『朝寝坊をしてしまったため、メイドさんに罵倒されるだけのお話』

赤眼鏡の小説家先生

『ご主人様は朝というものを、ご存知ではないのですか?』

「あぁ、おそようございます、ご主人様」


「随分と、ゆっくりしたお目覚めですね」


「ご主人様は時計の読み方も分からないのですか?」


「短い針が、10を指して、長い針が12を指している場合は、10時と読むんですよ」


「そんな事知っている? 知っていないから、こんな時間まで寝ているのでしょう」


「おかげで昨夜作っておいた、アボカドキムチマヨネーズ納豆入り野菜カレーが、まだ残っています」


「なんですか、その顔は……」


「仕方ないではありませんか、冷蔵庫に食材があまりありませんでしたので、ある物を使って作ったのですから」


「カレーはどんな食材を混ぜてもそれなりに食べられる魔法の料理なんですよ。そんな事も知らないんですか?」


「だからご主人様はお子様なんですよ」


「それに冷蔵庫を開き、そこにある食材から、最適解を導き出すのが真の料理上手と言うものです」


「買い物? 買い物ですか? はぁ、お外をご覧ください」


「ほら、太陽が見えます」


「意味が分からない? だから、ご主人様はモテないのですよ」


「小学校から勉強をやり直したらどうですか?」


「そうすれば、そのお子様みたいな脳みそも少しはマシになるでしょう」


「そんな脳みそでは、本当に将来が心配ですね。仕方ないので、わたしが分かりやすく解説して差し上げます」


「いいですか、太陽が出ていますと、同時に紫外線も出ている事になります」


「紫外線に当たってしまいますと、わたしの純白の、シミひとつない柔肌が、日焼けしてしまうではありませんか」


「ほら、見てください、すべすべですよ」


「すべすべのツヤツヤ」


「………………………………」


「…………………………スケベ」


「なんですか、そのスケベな目線は」


「鼻の下が伸びていますよ、気持ち悪い」


「まぁ、わたしの肌を見て、欲情してしまうのは仕方のない事です」


「はいはい、言い訳は結構ですから、そろそろ起き上がってくださいね」


「それでは今から、本当に手間ですが、カレーを温め直しますので、胃袋がねじ切れるまで、詰め込んでくださいね」


「またそんな顔をしても無駄ですよ、ご主人様」


「ほら、朝カレーは健康にいいと言いますし…………あ、朝ではなくて、昼ですね」


「まったく誰かさんが、お寝坊さんのせいでお掃除も出来ないではありませんか」


「これでは、ホコリと一緒に掃除機に吸われてしまっても、文句は言えませんね」


「ゔぃーん」


「あっ、何笑ってるんですか、目障りです。…………失礼しました、言い間違えました、視界に入らないでください」


「ご主人様が視界に入るだけで、わたしなんだか、変な気分になってしまいます」


「悪い意味で」


「あぁ、他意はございません。そのままの意味です」


「では、こうしましょうご主人様」


「にらめっこで勝負をして、負けた方は絶対服従」


「ほら、ご主人様は…………にらめっこが…………ぷっ、お強いので」


「まだ始まってもいないのに、面白い顔をされているとは流石ですね、ご主人様」


「勝負をする前から、面白い顔をするだなんて、ご主人様の反則負けですね」


「そんな反抗しても無駄です、ご主人様は負けたのですから、わたしに絶対服従」


「そうですね、では、カレーを食べ終わったら、お買い物に付き合ってください」


「日焼け? そんなの、全然これっぽっちも問題ありませんよ」


「まさか、ご主人様、先程の話しを本気で信じているのですか?」


「だから、ご主人様はお子様なんですよ」


「日焼けなんて、日焼け止めを塗って、日傘をさして、帰りにソフトクリームを買っていただければ、全く問題ありません」


「何笑っているのですか、今のどころにお笑いポイントがあったのでしょうか」


「ソフトクリーム?」


「そんなの、暑い中買い物に行くのですから、メイドとして当然の権利でしょう」


「仕方ありませんので、ご主人様にもすこーしだけ、すこーしだけですよ、分けて差し上げます」


「そうですね、コーンをパリっと千切って差し上げます」


「嫌ですよ、ソフトクリームの部分はあげません」


「ご主人様は本当にいやしんぼですね」


「ほら、わたしとお喋りしているのが楽しいのは結構ですが、そろそろ本当に起き上がってください」


「でないと、ご主人様の首の下にある、わたしの細腕が痺れて悲鳴をあげてしまいます」


「全く、わたしに腕枕してもらわないと寝れないだなんて、ご主人様は本当にお子様ですね」


「本当の本当に、手間がかかるご主人様です」

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『朝寝坊をしてしまったため、メイドさんに罵倒されるだけのお話』 赤眼鏡の小説家先生 @ero_shosetukasensei

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