第85話保身
実は、細々とではあるが小説を書き進めている。
文芸部での日常を書いた話で、一つ年下の後輩がヒロインだ。
完成させることができたら投稿しようと思っているのだが、まだ道は長い。
物語を書いていて、ぴたりとキーボードを打つ手が止まってしまうことが度々ある。
ふと、冷静になってしまうのだ。
「こんな稚拙な妄想をネットに投稿するなんて、恥ずかしいことなのではないか」と。
きっと自意識過剰なのだろう。
読者はいちいち、書き手が恥ずかしいヤツかどうかなんて気にしていない。
作者は何を書こうが自由だし、読者からどう思われたって気にする必要はないのだ。
そのはずなのに、自分のイメージを守ることに必死になってしまう。
どうせなら頭が良い人だと思われたいし、カッコイイ人だと思われたいと考えてしまう。
「えっ? 散々カッコ悪い部分をエッセイで晒しまくってるのに、今さら何言ってんの?」
と思う人もいるだろう。
確かに僕のエッセイは自虐的だが、これでもまだカッコつけている方なのだ。
現実の僕はもっと酷い。
必死で取り繕って、少しでも馬鹿にされないように文章を書いている自分がいる。
保身だ。
保身に走ってしまう。
これが僕の本質だ。
現実逃避で書いているような小説の中ですら周囲の目を気にしているなんて、本当にどうしようもない。
そんな自己嫌悪に陥りながらも……僕は何だかんだで小説を書いている。
書いているときは、楽しいような、苦しいような、何だかよく分からない気持ちがする。
とりあえず今は一文字ずつ、一行ずつでもいいので書き進めて、最後まで作り上げたいと思っている
拙い出来でも、まずはやり遂げなければどうにもならない。
いつか、いらないプライドを捨てて、保身に走るクセも捨ててしまいたい。
小説を書いているときくらい、何事からも自由でありたいものだ。
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