訓練後

 オルガ様との約束では、1月という時間彼女たちを鍛え上げて、広場に集合する予定になっていた。 もちろん従者である私は、彼女たちを連れて予定日に隊列を組んで集合させる。 しかし、待てども待てどもオルガ様は現れない。


「メルスさん、集合する日程を間違えているんじゃないですか?」


「私が、オルガ様との予定を間違う訳が無いでしょう?」


 過去に5秒ほど遅れたら、腕切り落とされた事がある。 その時を思っての発言だったのだが、クランは別の意味でとらえたらしい。 急にニヤニヤと不快な表情を作った。


「間違う訳が無いんですか……前々から思っていましたけど、オルガさんの、どこがそんなに好きなんですか?」


「好きですか? それを私に語らせたらキリが無いですよ。説明しても、あなた達には理解できるとは思いませんけど」


 コレは本心である。 人間どもにオルガ様の素晴らしさが理解できるとは思えない。 少しの間一緒に行動して、人間の心理を少しだけ理解したのだが、我々魔族の感性と人間の感性とでは違いがある。 なので引かれない程度に、曖昧に返答したのだが、その答えがクランをより笑顔にした。


「うわーラブラブだよ、聞いたパオ。あのメルスさんが惚気だよ、ベタ惚れだよ」


「…………らぶらぶ」


「惚気では無く尊敬しているだけです」


 からかわれている気がするのは気のせいではないだろう。 まあ本当に惚れているため間違いではないのだが、それを人間がいじってくることが腹が立つ。


「分かりました。そう言う事にしておきますね」


「…………しておく」


「…………理解してもらえて何よりです」


 絶対理解してないだろうと思いながらも、これ以上いじられる事は本意ではないのでとりあえずここは引いておく。


「っと、噂をすれば、あれオルガさんじゃないですか」


「そのようですね。皆さん無駄話は終わりです隊列を組んでください」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る