夏の呪い
リーマン一号
夏の呪い
夏の呪い。
そいつは夏を謳歌する子供にだけ訪れる悲劇。
そして、かく言う俺もその呪いに当てられた被害者だ。
ここでは夏の呪いをどうやって乗り越えたのか、それを後世に残るの子供達に伝えておこうと思う。
・・・
当時の夏は俺にとって誘惑の塊だった。
大人になってからは絶対に味わえないような二カ月に跨る大きな休日が用意され、その間に俺は遊びに遊んだ。
海水浴、キャンプ、プール、夏祭り、花火大会。
時には母方の実家に帰省し、ご馳走を食べることもしばしば。
俺は毎日楽しすぎるぐらいの日々に心踊らせ、まさに夏を謳歌していたと言えるだろう。
だが、その時には既に夏の呪いは顔を出し、俺の体を蝕み始めていたのだ。
最初に違和感を覚え始めたのは、夏休みも終盤に差し掛かり、学校が始まることを予期し始めた頃のことだった。
あまりにも夏休みが楽しく、学校に行くのが少し億劫になっていた俺に、ふと疑念がよぎった。
それはソワソワとゾクゾクとするような言葉では表すことのできない何か。
その何かが次第に大きくなりつつある。
そんな感情。
俺は結局その何かの正体に気づくことはなく、友達に誘われるがままに残りの夏休みを過ごしてしまった。
そして迎えた夏休み最終日。
ああ。なんて楽しい夏休みだったんだ!
俺は散々ぱら遊んだ記憶を反芻していると、コップに注がれた水が表面張力から突然崩壊するように、今か今かと最高のタイミングを見計らっていた夏の呪いが遂に発動された・・・
そして、気が付いた。
そう。無いのだ・・・
絶対に無くてはならないあの記憶が、俺の楽しい夏休みの中には一切無い。
夏の呪いは完成し、俺は夜を失った・・・
この悲劇を決して繰り返してはならない。
だから、今、俺は声を大にして子供に訴えかけている。
夏の呪いを侮ってはならないと・・・
そして、宿題は計画的に進めなさいと・・・
夏の呪い リーマン一号 @abouther
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