vsスライム亜種戦!

町長さんに案内され、僕達が最初に入ってきた門とは正反対の位置にある門を抜けしばらく行くと、そこに問題の農園地帯があった。


その農園地帯の一角に、確かになにやら謎の物体がいる。直径1mほどの大きさの半液体っぽい固まりに、なぜか触手が生えている。


見た目としては、丁度実写版のホ○ミスライムといった印象。あれをもう2ランクほど凶悪にしたような。


「あそこに見えるあのモンスターが、問題のスライムです。農作物を食べられるのも問題なのですが、それ以上に奴が地面を腐らせる事が問題なんです。」


そう言って町長さんが悔しそうな表情でモンスターを指差した。


よく見れば確かに、スライムが動いたであろう跡がグズグズに変色してしまっている。


異世界農業についてよく知らないけど、あれでは作物は育たないような気がする。


「スライムってみんなあんな感じで触手が生えてるもんなんですか?」


僕の知ってるスライムとちょっとイメージが違ったので、よしえさんに聞いてみる。


「ん~。アレはちょっと珍しいやつやね。町長さんの最初の説明でも言うてたみたいに、スライムの亜種。それも希少種ってとこやわ。」


「強いんですか?」


「いや。そうでもないよ。ただ珍しい。ってだけで。でも、物理的な攻撃は効果が無いから、やるなら魔法やね。」


なるほど。確かに剣なんかで切っても効果が無さそうな見た目ではある。


「そういえば、よしえさんはシャイニングさんじゃなくても魔法使えるんですか?」


「大丈夫やで。まぁあの姿の方が威力は高いけどな。スライムくらいなら問題ないわ。」


よかった。どうやら今回もいけそうな感じだ。


「で、では、もしも邪魔になるといけないので私はこの辺で・・・。頑張ってくださいね!」


そう言って町長さんは足早に退散していった。


「さて。ほなサクっといきますか。」


腕まくりするよしえさん。



前回見たモンスターは、3m以上もある見るからに凶悪なオークだった。それに比べて今回はスライム。スライムと書いてザコとルビが振られるくらいのモンスターだ。


よしえさんだってすぐ近くにいる事だし、今回はもうちょっとモンスターという生き物を観察しても大丈夫なんじゃないだろうか。


さっきから見る感じだと動きもそんなに速くなさそうだし、なにかあってもよしえさんが助けてくれるだろう。


そんな軽い気持ちで、スライムの方に近づいていった、その時だった。



スライムの触手が、凄い速さで僕の方に伸びてきた。



「う、うわぁぁぁ!」


あ!っと言う間に僕は触手に巻きつかれ、スライムの液状の内部に取り込まれた。


「ぐぅぇ!ごぼぉぉ!」


スライム内部で溺れそうになり、少しスライムを飲んだ。鼻からも入った。


「がばぁぁぁ!」


夢中でもがき、なんとか顔だけ外に出す事が出来た。


「がはっっ・・・!よ、よしえさん!助けてください!!」


すかさず大声で助けを呼ぶ。


「マー君!大丈夫か!!」


魔法の準備をしようとしていたよしえさんがそれを中断した。


「大丈夫・・・では・・・ない・・・」


しかし、どうしてこれがなかなか悪くないのだ。


スライムの内部は思った以上に暖かく、例えるなら服を着たままお風呂に入っているような、そんな感じだった。


しかも、一応は生き物だからだろうか、微妙に流れというか動きがあり、そのぬめりと微妙な動きが絶妙な感触を生み出していた。


「いや!やっぱり大丈夫・・・じゃ、ないです!はい!でも、別にそんなに急がなくてもいいくらいには大丈夫です!」


自分でも何を言ってるのかよくわからなくなってきた。


体もそこそこ自由に動かせるし、居心地も悪くないし、なんだよスライム。話せるやつじゃないか。


そんな事を考えたのが、いけなかった。



服が、溶けはじめたのだ。



しかも、服が溶け出すと同時にスライムの感触が変化した。これまでは体が動かせる程度に優しかったのに、突然固くなった。


まるでぬりかべの中に生き埋めになったような感覚になる。


「よ、よしえさん?なんか、服が溶けてきましたよ!?このままじゃエライ事になるかもしれませんよ!」


「ん~。でもなぁ。ほら。今ここで魔法打ったらマー君も木っ端微塵よ?」


それは確かにそうかもしれない。でもそうこうしている間に、どんどん溶ける服。


「あぁぁ!もうすぐ全部溶けちゃいますよ!こういうのって、なんかこう・・・女性がというか・・・。何で僕が!!」


でも、よしえさんなら・・・。シャイニングさんなら・・・。凄い超パワーでなんとか・・・。


しかし。ここへきてこの女神。全裸の僕をガン見である。


「見てないで助けてくださいよ!はやく!はやく助けてくださいよぉぉ!」


「でもほら。あんまり近寄って私も取り込まれたら全滅やん?」


そう言って、僕の目を見ず体に向かって話しかけるよしえさん。


幸いなのは、全裸になって以降特に体に変化は無いところだろうか。しかしこの状態もいつまで続くかわからない。


よしえさんが僕の体を360度くまなく舐めまわすように一周した頃、今度はなぜか急にスライムが僕を吐き出した。


僕の体にもう飽きたのだろうか。


全裸のまま放り出される僕。そしてスライムがどこかへ行こうとしたが、すかさずよしえさんのファイヤーボールがスライムを直撃。断末魔もなく蒸発し、消えた。


今回もよしえさんの活躍でスライムは退治された。しかし、僕は忘れない。スライムが僕を吐き出した時、よしえさんが露骨に残念そうな顔で舌打ちした事を。



「うっ・・・。うっ・・・。よ、汚された・・・。」


スライムに取り込まれ、全身くまなく女神に視姦されるというハードなプレイを経験したのだ。大人の階段登る前に、地下室へ下った感じがする。


「まぁ、アレよ。事故やと思うしかないわ。ここはほら。野良スライムにでも噛まれたと思って・・・。」


「だいたいそんな感じでしたよ!・・・とりあえず、このまま街には戻れないから、よしえさん家から服取ってきてくださいよ。」


「はいはいわかりました。そんなケンケン言わんでええやないの。」


ブツクサ言いながらよしえさんは街への道を歩きだした。


「あ、ほら見てマー君!こんな所に綺麗なお花が」


「いいから!早く走ってください!急いで!!」


こうして、スライム退治は無事?終わったのだった。

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