第122話 オールマイティー

魔族陣営は、宣言通りフェルのみ。

魔王や、フレアも、観客席から見守っている。


俺達の陣営は、五王と、トキと俺。

アリスはともかく、ソフィアやロリアですら、フェルには対抗できない。


策は用意した。

策を実行可能なのは、オトメ、リミア、アリス、トキ。

その役目を・・・トキに任せた。


五王には、勿論勝てるなら勝って欲しいが・・・

それが難しいのは分かっている。


悠然と立つフェル。

そこにゆっくりと向かうのは・・・フィロ。


「久しぶりね、フィロ」


「久しぶりだね、フェル・・・」


親友同士であり・・・殺した者と、殺された者・・・


「始めて下さい」


月花の宣言。


「行くよ・・・フェル!」


フィロの纏う魔力が膨れ上がり。

魔力の余波が荒れ狂い、大地を揺らす。


「・・・あれが・・・フィロさんの・・・実力」


エレノアが、恍惚として言う。

かつてのLJOの時より、遥かに強い。


だが。


くすり


フェルは笑うと、


すっ


手を差し出し、


ひゅっ


放った火炎が──


空間を、時間を、時空を、焼き尽くしながらフェルに迫る。

フェルが放った魔法は、あっさりと焼き尽くされ。

追加で放った無数の鏡、壁、氷・・・全て焼き尽くし。


半身を削り取る様に焼かれながら・・・何とか生きている。

・・・大丈夫・・・か・・・?


回復魔法を自分に行使しつつ、


「降参、だよ」


くすり


フェルが微笑む。

やばい、強い。


--


次に前に出たのは・・・ミスト。


「久しぶりだね、フェル!」


「久しぶりね、ミスト。貴方にまた会えて嬉しいわ」


「私を殺したキミが言うと、妙な迫力があるね!」


「そう意地悪を言わないでちょうだい。反省してない訳じゃないのよ?」


うあ、ミスト、ぐいぐい行くなあ。


「反省・・・キミには似合わない言葉だね。キミは前に猛進していてこそ、輝く」


「あら、褒めてくれて嬉しいわ」


さて・・・どんな戦いになるか。


「始めて下さい」


月花の宣言。

動いたのは・・・ミスト。


ちゃきり


フェルは、杖を取り出すと、


カッカッカッ


ミストの神速の連撃を・・・全て受け止め、受け流す?!


神速の動きで回り込もうとするミスト。

それを、あっさりと対応するフェル。

強い・・・身体強化・・・?


ミストが下がり、


「・・・嫌になるね。身体強化の魔法もなしに、その身体能力か・・・」


「それが分かるのって素晴らしいと思うわよ」


身体強化の魔法使ってないのかあ。

純粋にステータスが高いんだろうな。


カッカッカッ


右に、左に、攻めるミストを、全て受け止め・・・そして・・・


カッ


フェルの杖が、ミストの剣を吹き飛ばす。


ビッ


ミストの喉元に杖を突きつけ、


「・・・降参だよ」


ミストがそう答える。


にこり


フェルが微笑んだ。

これで・・・2人やられた、か。


--


「次は私、ですね」


リミア。


「聞いているわよ、リミア。女神様に直接拝謁した事で、手がつけられないくらい強くなったらしいわね」


フェルが告げる。

誰から聞いたんだろう・・・まあ、フレアも混じってたし、漏れても不思議ではない。


「それでも、貴方には勝てる気がしませんが」


リミアは溜息をつくと、


シュッ


リミアの周りに、無数の剣が生じる。

剣の舞。

最近リミアが得意とする戦法だ。


ヒノコ様の力が宿った剣がリミアの周りを舞い、リミアのサポートをする様に対象に攻撃をしかける。

または、死角からの攻撃も防ぐ。

攻防一体の陣だ。


ヒュッ


リミアが突進。


ガッガッ


リミアの拳をフェルが受け止め、フェルの蹴りをリミアが躱し・・・

リミアの周囲を舞う剣がフェルを死角から攻撃・・・フェルに弾かれ落ちる。

おい。


数分の打ち合いの後、フェルがリミアを組み伏せ、押さえ込む・・・


「・・・完敗です」


リミアが、苦笑いしながら言う。


「うん、お疲れ様」


フェルが微笑む。


・・・やべえ。

さっきから、相手が得意とする戦い方で、勝利を得るとか・・・

どんなけの実力差なんだ・・・フェル・・・


--


「フェル・・・キミは、僕が止める」


「貴方にできるかしら、ね?」


「始めて下さい」


月花の宣言。


どむ


フェルの放った魔弾が、アイリスを吹き飛ばす。

アイリスが岩に突っ込んで、ぴよぴよ目を回している。

え、なに、相手に合わせるんじゃないの?


「アイリスって、何でもできるから、何で戦えばいいか分からないのよね」


あ、そういう。

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