阿南洸汰

屋根裏 1/2

       屋根裏

                                   



「そう、そうやって、しっかりと握るんだ。力いっぱいに」

 目の前にいる、キャラクターが描かれている小奇麗なパジャマを着た、まだ幼稚園も出ていないような男の子の小さい手に鋸を握らせて、椅子に縛った、彼とおそろいのパジャマを着た母親の方へと振り返る。大きなベッドのある寝室には縛られた彼女と、鋸を握らされた彼と、金槌を手に携える僕だけしかいない。声を上げることもできない彼女はがたがたと体を揺すり一生懸命にそれから逃れようとしている。肩ほどまでの髪はぼさぼさになって、粗末なビニールの荷作り紐で縛りつけられている手は鬱血して赤くなっている。その様はとても無力で、とても無様なようだったので、殺人鬼である僕は薄く笑ってみせる。背中の皮の一枚下で蠕虫が這い廻るような感覚がして、足元の床が消えてしまったようにふわふわと定まらない。手に持つ金槌を母親の前でこれ見よがしにぶらぶらと揺すってみせる。残酷な行為をする僕に彼女の顔からは血の気が引いていった。だけど、背中を這い廻る蠕虫はいなくならなくて、まだ浮いているようだった。子供に向き直り、その小さい背を優しく押した。子供はこれからのことなど分からないだろうに、何かを感じ取っているのか憐れにも泣きそうな顔をしていた。動悸が激しくなっていった。母親は恐怖にひきつった顔をこちらに向けている。彼らの苦悶のすべては僕がやったことの所為だった。せっかくの可愛らしいお揃いのパジャマも、せっかくの綺麗なシーツも、せっかくのアンティークの椅子も普段なら幸福だけを伝えるすべてのものは今や何ものにもならなかった。

 男の子は鋸の重さに引っ張られてしまってよたよたと足元が定まっていない。僕は彼の手に震えを隠した自分の右手を重ねて、そっと母親の首に当てる。その小さな両手は片手の僕に簡単に覆われてしまう。猿轡の奥から母親の荒い呼吸が聞こえる。それなのに彼女は今までのように体を揺すったりはしないで、子供のことを慈しんでいる。極力怯えを隠して、優しい瞳を彼に向けて。体の奥底から赤く燃える黒い何かが昇ってくる。それは脳髄を犯していった。時間も空間も目の前の一点に集約されていった。手の力が強くなる。力強く前後に動かす。それはもうお構いなしで、僅かながらの抵抗も虚しく呑み込んでいく。

鋸の歯に引っ張られた皮膚は歪んで、耐え切れなくなって、ほんの少し削れた。それの奥から赤い血が玉のようになって現れると、自らの重さに耐えかね、その姿を維持することができずに垂れていく。母親は子供から視線を外すと哀願するように僕を見た。縛られて無力な母親の瞳の中にいたのはただの少年だった。けれど、いまさら手を止めることはできない。

壁が見える。真っ白な壁。それにベッド。可愛らしいキャラクターのお揃いのパジャマ。子供は青色で、母親はピンク色の。綺麗なシーツ、真っ白で染み一つとしてない。味わいのあるアンティークの椅子。

背中にまた蠕虫が這い廻り始める。だけど、上から握る手の力を強める。手を引っ込めようと体全部の力を出すけれど、もうどうすることもできない。彼の手を握ったままゆっくりとゆっくりと動かす。鋸の銀の刃を赤い血がツーっと滑ってきた。それは母親の着ているパジャマにも垂れて、汚していく。心臓が大きく脈打って、呼吸すらうまくできなくする。蠕虫が暴れている。息が白むほどに寒いのに額からは粘つく汗が噴き出してくる。彼女は怯えた瞳にはただの僕が映っている。背中を這う蠕虫の数が多くなって、顔が歪んでいるのがわかった。

