剣に命を握られて
ゆそうたい
ヤツィマの出会い
1-1
ɪ
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予定よりも遅れ気味だったので歩を進めるのを早くしていた。
早歩きのせいか少し体は汗ばんでいた。
外套を羽織っており、その隙間から時折吹き込む風が心地良かった
周りはというと日は傾き始め、それぞれ影が伸び始めている。
目的地としていたヤツィマの村はそんな時に見えてきた。
「隣村を出たのが昨日の朝だから、一晩野宿してこれか、、、僻地だな」
あまりに遠いので仕事を配分した上司を恨む。
村の家屋を見る。
木と土壁でできた小さな家が7棟ほど建っていたと思われる。
推測である理由は内2棟は屋根はなく一部の壁と土台を残しているだけで家とは言えないほどであり、残る5棟の内3棟も大きく穴が開いていたり、ドアや窓がひしゃげていたりと人が住める状況ではなかったからだ。
「どんな状況だ?まともに暮らせそうなのはあの2軒だけか」
もう夜になる、人が居なければ間借りさせてもらおう。
人が居た時は、、、それは後で考える。
先に言うが、剣こそ持っているものの野盗ではない。
そこは理解してもらいたい。
まともな家屋のうち近いほうへ近づき、玄関の戸をノックする。
「誰かいませんか。道に迷ってしまって」
何度か声をかけたが中から反応はなかった。
剣の柄を握り、警戒しながら戸を開ける。
…ギキィ
ドアが鳴る。
中は少し暗かったが窓から斜めに光が入り込み、ところどころを赤く染めている。
家具が整然と並んでおり、荒らされたような形跡はなかった。
時間をかけて中を見て回った。
食べ物の類は少なく大きな穀物の袋があるのみで、それ以外というと衣服も少なかった。
「荒らされてはないが物資は少ない。これは少しまずいな」
全ての部屋を調べ終わるころには日は暮れきっていた。
持っていたランプに火をともす。
と同時に家屋の外から人の声がした。
若い男性のものが2人、女性の声も聞こえる。
「全員が武装しているのか?3人か。分が悪いな。戦わずに素直に出るか、、、?」
いくらか逡巡したのち決心した。
玄関の戸をすこし開ける。
腰に帯びた剣は鞘から抜き放ち左手に握りしめていた。
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