第107話 従魔も方便

「大丈夫か?」


ややあって、目を覚ましたロリアに尋ねる。

流石に、人目につかない場所に移動させて貰った。


「はい・・・」


力無く頷く。

病気では無いようだが・・・


さっき途中まで放っていた敵意は、嘘の様に無くなった。


「すみません・・・貴方があまりにも魅力的な方でしたので、思わず気絶してしまいました。大変失礼しました」


どういう事?!


ロリアが上目遣いに俺を見上げ、


「貴方こそ運命の人です!何でもします!貴方の物にして下さい!」


叫ぶ。


「いや・・・その・・・だな」


女性から好意を寄せられた経験は無いので、びっくりしつつ・・・

それにしても、確かにあっちのロリアとは別存在なのだと実感する。

あっちは大切な友人ではあるが、恋愛感情はお互いに皆無だ。


流石に、知人の別存在に手を出す気にはなれない。


「我は、至高の存在より遣われし者。そなたに、霊真エーテルの研究から手を引くように伝えにきた」


「はいっ、辞めます!絶対に手を出しません!」


勢い良く返事する。

おお・・・そうか。

これでクエストクリアかな?


「忘れるな。至高の存在の目は、そなたらをとらえているぞ」


抱きつこうとしてきたので、躱す。

恨めしそうに見てくる・・・可愛いが・・・あっちのロリアに悪いからな。

影に溶け込み、離れた。


--


「これでクエスト達成か?」


尋ねるが、月花が首を振る。

あれ?


「やっぱり、ロリアは研究を辞めないのか?」


口約束だしなあ。


「いえ・・・そもそも・・・基礎理論を見つけたのはロリアですが、実用化したのはロリアではないですよ?」


何・・・だと・・・

月花から告げられる、衝撃の事実。


「じゃあ・・・誰が・・・?」


知らない奴なら、さくっといっちゃうけど。


「フレアです」


うん。

ロリアの妹、知り合いだね。

不思議ちゃんだね。


「どうしよう・・・」


俺はがっくりと膝をついた。


--


「はい、良いですっ」


え。


駄目元でフレアに接近し、事情を話した。

予想に反し、フレアはあっさり研究中止を受け入れた。


もともと、どっちでも良かったのかな?


「そ、そうか。良かった」


「ただ、条件が有るですっ」


フレアがじっと俺を見てくる。

何だろう?


「私を連れて行って欲しい。貴方の側にいたいですっ」


「・・・従魔にしろと?」


「です。おにーさんの側で監視されていれば、確実に研究を止めれるですぅ」


むう・・・


おい、月花。

この世界のフレアを従魔にして、元の世界に戻ったら、どうなるんだ?


『吸収されて消えます。向こうは新たな生を得ていますが、こちらは仮存在。存在力が大きく違います』


なるほど・・・従魔にしてもこの世界限り、か。


「分かった。フレア、君を従魔にしよう」


友人を、そして友人の妹を従魔にするのはかなり妙な感覚だ。


コウッ


光がフレアを包む。

これでフレアが従魔に。


「有難うですぅ」


フレアが微笑む。


シルビア 人間 303万 宝王 87万

カゲ 影人 380万 忍王 103万

月花 フェアリー 573万

フェリオ 神狼 896万

トライプニル 焔締 511万

ルナナ うさぎ 936万

メイル 雲の巨人の義理の娘 540万

バスレト 駄猫 333万

ワムテ 形容し難い存在 740万

フレア 魔族 9万 魔導錬金士 41


一時的に最下位じゃ無くなった。


ピシ・・・


空間に亀裂が走る。

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