第10話 貧乏性

カチリ


フェルが壁面の窪みにパーツをはめると、


ゴゴゴゴゴ


壁の一部がずれ、洞窟が現れた。

土の中っぽい、普通の洞窟だ。


「せっかく見つけたから、どうしようかと思ったんだよね。難易度的にはソロ出来るけど、盗賊系職欲しいからさ」


盗賊系や弓系は、専門職であるレンジャー系には劣るけど、探索技能がある。

補助魔法にも類似の魔法が有る。

戦闘能力は普通に戦闘職なので、こちらが一般的だ。


「そこ、後そこに、感圧式だね。踏まないように。もう少し先、ワイヤーだね」


罠の位置を教える。


「ん、りょーかい」


クエエエ


リザードンが数体歩いて来る。

あいつら、罠を踏んでいるのに発動しない。

おかしくないか?


ジュッ


次の瞬間、フェルが放った魔法で蒸発する。

だからドロップごと消えてるから。


「んー、やっぱり運が悪いなぁ。私、敵から殆どドロップ貰えた事無いんだよね」


「ドロップごと蒸発しているだけですよね、この天然危険物が」


「ちょ、今ディスられた?!」


「被害妄想じゃないですか?フェアリーは主人の意思を映す鏡です」


「待て、俺を緊急参戦させるな」


「シルビア、ちゃんとフェアリー躾けてよ!」


うむ・・・


「月花、あまり過激な発言は・・・」


「ご主人様・・・さっきからフェルさんのお尻ばかり見てますものね。卑猥な姿に魂まで抜かれてしまいましたか」


「え?!」


月花の捏造に反応し、後ずさるフェル。

待て待て待て待て。


「月花、嘘をつくな。フェル、今のは月花の嘘だ」


「そうですよ、自意識過剰じゃないですか?」


むにー


月花の口を伸ばす。


「何でお前はいちいち喧嘩を売るんだ」


「この娘からは良くない気配を感じるからです!早目に悪い芽は摘まないと!」


「や、私は悪人じゃ無いよ。むしろ、シルビアにはどちらかと言えば好意を持ってて、今見られてるって聞いたときもちょっと嬉しくて」


「そう言う所ですよ」


「どういう意味?!」


うーむ・・・分からん。

フェルと会って以降、月花の機嫌が悪い。


「とりあえず、フェル。魔法の威力抑えられないか?ドロップアイテムが蒸発しているのは事実だ」


「あら・・・」


逆に威力調整が出来ないとか?


ガサ


オーガが2体、ポップする。


ゴッ


炎の槍がオーガを貫き、2体とも倒れる。

繊細な魔法も得意なんですね!


棍棒、や、角がドロップ。


「出た出た!なるなる、威力強すぎたのかあ。高威力の方が気持ち良いから、ついつい加減して無かったよ」


「・・・魔力の温存的な意味もあるし、なるべく節約が良いかな」


「え?体内の魔力は使って無いわよ?大気の魔法をその場で集めているだけだから、節約とかは関係無いわ」


・・・


「戦闘職、凄いな」


「だから、非戦闘職は辛いって。良くそこまでレベル上げられたよね」


フェルが呆れた様に言う。


ガシャ


銀色の鎧が2体ポップアップ。


ひゅ


俺が薔薇の鞭を巻き付け、


ガシャン


もう一体にぶつけ、倒す。


「・・・非戦闘職が格上を一撃で倒すのはおかしいと思うけど・・・」


フェルが訝しげに言う。


「武器が強いからな」


何せLRだからな。


SR剣が1、URフルプレートが1、魔石が1、後は財宝。

解体を実行すると、追加でUR盾が1、SR槍が1ドロップした。


「待って、ドロップ量がおかしいわ」


「レンジャーだからな」


敵を倒し難い分、スキル補正で少し増える。


にしても、敵が強いから、一気に15もレベルが上がったぞ。


ひょいひょい


月花がドロップを仕舞う。


「待って、フェアリー、ひょっとして倉庫使えるの?」


「フェアリーですからね」


月花が答える。


あぐ


魔石にかぶりつく。


「ちょ、このクラスの敵のドロップなら一財産なのに、そのフェアリー食べてるわよ」


「あ、すまん。取り分を決めてなかったな。後から分配にするか?」


「いえ、それ以前に、高額アイテムが」


「痴女は貧乏性なのですね」


「痴女じゃ無いよ!」

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