第45話 スライム
あれから頂上を目指して歩いていたが、モンスターの気配を全く感じなくなっていた。
「安全なのはいいんだが、暇だな」
「暇でいいでしょ!ソウタ君は大ケガしてるんだよ!?もしモンスターが来ても私達で倒すからね!」
「ソウタさんは大人しくしていてくださいね?」
「約束だよ。守れる?」
なんでこんなに守られる立場になってんだ?
なので、腕を片方失っても俺は魔法を使えるから戦えるぞ、と言おうとした瞬間みんなから睨まれてしまった。
「...なんで睨むんだよ」
「だって、俺はまだ戦えるぞ、とか思ってたんでしょ?」
「ソウタ君わかりやすいからなぁ」
「脳筋ですもんね」
え?俺ってそんなにわかりやすいのか?ポーカーフェイスには自信があったんだが、なんだか自信を失ってしまうな...
そんなことを思っていると、今までとは全く違う扉を見つけた。
「今思ったんだが、階段を何度も上がってるのに上に行ってねぇよな」
「そういえばそうだね...」
「ここを作った人は性格悪そうだなぁ」
「セリスの大迷宮の方がしんどいけどな」
「どういう意味なの!」
「まぁまぁ、落ち着いてくださいセリスさん」
ようやくゴールに辿り着いた感じになっていたのに、なんでいつもこうなってしまうのだろう?
半分は自分のせいだということを分かっていないソウタはさっさと扉を開けてしまった。
「あー!何してるの!?」
「何って、開けただけだろ?」
「罠があったらどうするつもりだったんですか!」
「悪かったな」
「なんだか素直だね?」
「...もしかして」
セリスが何か気付いたようにソウタの顔を見ると、少しだけ楽しそうな顔をしていたので確信した。
「この中にでかいモンスターがいたぜ」
「...絶対に罠だったから出てきたんだよ」
「さっきまでモンスターの気配してなかったですもんね...」
「ソウタ、何か言いたいことはある?」
「みんなであいつを倒そうぜ」
既にみんなからの視線は冷たかったのだが、俺がそう言った瞬間に絶対零度のような目で見られた。
だってしょうがないじゃん、モンスターが出てきたんだもん。倒すしかないだろ?
「...はぁ、わかったよ。でもソウタは絶対に前にでちゃダメだよ?」
「...」
「返事は?」
「...はい」
「よろしい」
なんだか久しぶりに母さんに怒られた気分だ。そういえば今どこで何してるんだか知らないな。まぁ、俺には関係ないか...
ソウタがそんなことを考えているとセリスが顔を覗き込んだ。すると、いつもみたいな笑顔ではなく、ぎこちない笑顔をしてしまった。
当然、いつもソウタのことを見ているセリスはその違和感に気付いた。
「どうしたの?」
「何がだ?」
「寂しそうな顔してたから」
「あー、気にしないでくれ。それより早くあいつを倒そうぜ」
話を変えようとすると、むぅー、とセリスが頬を膨らませた。なので頭を撫でて機嫌をとろうとしたがとれなかった。
仕方ない、こんなことで集中できずにケガをしてしまうなら話した方がいいよな。
「...親のことだよ」
「ホームシックなの?」
「違ぇよ!」
「何かあったの?」
「あぁ、気になるなら帰って話す。だから今は戦うことに集中してくれ」
「わかった」
話が早くて助かる。さすがは百五十年以上生きてるだけはあるな!
「...剥ぐよ?」
「ごめんなさい」
なんでいつもわかるんだよ!
そんなことを話しているうちに、メイと茜さんは既に戦うために部屋の中へと入ろうとしていた。
そして、今回俺は援護役ということなので援護役らしく味方にバフをかけるため、イメージする。
「覇王の礼装ッ」
ソウタが創造魔法を発動させた瞬間、セリス達は赤いオーラに包まれた。
「な、何これ!?」
「俺の力をみんなに授けてみました。なので援護はするので頑張ってください」
みんな「え?」といった感じに困惑している。なぜなら、この世界では自分のことは強化できても他人のことは強化などできないからだ。
それを知らないソウタはみんなの予想以上に驚いていることに驚いていると、部屋の明かりがつき、モンスターが光に照らされて姿を現した。
そのモンスターはとても大きいスライムだった。それを見たソウタは「雑魚そうだな」と思ったが、周りの反応を見ると、このスライムのヤバさがなんとなくだが伝わってきた。
「こいつはミノタウロス並に強いのか?」
「いえ、強くはありません。ただ...」
「ただ?」
「服を溶かしてくるんです!」
「そうなのか。天撃ッ」
ドォォォォォォォンッ!!という音が鳴り響き、スライムは粉々に飛び散ってしまった。
「「「キャァァァァァ!」」」
「な、なんだ!?」
悲鳴がした方を振り向くと、そこには服がボロボロになり、服の隙間からキレイな胸や足が見えるようになっているセリス達がいたので慌てて前を向く。
「ソウタ」
「何でしょうか」
「見た?」
「何をだ?」
「茜のあまり大きくないおっぱい」
「え?すごく大きく...」
やってしまった...と思った瞬間、冷や汗が大量に出てきたかと思うと、みんなから黒いオーラみたいなものが見える。
「大きく、何?」
「...そんなことより早く行、」
「何?」
「大きかったです」
そう言った途端、茜の顔は湯気が出そうなくらい顔を真っ赤にし、体を必死に隠そうとしている。
「...えっち」
「...悪かった」
「...もうお嫁にいけない」
「茜さんならすぐにいい人見つかるよ」
「むり、そんな人いない。だからソウタ君のお嫁さんにして」
「はぁ!?そんなのできねぇよ!それに俺にはセリスがいるの知ってるだろ?」
そう言うと茜さんは悲しそうな目をしながら崩れ落ち、涙目で見てくる。そんな目で見ないでほしいんだが...
「ソウタさん、私ももうお嫁にいけません!なのでお嫁さんにしてください!」
「二人とも何言ってるの!?」
「そうだぞ!たかが服が破けたくらいで、」
「「「はぁ?」」」
あ、また地雷踏んだか?
そう思った時には時すでに遅し、女性達に渾身のグーパンをもらってしまった。
「女の子の体を見ておいてそんなこと言うなんて最低」
「ソウタってホントにデリカシーないよね」
「はぁ、戦っている時はあんなにカッコイイのに、残念ですね」
俺の評価がだいぶ下がった気がするが、しょうがないか。
「で、お嫁さんにしてくれるんですか?」
「まだその話を続けるのか!?」
「一夫多妻制って知ってるよね?この世界では公認されてるんだよ」
「茜さんまで何言ってるんだよ!セリスもなんとか言ってくれ」
セリスに助けを求めると、何か考えがまとまったのか笑顔で俺の方をみた。
何か嫌な予感がする...
「みんなソウタのお嫁さんにしてもらっていいよ!」
「はぁ!?いきなりどうしたんだ!?」
「だってソウタの一番は私だもん!」
「...」
「セリスちゃんありがとね!」
「ありがとうございます!」
メイと茜さんが、わーい!お嫁さんにしてもらっちゃったー!と凄くはしゃいでいる。それも、服がボロボロになった状態でだ。
はぁ、もう好きにしてくれ...
ソウタはもうやけくそ気味にそう思うのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます