第46話 空の大迷宮の創造主
「はぁ...」
ソウタはため息をつきながら寝てしまったみんなのことを見る。
「あんだけ騒がしかったのが嘘みたいだな」
あの後、メイと茜さんが俺に抱き着いた状態で「いい匂いします〜」とか「ソウタ君好きだよ〜」とずっと言ってきて、それに我慢の限界がきたセリスが二人にやりすぎだと怒っていた。
もちろん茜さんはそんなセリスを見て面白そうにからかい始め、それに言い返していたセリスだったが、何故か途中からメイが二人の標的になり、いじられていた。
そして、今までの疲労がきたのか糸が切れたように三人とも寝てしまい、三人の寝る時のタイミングがいきなり過ぎたので、一瞬だが心配してしまった。
「ったく、ここは大迷宮の中だってこと忘れてねぇよな?」
ここには俺達四人しかいないはず、なのに知らない奴の気配を感じた。
「忘れてそうだよねぇ?」
「あぁ、そうだな。ところで、お前は誰だ?」
「ありゃりゃ、あんま驚かないんだね」
「早く答えろよ」
そう言って目の前の160cmぐらいのピンクの髪色をした男に威圧をかけると、すぐに地面に膝をつけ、四つん這いの状態になってしまった。
「な、なんで、こんな、ことするんだよぉ、!」
「お前、弱いんだな...悪かったな...」
「本当にだよ!」
威圧を解くと、しんどそうにしながらも立って怒鳴ってきた。そして、その声のせいで三人とも起きてしまった。
「だれ?」
「どうせ、ここを作った奴だろ?」
「はいはーい!そうでーす!お兄さん鋭いねぇ」
「近付いて来んな」
ピンクの男が近付いて来たので頭に手を置き抑える。
「うぅ〜、ひどいよ〜」
「男のくせにメソメソ泣いてんじゃねぇよ」
「「「「え?」」」」
俺がそう言うとみんなから変な目で見られた。
「お、女の子ですよね?」
「女の子だよね?」
「ソウタって知らない女には厳しいよね」
「は?」
なるほどな、みんなこいつのこと女だと思ってるのか。まぁ体格からして女っぽいからな。
ソウタは自分の中でそう決めつけ、ピンクの髪の男を見る。
女に見えなくはないんだよなぁ...そこらへんの奴と比べると可愛いしな。
評価し終えると、今まで黙っていたピンクの髪色の男にアイアンクローをかましてやる。
「イタタタタタタタタタタタタタッ!」
「滑舌いいな」
「「「うわぁ」」」
後ろの三人の嫁から凄く引くような目で見られた。あと、セリスはアイアンクローの痛みを思い出したのか頭を抑えながら俺を見ている。
なんだか最近、俺の評価がいきなり下がっていってる気がするんだよなぁ...
アイアンクローをしたまま考え事をしていたせいで、気がついた時にはピンクの髪色の男は気絶していた。
それに気付いたソウタは何事もなかったように手を離すと、男は倒れてしまった。
「うわぁ」
「なんだよ」
「あの時すぐに謝ってなかったらこうなってたのかなぁ、とおもって」
たぶんなっていただろうな、とは言わない。言えばこの後どうなるかだいたい予想出来るからだ。
「ソウタ君って女の子のこと嫌いなの?」
「好きだぞ」
「ソウタさいてぇー」
「なんでだよ!?」
「女好きってことでしょ?」
「違ぇよ!」
地雷がどこにあるのか全くわからない。こいつら個性豊かすぎるんだよ...
