキノさん。


「か、可愛いとか言うな!これでもお前達より全然年上なんだぞ!」


セタ教授は、どう見ても身長が140cm程度しかない。まるで小さい子供のようだった。


「魔王の話を聞きに来たんだったな。よし!じゃあ話てやるから座るといい!」



こうして、金髪ロリっ子エルフさんのありがたい魔王講座が始まったのだ。

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