第66話 歴史の影で歩む者
「北の森からの侵攻は有るのか?」
「不要だ。砦を正面から陥とす」
とりあえず、北からの大規模な侵攻は無しかな。
このくらいかな?
俺は立ち上がり、
「聞きたい事は聞いた。言い遺す事は有るか?」
「?!」
魔族が戦闘の構えを取り、
ころり
魔族の首が落ちる。
魂ごと切断する一撃。
背後に控えていたカゲだ。
ボッ
吹き上がる無数のドロップ。
宝石に魔石に武具・・・あ、あれLRじゃね?
月花が回収する。
残された書類の束・・・軍略情報か。
拾い上げる。
聞き出す必要無かったんじゃね?
さて。
「動けるか?」
まだ怯える女性に歩み寄る。
「あ・・・ひ・・・」
がしっ
抱きついてきて、泣き始める。
いや、もう敵居ないですよ?
落ち着くのを待って、問いかける。
「立てるか?」
こくり、頷いて離れる女性。
「あんた、街の防衛戦力に顔が効くのか?」
有名人っぽい態度だったし。
「は、はいっ」
女性がぶんぶん、頷く。
「なら、これを上層部に渡して欲しい。ただし、参考程度、にな」
敵がドロップした資料を渡す。
敵の警戒が上がった気がする。
俺とカゲだけなら問題無いが、この女性は気配断てるのか・・・
「来い」
トライプニルを喚び出す。
女性をトライプニルに乗せ、俺も乗る。
「きゃっ・・・」
可愛らしい声をあげる女性。
トライプニルが
「と・・・飛んだ?!」
驚きの声をあげる女性。
いや、もう着いてるし。
本来、トライプニルに乗る距離じゃないけど、女性の隠密性が怪しかったから出しただけだし。
「此処まで来れば大丈夫だろう。魔王軍が迫っている、単独行動は避けた方が良い」
此処は街外れ、人目の無い場所だ。
女性をトライプニルから下ろす。
「あの・・・ギルド・・・ギルドに入りませんか?」
勧誘?!
「入らない」
断る。
当然だろう。
女性は少し考えた後、
「あの・・・良ければ、ギルドマスターになって貰えませんか?」
ギルマス押し付け?!
新しいな・・・
「断る」
当然だろう。
女性はまた考え・・・放置して逃げようかなあ・・・
「あの・・・ひょっとして、既にギルドに所属しておられますか?」
今は無所属だが・・・もう相手するのも面倒だし・・・
俺は女性に向け、低い声で言った。
「俺の所属ギルドは・・・」
女性が身を乗り出し、迫ってくる。
「
嘘を告げ、同時に気配を周囲に溶け込ます。
こう、謎の存在っぽい感じが出せたと思う。
白昼夢、とでも思ってくれれば良いのだが。
後日談。
俺が提供した資料は、無事、蒼天の槍のギルマス、ヒイロに届けられたようだ。
ヒイロが独自入手した資料のお陰で、防衛戦力は圧勝。
蒼天の槍は、ますます名声を得た。
その影に、資料を届けた女性の影や、俺の名は無い。
なるほど、ヒイロとやらはかなりのやり手らしい。
蒼天の槍のギルマスだけにね。
これは、俺やカゲ・・・イデアにも報告いってるだろうが、ごく一部の者のみが知る、歴史の裏に隠れた真実。
蒼天の槍は、これからもますます伸びるだろう。
俺は、別に文句を言うつもりは無い。
俺は、歴史の影の存在。
俺はただ、自分がやりたい事を出来れば良いのだ。
名声は要らない。
世界を救うのは、救いたい奴に任せるさ。
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