第124話 退場

「シルビア殿・・・」


ロリアが、俺の肩に手を置く。


「ロリア・・・俺は・・・俺は・・・」


視界が・・・歪む。

ロリアの愛しい顔すら・・・にじみ・・・


「シルビア殿、カゲ殿から通話が入っているから、出て下さい」


ロリアはそういうと、ガラケーに変わる。

おお?


「もしもし、シルビアさんですか?」


「・・・えっと・・・イデア・・・?」


「はい、イデアです。デスペナルティーでログインできないので、ロリアさんに中継して貰いました」


・・・あ。

死亡からの強制ログアウト、そしてログイン禁止期間。


そうだった。

これデスゲームじゃないや。


「すみません・・・一矢も報いる事ができず・・・」


「いや、一矢報いてたと思うぞ」


「それでは頑張って下さい・・・応援しています」


ぷつり


電話が切れる。


・・・さて。


「・・・ゲーム内で死んだだけで、そこまで気分作らないで欲しいのだけど・・・」


すっかり元の姿に戻ったフェルが、立場無さげに言う。


「・・・私達は普通に殺されたけどね」


ぽつり、とミストが言う。


すっ


フェルが顔を逸らす。


「・・・さて、後は・・・シルビア、貴方だけかしら?」


「お姉ちゃん・・・次は・・・私・・・だにゃ!」


フェルが、顔を歪ませ、


「・・・せっかく、強者イデアと戦って、色々盛り上がったのに・・・貴方を挟むと、相当盛り下がるのだけど・・・」


不満そうに言う。


「お姉ちゃん・・・私は昔から・・・お姉ちゃんには敵わなかったけど・・・今回は・・・私が勝つから!」


「え、妹が姉に勝つとか、無理なんですけど・・・」


フェルが半眼で言う。


さて・・・なるべく、虚をつきたい。

元々、勝ち目が有るとすれば・・・トキ。

イデアは、本当に計算外の健闘だったのだ。


「それでは、始めて下さい」


月花の宣言。


フェルが、面倒くさそうに、闇の刃を幾つも浮かべ・・・


トキが、を、突き出した手の平に集める。


霊真エーテル

俺達が出せる・・・切り札。

ヒノコ様には許可を取っている。

かなり渋られたが・・・


「これが・・・私達の・・・想いです!」


無数の蒼白い剣が生まれ、フェルに迫り──


抵抗も無く──


消失した。


フェルが生み出した、に遮られ。


まさか・・・霊真エーテル・・・


フェルがくすり、と笑い、


「相手に合わせて戦ってあげるのよ・・・優しいでしょう?」


フェル・・・使えたのか・・・


「トキに許可を出したんだ。フェルを咎める訳にはいかんな」


ヒノコ様が溜息をつく。


まずい・・・

霊真エーテルに貫かれると、魂どころか、存在した事実まで消えてしまう。

だからこそ、さっきトキが狙ったのは、フェルの中心から離れたあたり・・・


「トキ、降参しろ!」


俺は叫び、


「わ・・・私は・・・」


トキが、蒼白い光を濃く纏い・・・


「さよなら・・・トキ!」


ゴウッ


フェルの放った蒼白い光が、次々とトキの纏う光を剥がしていき・・・そして・・・

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