第94話 その穴の先にあるもの

「ご主人様、ユニークモンスターでした」


月花が報告する。


「誰だよ、倒したの。ちょっと見てみたかったぞ」


「そうなのか?たかがレベル20万程度の敵、見る価値もないと思うが」


俺が不満を口にすると、トライプニルが不思議そうに言う。

・・・雑魚じゃん。

レベル20万って、流石に脅威にならんだろ。


階段の前で立ち呆けてた大きな魔物を、鞭の一撃で潰す。

吹き上がるドロップ。

意外と多い。


「ご主人様、反転せるリバース祝福されしブレスド類稀なるエリート猫もどきスフィンクス。レベル10万です」


月花の解説。

だから、名前負けしてるって。


「むむ・・・何だか、同族意識シンパシーを感じるにゃ」


バスレトが呟く。

猫だけに。


中層2階層からは、敵の密度が増えた気がする。

どうせ焼き払ってから進むので、邪魔ではないのだけど。

ドロップ拾う月花が地味に大変そうだ。


もぐもぐ・・・


訂正。

ドサマギで魔石を食べている。

後でゆっくり食べろ。


「違うにゃ、ご主人。あれは魔石じゃなく、ニーベルングの指環[LR]にゃ」


「どっちでも良いから、後にしてくれ・・・」


アビス。

まさに死に直結する地獄への招待状、らしいが・・・


「懐かしいにゃ・・・ここまで来て、にゃあは引き返したにゃが・・・メリクル達は先に進んで・・・」


猫仲間?


「下層は、推定レベル50万を超えると予想されます・・・行きますか?」


月花が尋ねる。


「ああ」


俺でもソロできそうなレベル。


「・・・行くぞ!」


--


「大馬鹿野郎」


罵りの言葉を吐くが・・・誰に、と言う訳でもない。

と言うか、俺が悪いと言われればそれまでか。


聖墓ダンジョン、地獄層。

推奨レベル、500万。

メイルが咄嗟にダンジョンに侵入、空間を捻じ曲げ退避。

外は死の世界。


下層、に行ったまでは良かった。


足元に、罠があった。

シュート。

単純な罠だ。

そもそも、階層移動に使ってた穴も、罠なのだけど。


浮上、に対する概念封印が存在し、そのまま落ちて・・・


「上に上がる階段を探そう」


此処では、レベル上げすら出来ない。


「待つにゃ!此処で・・・メリクル達の痕跡を探したい・・・にゃ」


「猫仲間、か。もう少しレベル上げしてからで良いか?」


「にゃ・・・そうだにゃ・・・」


バスレトが引き下がる。


メイルと月花が何か操作している。

月花が口を開く。


「ダンジョンに侵入できません。地図の取得に失敗しました」


「・・・お前達で侵入できないなら、規格外のダンジョンなんだろうな」


ルナナのレベルも超えてるしな。


「シルビア殿、ギルドチャットが通じません」


カゲの報告。

いよいよ規格外のようだ。


「風の匂いがするのう。恐らくあっちに階段があるの」


フェリオが視線を向けた先・・・俺も、そちらからの風には気付いていた。


「良し、行こう」


パキリ


一歩踏み出した。


「・・・パキリ?」


バスレトが乾いた声で呻く。

あ。


枯れ枝かと思ったら・・・地面に散乱してる枝っぽいのって・・・


識別ディテクト対象物オブジェクト


月花が識別の魔法を行使する。

普段はシステム情報を利用していると言っていたが、今はできないのだろう。


フォン


ウインドウが立ち上がり、名前らしきものが並ぶ。


「にゃ・・・仲間達の名前が混じってるにゃ・・・他にも、高レベルプレイヤーの名前が有るにゃ・・・メリクルはいないにゃ」


人骨っぽいんだが。

猫仲間じゃないのだろうか。


ひた・・・ひた・・・


「そして奴が・・・この元凶であろうな」


トライプニルが示唆した先・・・


形容し難い魔物が現れる。

大きな口、飛び出た2つの目、細長い首、4つ脚、緑色の液体を流す胴体・・・


「ギ・・・ギガ・・・」


「来るぞ!」


URナイフをスタンバイ。

他のメンバーも構え・・・


「ギガ・・・我を・・・従魔に・・・!」


「全力で断る!!!」

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