第二部、第三章

第86話 前夜

「龍司さん、少し待って下さい」


解子はそう言うと、供子そなたの方に歩いて行き、


「供子さん!ゲームを散らかし過ぎです。零美と桜花も、幾つも同時に出さないでと言いましたよね」


テキパキと、散乱したゲーム機類を片付ける。


家事は、基本的に解子が全部やってくれる。

供子も、桜花も、家事は得意な方なのだが。

解子の家事が1次元上なのと、基本的に、日々楽をしようと考えている怠け者だからだ。

俺と一緒。


供子は、かつて、ずっと親のすねかじりの引き篭もりだったらしい。

現実リアルの俺に近づく口実として、家業の家政婦をやっていただけだ。


ある意味、似た者同士。

まあ、あの頃の俺よりは、余程立派だが。


俺は、NLJOの世界では、人類代表にさせられた訳だが。

現実リアルでは、ただの夢守商事の副社長、としか思われていない。


零美も、優大も、ポイントを集める為にリアルを明かした。

・・・トキである解子の夫、レイミーとワンの零美が同じ家にいて、マイマイである優大とも知り合い。

天才少年と言われる天下、エレノアとのリアルとも交流がある。

周囲の人間関係から、地味に目立ってはいる。


NLJOでは、目立つ時は目立つが。

スキルのお陰か、一度認識を外れると、結構潜めたりする。


「お待たせしました。寝ましょうか」


むぎゅ


解子が、腕を組んでくる。


「いや、いつも有り難う。解子が色々やってくれて、助かってるよ」


解子は微笑むと、腕を絡める力を強めた。


--


「いよいよ明日が・・・正式サービス、か」


感慨深く、呟く。


「文字通り、だにゃあ。異種族の世界との融合・・・交流の始まり・・・」


トキが、やや緊張を込めて言う。


「交流と言えば、平和的に聞こえますが。実際には、種族間の生き残りを賭けた戦争・・・シルビア殿、全力でサポート致します」


ソフィアが、決意を込めた眼差しで言う。


「色々な種族に会えるの・・・楽しみ!!!」


レイが嬉しそうに言う。


「僕も、楽しみですねぇ。色々な種族に会って、色々な話を聞きたいですぅ」


エレノアが、ほんわかと言う。


「他の種族・・・平和的に接してくれる事を望みます」


ユウタが、祈る様に言う。


「むしろこっちから打って出て、全種族支配してしまおうぜ!」


サクラが豪快に笑う。


「・・・どうするか、だな。勝った上で、命令権を放棄すれば、少なくともその種族に支配される可能性は消えるんだろ?」


俺が言うと、


「うさぁ!命令権を賭けた戦いは、1回だけ行使可能うさぁ!」


ルナナがくるくる回りながら言う。


「異種族・・・そもそも、私が異種族だからな。命令権とか、どうなるのだ?」


ロリアが、小首を傾げる。


「我々人類の底力・・・見せつけてやりましょう」


オトメが、祈る様な仕草をして言う。

スルー。


「まあ、絶望的な戦いになるでござる、が」


カゲが、日本茶をすすりつつ、言う。


まあ・・・簡単にはいかない・・・よな。


「・・・カゲさん、ひょっとして・・・何か情報を掴んでいるのでしょうか?」


トキが訝しげに言う。


「情報・・・でござるか。1つだけ言える事は・・・我々は弱い、という事でござるな」


どういう事だ?

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