LASTArk

O3

LASTArk 1

何もかもが闇にそまるこの時間。町の灯りは酒場でさえもほとんど消えてしまっている。

町の中でも1、2の高さをほこる建物の屋上に二つの影があった。

「ほんっと、楽しいことねぇよな……」

紫煙を揺らしながらヤギの獣人、ルシフェンはため息をつき呟いた。

「ちょっと、タバコ臭い」

煙を手で払いながら青髪の少女、ロウディアはしかめっ面でルシフェンの方をみる。

ルシフェンは顔をしかめながらもしぶしぶタバコを床に落とし踏みつけた。

ジュウッ、と音をたて火が消える。

この前からなんだかこいつの喫煙量増えているな、とロウディアは感じていた。おそらくラストアークにいるあの鹿の獣人のことがあってだろう。

二人に何があったかまではわからない。訪ねてもロウディアに利益はないだろう。

「あーあ、マリアのやつあんな賭けをしやがって……お陰で動きづれぇじゃないか最近」

「文句をいうならミッシェルに言いなよ。言い出したのあいつだし」

あのラストアークの少女……たしか「エル」といったか。

エルの拉致事件があってからこの辺りのギルドは連携をとり警戒が厳しくなっているため、マリアがつけた優劣の優のほうの犯罪者も何人か捕まり始めている。今の拠点に移る前とは行動がとりづらいのが現状である。

それにロウディアがなんであの子をつれてきたかとミッシェルに訪ねても「秘密です」とか言って特に教えてくれない。

まあ、掘り下げて聞くほどめんどくさいものはないのでそのままほったらかしである。

「あークソイライラする…暴れたりねぇ。よさそうなやつはいねぇのかなぁー」

新しいタバコに火をつけ、ルシフェンが目を凝らしてみる………真っ暗すぎて細かいとこまではわからないが人はいなさそうだ。

今日は新月のため夜に出歩く者もいない。

「新月のときは目がきかないからそうそう出歩くやつっていない…………あ」

「お、なんかいたか?」

ルシフェンがロウディアの方を振り向いたのと同時にロウディアは屋上から飛び降りた。

ひらりと着地しそのままどこかへとかけていく。

「あっ、おい!…………まあ、いいか」

つけたばかりのタバコを消して、同じように飛び降りる。

飛び降りた場所は路地裏の入り口だった。地面をみるとポタポタと水滴の後が路地裏の奥のほうにまっすぐ続いている。

ロウディアは水属性のため彼女が作った武器は常に水が滴っている。おそらくこれはここで武器をつくりその時に垂れた水だろう。

ルシフェンはその水滴をおい、歩いてロウディアの後を追っていった

***

路地裏を進んでいくと微かに声が聞こえ始めた。

足を進めるたびに声は大きくなっていく。中身もはっきりしてきた。怒号や罵声が聞こえる。

ロウディアは声を頼りにどんどん奥へと進んでいきその元へとたどり着いた。物陰から気配を消して様子を伺う。

何人かの人物が一人を取り囲んでいる。

取り囲んでいるのはチンピラで囲まれているのはおそらく一般男性であろう。なぜ路地裏にいるのかは知らないが、カツアゲか因縁でもつけられたのか。

男の顔にはアザができており、いまにも泣き出しそうだ。

その男を取り巻くチンピラは容赦なく男に畳み掛ける。

品のない言葉で男を攻め立て続けている。

チンピラたちの罵声、怒号、笑い声、それが路地裏に響くと同時にロウディアのイライラも募っていく。


─なぜこのチンピラたちはこんな小さいことにまで徒党を組んで群れるのだろうか─


ロウディアの一番の嫌いなものはこれだった。だから昔から集団行動は嫌いだ。

憎悪、怒り、嫌悪がぐるぐると渦巻き思考を飲み込んでいく。

そして感情が頭に溢れかえったその時、ロウディアは作った大鎌を握りしめた。もうこうなれば自分でもどうすることもできない。この気持ちをすべて吐き出してやりたくて仕方ない。

物陰から飛び出し背後から息を殺しすばやくチンピラに近付いくと




─こんばんは─




そうささやいてロウディアは鎌を思い切り横に薙ぐいた。

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