 すると、子供が泣き始めた。初めはしゃくりあげるように、そして、そのまま火をつけた様に、すさまじい勢いで泣き叫び続ける。僕は急いで彼の手を放してその口を塞いだ。ガランと鋸が落ちてしまう。彼の幼げな顔に赤い汚れが広がっていく。瞳には怯えだけが浮かぶ。母親は猿轡をされた口から怒気をはらむくぐもった叫び声をあげている。僕は彼女から顔を逸らして、押さえつけた彼の体を自らで隠し、子供の口を塞いでいる手の力をより一層強くする。それなのに泣き止んではくれない。涙が赤い汚れと混じって僕の手を熱くする。がたがたがたがた後ろの椅子を揺する音がひどくなって、目の前の子供の顔は赤く汚れて、そのくせ肌は白くなって、涙は熱くて。何が何だかわからない。こんなはずじゃないのに。力強く押さえつけたせいかいつの間にか子供はぐったりしていた。こんなはずじゃなかった。頭が散り散りに引っ張られている様で、やっぱりぐったりしていて、もうどうしようもなくて、金槌を拾い上げると彼の頭を思いきり叩いた。

 ぱきりっと、乾いた音がして、彼の頭がぽこりとへこんだ。耳から薄赤い泡が溢れてくる。後ろでは母親のくぐもった悲鳴。がたがたがたがたと音も止まない。僕は決して彼女からは見えないように、巧妙に体で隠して、何度も何度も力いっぱいに金槌を振り下ろした。支えを失って、柔らかなそのものだけとなった皮膚が伸び切り裂けていく。納められていたものがその姿を露にする。愛らしい顔を形作る頭蓋の白に覆われていたものは恐ろしいまでに肉だった。ただただ味気なく、虚しくなるほど肉だった。それ以外には何もなかった。喉の奥には血の匂いが充満し、金槌にへばりついた彼だったはずのただの赤い肉の破片が辺りに飛んでいく。白い壁にも、僕の顔にも。きっと母親にも。へこんだ頭に引っ張られたせいか、耳の形がとても歪だった。眼窩と瞳のほんの少しの隙間からも血が溢れて垂れている。床に敷いてある絨毯に染みがどんどん広がっていく。きっともう取れない。台無しになってしまった。がたがたという音がしなくなった。悲鳴はもう嗚咽に変わってしまった。もう何も戻らない。

