第124話検索候補

 普段からYouTubeばかり見ているせいで、時々「僕もユーチューバーになってみたいなあ」と思うことがある。


 何か動画でやってみたいことがあるわけではない。

 ユーチューバーの動画を見るのが好きだから、自分も作り手側になってみたいという単純な動機だ。


 ただ、ここで問題がひとつ。

 僕は平凡な人間なので「○○系ユーチューバー」の○○に当たる部分が思いつかないということだ。


 自分の特徴のなさに腹が立つ。

 強いて言えば、小説を書きたいと思いつつ書いていない、という点は珍しいかもしれないが……。


 待てよ、小説家志望ユーチューバーって、まだいないんじゃないのか!?

 これを最初にやれば注目されるかもしれない。


 そう思った僕はさっそくグーグルで「小説家志望 ユーチューバー」で検索してみた。

 すると、既にいた。


 ……うん、自分が思いつくことは、既に誰かがやっているものである。

 しかも僕と違ってしっかり小説を書いている人だった。

 とりあえず僕はそのユーチューバーをフォローすることにした。


 まあ、それはいい。

 それよりも、グーグル調べようとしたときに予測検索で、


「小説家志望 書かない」


 と最初に出てきたことに僕はどきりとした。


 そうか、小説を書きたいと思っている人間が書かないのは、珍しいことではないのか。

「小説を書きたいと思いつつ書いていない」ことがネタになると思っていた僕は、何だか恥ずかしくなってしまった。


 それから、ユーチューバーを目指している場合でもないな、とも思った。

 まずは小説を書き上げねばならない。


 初心に戻った出来事であった。

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