第34話 エクストラクラス

「リザレクション」


ゴウッ


黄金の光の柱が立ち上り・・・そして・・・


がはっ


死者が、血の塊を吐き出す。

他の神官が駆け寄り、治療を始める。


・・・死者の蘇生。

前作ではあり得なかった魔法。

今回は、僧侶系を極めれば、習得できるらしい。

前作からの、最大の変更点と言えるだろう。


アリスが、次々に蘇生魔法をかけていく。


「カギロイ殿、今の内に退散した方が良いかと」


「そうだな」


ひょい


「ま、ますたあ?!」


サクラを抱え上げると、


ひゅ


駆け、建物の屋根に移動。


「ま、待って下さい?!」


アリスが叫ぶ。

視認された?!

・・・あいつら、本当に強くなってるな。


だが、蘇生魔法を片手間で使う事はできない。

そして、取り巻き達は、俺達を視認する事はできていないようだ。


屋根を駆け、武器屋へと戻る。

妖刀は、オトメが回収済みだ。

ちなみに、男は放置してきた。


--


「本当に取り返してきてくれたんですね・・・有り難うございます」


カエデがぺこり、と頭を下げる。

母親が青い顔で、


「すみません・・・私の決断が遅いばかりに・・・今回の件は、私が引き起こした様なものです」


「いや、盗んだ男が悪いと思うし、あんたはただの被害者だと思うぞ。死にかけてたしな」


サクラが頭を振って否定する。


「この刀は、私達が処分しましょう」


オトメが、母親に告げる。


「そんな・・・そうして頂けるのでしょうか・・・本当に・・・何から何まで・・・すみません・・・」


母親が頭を下げる。


「・・・あれ、お代は?」


カエデが小首を傾げる。

商魂たくましいな。


「これで足りるか?」


サクラが、お金が詰まった革袋を投げる。

あれ全財産じゃないか?


「え・・・こ・・・こんなに貰えません?!」


カエデが驚きの声を上げる。


「構わないさ。その金で、良い武器を仕入れておいてくれ」


サクラがにやり、と笑う。


「は・・・はい・・・必ず・・・ですから、またお越し下さい」


カエデがぺこり、と頭を下げた。


--


「それで、この刀を使うのですか?」


「おい」


サクラに妖刀を渡すオトメに、ツッコミを入れる。

サクラが暴走したらどうするつもりだ。


「ああ、有り難い」


サクラが妖刀を受け取り──引き抜く。


・・・


確かに、美しい。

だがそれは、危険な美しさだ。


深紅の、透明な刀身。

桜色の、刃文。

漆黒の呪いが・・・可視できる程立ち上り。

サクラの腕から、全身を覆っていく。


おい・・・


「ロリア、解呪を」


「いえ」


ロリアが首を振る。


漆黒の呪いを身に纏ったサクラは・・・やがて・・・

黒い霧が、霧散する。


「確かにこの武器には、悲しい想いがたくさん染みついていたが・・・」


チリン


サクラが刀を振ると、鈴を転がす様な綺麗な音がする。


「意思を強く持てば、ざっとこんなもんよ」


にかっ


サクラが笑みを浮かべる。


それに、この程度の想い、悲劇でも何でも無いしな


音声としては発せられなかったが。

サクラの唇が、そう動いた。


10年前のあの時代を生き抜いた者。

サクラも・・・相応の地獄を見たのだろう。


「・・・特異職業エクストラクラス?」


サクラが呟く。


「そう言えば、刀系列の武器は、侍系列を解放するんだっけかな」


刀系統はレアなのだ。

因みに、ロリアに形態変化フォームチェンジさせても侍は解放されない。


「それは良いな。あたいは、侍をやる事にするよ」


ひゅっ


再度刀を振る。

軌跡が紅く光っている。

綺麗だなあ。

・・・あれ多分、LRだな。


「ますたー、付き合ってくれて有り難うな」


サクラが満面の笑みを浮かべた。


--


:「ますたますたますたあ!」


ログインするなり、レイがシャウトで話しかけてくる。


:「どうした、レイ」


:「ますたああああ、私もサクラみたいな格好良い武器が欲しいいいい」


俺も欲しい。


(私で良ければなれますが?)


違う、格好良い武器を所有したいんだ。


(あの・・・私で良ければ所有してくれても)


いや、従魔なんだから、所有してるのかも知れないが、そうではなくて。


(あの刀、食べたいですね)


喰うな。


:「モンクは、武器を使わない職業だ。3次職の巫女は、武器も格闘も使えるが・・・4次職の、どの巫女になるかで、武器が分かれる。例えば、槍巫女なら槍だしな」


:「んー、それは、巫女になったあとで考える〜」


まあ、そういう人は多い。


尚、UR武器によっては、所有すると巫女、3次職への転職が開放されるものがある。

1次職である侍よりはレアだが、LJOでは結構出ていた。


:「じゃあ、従魔仲間にするのを手伝って!」


武器は良いのか?


ロリア、従魔システムに関して詳しく。


(月花殿に聞いて下さい。五英雄も詳しくまとめていないようです)


使えないな、誤英雄め。


(他者を利用価値で切り捨てるその態度・・・ぞくぞくしますね)


誤英雄のせいで、酷い風評被害を受けた気がする。

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