息も上がっていて、嗚咽もずっと聞こえてくるのに、なんだか全てがゆっくりだった。金槌を持つ手は自分のものではないようで、飛び散る頭だったただの肉片も、もう善いものも悪いものも、美しいものも醜いものも何も映すことのなくなった大きな瞳も、広がっていくもう取れないであろう染みも、立ち上る赤い血の匂いのする白い湯気も全部ゆっくりだったのに、僕は今ここで起こっていること全てに何もできないで、ずっとそれを眺めている。僕のであってもう僕のではなくなってしまった腕は止まらない。金槌にこびりついた皮膚だったか脳髄だったか、どこの部分だったかもう混じりあって分からなくなってしまった肉が舞い上がって口の中に入ってきても機械の様に振り下ろし続ける。しばらくすると、叩きつける金槌の感触が変わって、そのすっかり意味を持たない肉になってしまった皮の先に、真っ赤に染まった絨毯が見えた。頭の中に詰まっていたものがどろどろと液状になって床に溢れていた。細かくなった白く硬いものも散乱している。もう何も元には戻らない。腕が痺れて、金槌も重くなって、どちらのせいなのだろうか、勢いを支えきれずに体が振り回されて、倒れてしまう。倒れた先の肉が体に引っ付く。肺が焼き付くようで、呼気とともにはいる血の匂いは何度もむなしく肺の中を往復する。何度も何度も深呼吸をしてから後ろを振り返る。すさまじい形相の母親もいつの間に倒れていたのか、椅子に縛り付けられたまま床に横たわって、まだ体をがたがたと震わせている。でも、アンティークの椅子はさすがに頑丈で歪みもしていない。血走る瞳には僕の顔が映っている。ふと気が付いて顔をぬぐうと、きっと初めの方に着いたのだろうまだ形のしっかりとした毛がついたままの肉がずるりと落ちていった。母親は崩れてしまって、肉でしかなかった子供に対してだろう、涙を零す。床に落ちていた鋸を手に取る。どろどろに混ざりあって、元が何だったのかわからない肉でべたべたとぬるつくそれを母親の首筋にあてると、ゆっくりと前後に動かしていく。母親はまばたきをすることもなく、顔にかかった子供だった肉を拭うことも出来ずにずっと涙を流している。手が痺れて、そのせいで何度も握りなおして、時には服で肉をぬぐったりした。息は深く、ゆっくりになっていく。母親はもう肉にすぎなかった子供を思うことも、哀しむことも、それから憎むことも、何もかもに倦んでしまったのだろう、うなだれたまま動かない。鼓動が落ち着いていくのにしたがって、体の先まで温かいものが流れていくのがわかる。一度息を大きく吸うと、ぐっともう一度手に力を入れて、前後に何度も動かして肉を削っていく。やっぱりもう動かない。ただ涙だけが堪え切れずに落ちていって、肉と混じるだけだった。少しすると途中でいきなり血がまき散らされた。それは部屋に飛び散った彼だったただの肉と、延々と流し続けていた涙と混じる。それでも手を止めなかった。母親の瞳から涙が零れることはなくなった。なんだかすべてがとても重くなってしまって、肉で汚れた床にどっかりと腰を落とした。真っ赤になったまま白く濁った瞳をこちらに向けている、だらりと力なく垂れ下がった母親の頭をぼんやりと眺める。まだまだかかりそうだった。それはもう肉だった。彼と同じでただの肉に過ぎなかった。全部が何でもなくなってしまっていた。僕は重たい体で立ち上がると、なおさらに力を込めて鋸を前後に動かし続けた。手ごたえが変わって、うまく動かせなくなっても続けた。ぬぐったはずの手がまたぬるぬるとして、ざりざりという音がして、視界が赤かった。そこを過ぎて、だらりとした頭を何度か整えて、それをすっかり体から離した。僕はそれを拾い上げると、ただの肉となった子供の横に、向かい合わせにおいてあげて、その家から出て行った。外はべたべたで赤くなった僕とは違って、張り詰めるほどに澄み切っていた。吐き出す白い息も、体から立ち上る匂いも、情けなくなるほどあっさりと掻き消えてしまった。


 ばしゃばしゃと赤く染まった水が白いタイルの上をするすると流れて排水溝へと吸い込まれていく。湯は冷え切った体をゆっくりと温めていって、じんわりと手足に感覚が戻ってくる。震える手を押さえつけて、何度も体をこすった。

 風呂場から出て、誰もいないのを確認すると、真っ暗な階段を、足音を忍ばせて上がっていく。そして、また音のしないように気を付けて扉を開けて、屋根裏の自室に入る。ぱちりと電気をつける。ベッドとその真上に天井の屋根の形の通りに傾斜している天窓。机と、その隣に、幼いころに日曜大工で作った本棚。それに床にじかに置いたテレビ、それから服の散乱したクローゼット。そんな屋根裏部屋が僕の部屋だ。僕は布にくるんだ金槌と鋸、それからビニール袋に入れた、後で燃やしてしまうつもりの血と肉のついた服をクローゼットの散乱した服の奥のほうに追いやると、ほっと一息ついて、ごそごそとベッドにもぐりこむ。そして、そのままぼんやりと斜めになった天井に沿った窓を眺めた。