そんなことを考えているとピンクの髪の男が起きた。
「よぉ、早く起きろよ」
「ひっ!」
「こらっ!」
「いてっ」
男を起こそうとしたら何故かセリスにわざわざジャンプしてまで頭を叩かれた。
「何すんだよ」
「完全に怯えてるでしょ!大丈夫?」
「う、うん」
「ほら!こんなに怯えてるじゃない!」
セリスがピンクの髪の男を抱いて「よしよし」と撫でている。もちろんそれを見ているソウタは平静を装っているが、内心はとても穏やかではなかった。
「...おい、そろそろセリスから離れろ」
「えー、もうちょっとだけ...」
「離れろ」
「はい!」
ドスを効かせた声で言うとすぐにセリスから離れた。
「で、お前の名前は?」
「え、えーと、」
「早くしろよ」
「ちょっと!いくらなんでもひどすぎるよ!ごめんね?この子は本当はいい子なの」
「は、はい...」
そろそろ限界がきたのでセリス達の誤解を解く事にする。
「こいつ、男だからな?」
「そんな嘘言っても無駄ですからね!」
「...そろそろ猫被ってないで自分のことを言え」
「えぇー、ならなんで僕が男だってわかったか教えてくださいよぉ」
「匂いが女の香りじゃなかったから」
なんでみんなそんなに引いてんだよ...女の子って独特の甘くていい匂いするじゃん。なのにこいつからはしなかったんだよ。え?きもい?おい、そんな目で俺を見ないでくれ!
ソウタの考えがわかっているかのようにみんなから冷たい眼差しを受けている。
「とにかく、俺はちゃんと言ったぞ。だから早くお前のことと、このバカみたいな大迷宮のことを教えろ」
「むぅ、せっかく創った大迷宮なのにバカにしないでよ!」
「あんな化物を置いた奴は絶対にバカだろ」
「この大迷宮に化物みたいな奴なんていないもん!」
みんなが少し驚いた顔をしている。そりゃああんなに強いミノタウロスと戦ったのに、それを化物呼ばわりしないなんて驚いても仕方ないだろう。
「名前とこの大迷宮を創ったのはいつか教えろ」
「えぇー?どうし、」
「真面目に答えろよ。早く腕をどうにかしたいんだよ」
「え?ここにはキミたちなら余裕で倒せるモンスターしかいないはずなんだけど...」
「嫌味かよ」
みんながこの男に対して怒りの眼差しを送ると、男はなんのことだかわかっていない様子だった。
「あんたがこの大迷宮にミノタウロスを置いたんだろ?」
「そうだよ、君達なら無傷で勝てるはずなんだけど」
「黒いミノタウロスも置いたのか?」
「...え?」
黒いミノタウロスのことを知らない様だ。みんなの方を見ると呆れたような顔をしていた。
俺がいくつかの可能性を考えている時にメイがしびれを切らしたのか男に近付いた。
「本当に知らないんですか?」
「うん、ごめんね?」
「知らないならいいですよ。でも、ソウタさんの腕が治るまで許しませんからね」
「...うん」
なんだか殺伐とした雰囲気になってきたな。セリス達と行動してからは初めてなんじゃないか?
ソウタがそう思ったのは当たりであった。好きな人の腕を消し飛ばされたせいで、彼女達はさっきまで表には出さなかったが相当怒っていたのだ。そして、その原因であるミノタウロスを置いたこの男が大迷宮の創造主だと知ってからは怒りが爆発寸前まで来ている。
「...みんな、いつも通りにしようぜ?あと、お前は早く名前を言え」
「でも!」
「俺の腕は治るアテがある。だから気にすんな」
そう言ってメイの頭を撫でると、顔を赤くしながら「気にしますよぉ」と言っている。
男は中々名前を言わないので、男の方を見ると懐かしそうに俺達のことを見ていた。
「どうしたんだよ」
「あ、ごめんね。昔の僕の仲間のことを思い出してたんだ」
「そうか。で、いつになったら名前を教えてくれるんだ?」
「僕の名前を教えるのは君達が最後かもね」
「そんなことないぞ」
「え?」
不思議そうな顔をするので、この世界に来た俺のクラスメイトのことを話すと、「...そっか」と悲しそうだが楽しそうにした。
そして、ようやく覚悟が決まったのか清々しい顔をして、胸を張りながら名を言った。
「僕の名前はバド!百年前に英雄って呼ばれてたよ!」
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