第77話 リアルバレ

「スレイ殿も、要人警護の任務に従事させられているそうでござる」


カゲが続ける。


結局強制労働させられているのか。


「スレイはギルドも解散させられましたね。メンバーも、他のギルドに組み込まれました」


月花が言う。


「・・・そんな事になってたのか・・・」


呟く。

大切な仲間がいなくなった様な寂寥感を覚える。


「まあ、俺には関係ない世界の話だな」


こくり。


カゲが入れてくれた、ミルクと砂糖たっぷりのコーヒーを飲む。


ぷは


「美味い」


「こーら」


ぴす


ギルドの妖精係のお姉さんが何故か後ろにいた。

何故此処が・・・はっ?!

まさか、月花の存在をトレース?!


「何でしょうか、もう関係ないお姉さん」


「キミ・・・本当に不敬だよね。幾兆もの年月としつき、私に楯突いた馬鹿種族は数多あまたいたけど、畏怖も敬意も無い存在はキミが初めてなんだけど」


父兄?異父?


「俺はもう冒険者ギルドに所属していない。よって、冒険者ギルドの指示には従わない。OK?」


お姉さんにビシッと言ってやる。


「あのね・・・じゃあ、冒険者ギルド脱退したなら、貸与したフェアリーを返して貰おうかな・・・小癪にも、倉庫やマイハウスは自前で作ってしまったからね」


何・・・だと・・・


「月花は、俺の大切な存在だ。月花は俺の物だ」


「あのね・・・」


お姉さんが溜め息をつくと、月花を一瞥し、



月花が、退職届、と書かれた封筒をお姉さんに差し出す。

おおっ。


「・・・そこの新生物は、本当にバグが深刻だね・・・分かった、キミに預けておくよ」


お姉さんが溜め息をつく。


「とにかく、キミは、ちゃんとみんなと同じ様に世界を救うのに参加しなさい。義務の放棄が、どれだけ悪い事か分かってるよね?一人だけハズレた事してるキミにだけ構ってあげる訳にはいかないんだよ」


んー。


「なんか、何時も、俺に構ってられないって言う割に、何でいちいち俺の所来るんだ?ほっとけば良いじゃん。どうやってか知らないけど、俺の行動いちいちチェックしてさ」


だよね?

ひょっとして。


「お姉さん、暇なの?」


「・・・キミ・・・本当に蛮勇だね。あまりにも愚かだ」


暇じゃないの?

じゃあ。


「実は俺のファンで、俺の冒険を楽しみにしているとか?まいったなあ」


「・・・」


違うのか?


「増長もいい加減にするが良い、朧月龍司」


本名バレてる?!


そう言うと、お姉さんは去っていった。

妖精係って、偉いのだろうか。


・・・あれ、カゲが聞いて・・・?

何だか震えてるし大丈夫だろうか。


月花を見ると、月花も顔が青くなって震えている。

フェリオ、ルナナ、トライプニル・・・同じ状況だ。

実は、あのお姉さん、強い?

案外、妖精係じゃなくて、冒険者ギルドのギルドマスターとかかも知れない。


--


「ステータスを拡張して、従魔のレベルも表示できるようにしました。レベルはプレイヤー準拠です」


月花が言う。

月花は、時々暇を見ては、ユーザーインターフェースを改良してくれる。

有り難い。


シルビア 人間 57万 宝王 2万

カゲ 影人 58万 忍王 2万

月花 フェアリー 87万

フェリオ 神狼 136万

トライプニル 焔締 74万

ルナナ うさぎ 206万


従魔が強いなあ。

ルナナすげー。


「フェル達もかなりレベル上がってるんだろうな」


俺が言うと、月花が首を振り、


「いえ、ご主人様の方がレベルは高いですね。フェルさん、リミアさん、ミストさん、フィロさん、アイリスさん・・・皆さん、レベル上げできていないので。勿論、戦闘力は皆さんの方が高いですが」


ですよね。

戦闘職と、非戦闘職の差だ。


「でも、全力で戦った場合、シルビア殿の方が有利でござるよ」


カゲが言う。

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