 まんじりともせずにベッドの真上にある天窓を見詰めていると、そこから鮮烈な朝日が差し込んでくる。それを一身に浴びるとなんだかとても暖かかった。伸び切った時間に圧迫されるようにぐったりとした手足は重くなる。瞼も同じに重くて、ただそれだけになって、鼻の奥からも血の匂いが消えてきて、今日の出来事はどこか遠い昔のことの様だった。それなのに物音が階下からしてくる。どうやら両親が目覚めたようだった。僕は急いで天窓にカーテンを下ろすと、布団をひっかぶって硬く目を閉じた。ベッドに横たわっていると、物音とともに、朝の挨拶をする微かな声が聞こえてくる。早く眠ってしまいたかった。


 天窓からまっすぐに太陽の光が降りている。焼けそうなほど熱いそれから逃げて、直に床に腰を下ろし、ベッドから少し離れたつけっぱなしのテレビをぼんやりと眺めていた。それからは歌が聞こえてくる。僕と同じ年頃の、十代半ばの少女たちが踊っている。夢と恋を歌う彼女たちは、そうすることを強要されたにこやかさと無暗に溌溂とした声を以て、とても魅力的だという印象を押し付ける。だから、彼女たちを見ている人々は熱狂の幸福の中で称賛を浴びせる。

「はいっ。私たちはファンの皆さんの笑顔の為にこれからも頑張っていきたいです」

 踊ったばかりのせいで、うっすらとかいた汗に照明が反射してきらきらと肌が輝いているようで、少し上がった呼吸は言葉を途切れ途切れにする。パチパチと見えないところから拍手が聞こえてきた。なんだか気持ち悪くなってしまって、しょうがないから僕はチャンネルを変える。でも、変えた先にも笑顔の女性リポーターがいて、学生服を着た青年に何かインタビューをしていた。

「はいっ。自分の夢を叶えるためにも、これからも頑張っていきたいと思います」

彼の確固とした自信を含んだ恥じらいも、自分が認められたことの嬉しさを抑えきれない謙遜も、なんだかまた気持ちが悪くて。ぱちぱちとチャンネルを変えていく。そのうちにワイドショーにぶつかった。この町で起きている事件をおどろおどろしく、それでいて、面白おかしく放送していた。僕のことだ。さっきまでの気持ち悪さが嘘みたいに消えて、わくわくと楽しくなって、ずっとそれに見入っていた。

「ーでは、犯人は同じ町内の人間だということでしょうか?」

 ぴっちりとスーツを身につけて、こざっぱりとした男性が、よれよれの格好をしてぼさぼさ頭の男に取り繕ったように真剣な面持ちで尋ねる。

「はい。そうです。最初の一件と、今回の犯行が同じ町内で起こっていることからもそれは確かではないかと・・・」

「それはどういったことでしょうか。犯人がこの町にゆかりのない人物であるということもあり得るのではないでしょうか?」

 ぴっちりとしたスーツの男は視聴者を気遣ってのことだろう、自分では何とも思ってもいないだろうに職務を全うしようと質問する。

「いいえ、それはあり得ません。なぜなら、警察の捜査では不審な車両などは犯行現場近くでの目撃情報はなかったということですから。もし、犯人がこの町の人間ではないということになると、徒歩での移動ということになりますから、さすがに人目につくかと思われます」

「なるほど、そういうことですか。ですが、それだけでは犯人がこの町の人間であると断言できるとは思わないのですが・・・」

「ええ、ですが、犯行現場の状況から、この犯人は非常に強い怒りに支配されているとみられます。それに返り血を浴びているであろうはずなのにそれを始末した形跡がないものですから。その点を鑑みても・・・。何か合羽のようなものを用いたとも考えられますが、家の至る所に血痕を残していますし、それは玄関どころか、外にまで続いていますから・・・」

「なるほど、そうですか。では、動機はどうお考えでしょうか」

 スーツの男はとても驚いた風な顔を見せてから、またまじめ腐って尋ねる。好奇心に自らの人生を賭して懸命に奉仕している彼は、今きっと、夕飯を何にしようかなどと考えているのだろう。それとは反対に、ぼさぼさ頭の男は何気なしにされた、会話を流し淀みなくするためだけの些細な質問に真剣に考え込んでいる。嫌な間が開いてしまったのをスーツの男が埋めようとしたときに、ぼさぼさ髪の男は口を開いた。

