第19話 斬新なシステム
「強くても・・・お腹は膨れないのさ。やはり戦闘職ではお金稼ぎには無理が有る」
「斬新な意見だな。戦闘職は普通、お金稼ぎやすいのだけど・・・」
そうだなあ。
「むこうの山に、金色のゴーレム、ゴールデンモノアイが沸く。そいつを倒してドロップを集めるのはどうだ?」
「金色のゴーレムなら倒した事は有るけど・・・」
「有るけど?」
「ドロップって何だ?」
「金塊とか、アクセサリーとか落ちるだろ?」
「落ちるな」
「拾って売れば高額になるだろ?」
「え」
「え」
・・・?
「敵が落とした素材とかアイテムを街で売るとお金になるよな?」
「え、何その斬新なシステム」
「斬新じゃねえよ。ごく一般的なシステムだよ」
・・・
「武具とかドロップしたり、宝箱とかがドロップしたらどうしてるんだ?」
「え、あれって拾って良いのか?」
・・・良いよ。
「分かった、ちょっと狩りについていって、少しだけ教えるよ」
このゲーム、チュートリアルとかないしなあ・・・
文字ベースの時なら勝手に拾うのだけど。
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「はっ!」
剣士の少女──ミストが一閃。
同時に3体のゴールデンモノアイが倒れる。
ドロップは金塊2、金の手が1、ゴールデンアックスが1。
ひゅ
縄でくくり、引きずって運ぶ。
倒しては街に戻り、また倒し・・・といった事を繰り返している。
経過は順調で、既に2000万を超えた。
ゴッ
俺が蹴りを入れたゴールデンモノアイが、もう一体を巻き込み、沈黙。
金塊が3、金岩が3、金の大樹が1、武器数本。
月花が回収していく。
「凄いなあ、レンジャー。私もレンジャーやろうかな」
「戦闘職の方が良いよ。戦闘能力が圧倒的に違うからな」
「レンジャー楽しそうだけどなあ・・・」
ドロップ品を引きずりながら、ミストが言う。
「フェアリーを使役して何処でもアイテムボックスを使えるのは楽そうだし」
フェアリーはレンジャーのスキルで使役している訳じゃ無いけどな。
信頼と友情で使役しているだけだ。
『恐怖と同情ですよね』
愛情だよ。
『そういう事にしておきますね』
「順調にギルドの依頼をこなしたりしてポイントを貯めれば、フィールドのあちこちにあるマイボックスポイントでマイボックスを呼び出せます。それを利用すると良いですよ」
「なるほど、それは便利そうだな・・・ギルドの依頼、さぼるんじゃなかった」
ん。
何だか違和感が。
「ご主人様、ミストさん、気をつけて下さい。来ます」
ジッ
次元が歪む音がする。
これは・・・夜。
今まで昼間だった筈なのに、急激に夜になっていく。
そして・・・現れたのは、ヴァンパイアドラゴン。
「適正、2000レベルのアライアンス級。退却を推奨します」
月花が警告する。
「冗談・・・!あれを倒せば私の借金も何とかなるってもんだ!」
ミストが剣を構え・・・駆ける。
ザンッ
その斬撃が、30メートルはあろうかという巨体を、吹き飛ばす!
「・・・何てデタラメな威力だ。これが戦闘職、火力職の力か」
半ばあっけにとられ、俺が呟く。
邪魔にならないよう、距離を取り、牽制を兼ね、矢で急所を射貫く。
ガアッ
ヴァンパイアドラゴンのドレインウェーブ!
高範囲に、魔力吸収の波動を放つ。
・・・魔力が・・・吸われる・・・
「セイクリッドブレイバー!」
ミストが光り輝く剣筋で、ヴァンパイアドラゴンに凄まじい一撃を加える。
「ブラストマインフルバースト!」
爆裂地雷を20個連鎖爆発。
コウッ
ヴァンパイアドラゴンが闇のブレスを放つ。
何とか躱すが・・・周囲の木々、岩、地面がえぐれる。
いや、破壊不可オブジェクトなんですが・・・
「セイクリッドブレイバー!ブレイバー!ブレイバー!」
ミストが息をつかせぬ連撃を繰り返し・・・
ドスン
ヴァンパイアドラゴンが地に倒れ伏す。
・・・与えたダメージはミストが圧倒的に多いので、ドロップへのスキルの効果はなし。
それでも、色々な装備や素材がドロップ。
「やった!ドロップは半分に分けても・・・借金返せるよね!」
「ああ、1人分でも、捨値でも数億になると思う」
ミストの喜びを、肯定する。
「・・・でも、私はアイテム売るの苦手なんだよな・・・」
ミストが困った様に言う。
「なら、俺が売っておこうか?」
「うん、よろしく!」
ミストが右手を差し出し・・・同時に、フレンド登録を投げてくる。
承諾。
「よろしくな。売れたら連絡するよ」
そう言えば。
「ミストは、ギルドには興味が有るか?」
「ギルド?」
「ああ、PTの上位概念、みたいなもので。ギルドメンバーの情報を見たり、チャットで交流したりできるんだ」
「面白そう!是非入りたい」
「了解。うちのギルドは、トップを目指すようなギルドではないので、上を目指したくなった場合は、移籍を考えて欲しい」
「了解だよ」
ギルド勧誘、と。
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