「いや、ちょっと断定はできません・・・」

「そうですか。では、次のー」

「ただ・・・」

 スーツの男の進行を妨げて、またぼさぼさ頭の男が口を開く。カメラも男の号令で段取り通りに動いていた為に、違う場所を映そうとしていたのを慌てて戻した。最も崇高な仕事を邪魔されているスーツの男はじれったそうにしている。

「ただ、犯人の家庭環境には確かに問題があるかと・・・」

 ぼさぼさ頭の男は拍子抜けのことを言ってまた真剣に考え込む。スーツの男はもっとも崇高な仕事を邪魔した結果のあまりにくだらない彼の発言に呆気に取られてしまっているようだった。

「ハイッ、皆さんこんにちは。芸能のコーナーです」

 画面がパッと切り替わって、女のアナウンサーが胡散臭い朗らかな声を出している。彼女の後ろには、派手な、それでいてけばけばしくならないように少し色味を抑えたパネルがあった。それは無意味に所どころ隠されていて、好奇心をそそるように懸命な工夫が施されている。それに僕はもう嫌になってしまって、またチャンネルを回して、自分のことを探したが、僕は画面の中のどこにも見当たらなかった。だからテレビを消して、ベッドに横たわる。家はしんとして、町から聞こえてくる喧騒はとても遠くのことの様だった。窓から差し込む強烈な太陽の光だけが熱かったのに、僕は病人みたいにずっとベッドから起き上がることができない。強烈な光に眩惑されて、ぐわりぐわりと揺れる視界が吐き気を誘う。まだ、町の音は遠くにあって、四肢がぐったりと重くなって、泥のように定まらない体ではもう起き上がることなんてできなくて。僕は夢なんて見ないようにと祈って、ゆっくりと眠りに落ちていった。


 目が覚めると辺りはもう暗くなっていた。闇の中でも物の輪郭がぼんやりと黒い。僕はまどろみに任せてベッドに横たわったまま目を天窓に向けて何もしないでいた。階下からぼそぼそと声が聞こえる。もう父も母も帰ってきていたようだった。

「・・・だから、男親のあなたがそんなだからあの子だってあんな風になっちゃったんでしょ・・・。大体・・・」

 途切れ途切れではっきりとは聞こえてこない話声のほとんどは母親のものだ。彼女はその得意の金切り声で、今も父親のことを激しくなじっているのだろう。父親も父親で、その背を丸くして、黙って聞いているのだろう。

 僕は固く目をつぶったけれども、頭は冴えるばかりで、階下の声がより大きくなるだけだった。

「はぁ、こんなことになるのならあなたみたいな人と結婚なんてするんじゃなかった。父も、それに母だって反対していたのに・・・」

 それでも父の声は聞こえない。母親はまだしゃべり続ける。

「大体あなたは昔からそうよね。母に反対された時も黙って。それで済むと思っているのでしょうね。何一つ決断もしないで。そういうところがあの子にも・・・」

 ぐっと瞼に力を籠める。それでも何にもならなくて、どうしようもなくて、ゆっくりと目を開けて、窓の外の遠い空に目を向けた。夜空は静かで、さやかな月が雲の後ろから姿を現すと僕を白い光で照らし出す。どんどん目が慣れてきて、どうしても体の感覚がはっきりして、暗い中に混じっていた影もくっきりと姿を現してしまう。クローゼットもはっきりと見えた。耳を両手でふさいでも、まだ階下からの声は聞こえてくる。

「あれだけ習い事もさせてあげたのに何にもならないし・・・。学校だって・・・。出来るはずなのに・・・。絶対にあの子はできるはずなのに・・・。なんでこんなことになったのかしら・・・。本当に母の言う通りになってしまって・・・」

 母親は嘆いてばかりだった。最後まで父親の声は聞こえなかった。

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