第34話 指輪の購入
朝起きるとセリスが不機嫌になっていた。
「ソウタのバカ...」
「いきなりどうしたんだよ...」
なんでセリスが不機嫌になっているのか分からないソウタは理由を聞くと納得した。
「昨日の夜、期待してたんだな。ごめんな」
「〜〜!!期待なんてしてない!!」
顔を真っ赤にして怒るセリスを見て笑っていると、メイが部屋の中に入ってきた。
「酷いです!なんで私を置いていくんですか!」
「何回も声をかけたのに動かなかったからだろうが」
「はぁぁ、綺麗ですぅぅぅ♡ってずっと言ってたらそりゃ置いていくよ!」
「え!?私そんなこと言ってました!?」
自覚なしかよ...と呆れながらもケーキがあることを教えると喜んで食べてくれた。買ったかいがあるというものだ。
「で、二人は夜一緒に寝てたんですよね?」
「あぁ」
「セリスさーん!詳しく話を聞かせてくださーい!」
「いいよー」
どこの世界でも女の子は恋バナが好きなんだなと思っているとメイが冷たい目で俺を見ていることに気付いた。
「ソウタさん、こんな可愛い子にまだ手を出してないなんて...あなた本当に男なんですか?」
「お前に関係ないだろ?」
「確かにないですけど、セリスさんがかわいそうですよ!セリスさん言ってましたよ!昨日はめちゃくちゃ期t、むぐっ!?」
「わぁー!!わぁー!!」
メイが何か言おうとした時にセリスがメイの口を押さえつけた。それに抵抗しているメイは少し苦しそうだ。
「メイ!その事は秘密!」
セリスが言うとメイは首を縦にブンブン振っている。それを見たセリスは押さえつけていた手をどけた。
「ぷはーっ!苦しかったです...」
「メイが悪い」
「だってセリスさんがかわいそうなんですもん...」
何か二人で小声で話している。それを見たソウタは聞かないようにするため、外に出かけた。
「さてと、これからどうしよっかなぁ?」
これからどうするか考えると、屋台のおじさんに声をかけられた。
「へい、兄ちゃん!暇なんだったらウチの商品でも見てくれや!」
「おぉー、けっこう綺麗な物がいっぱいあるな」
「そうだろそうだろ?最近こういうのに手を出し始めたんだ!どうだい?買うかい?安くしとくよ!」
「そうだなぁ、ならこれをくれ」
「あいよ!」
俺が選んだのは綺麗な水晶が付いているチョーカーのような物だ。
会計を済ませ、屋台のおじさんにここらへんに宝石店がないかを聞いたら、ちょうど目の前にあるぞと教えてくれた。
「そんなとこで何買うんだい?もしかして指輪か?」
「あぁ、そうだ」
「ひゅーひゅー!やるじゃねぇか兄ちゃん!応援してるぜ!」
「ありがとな、また来るよ」
「おうよ!」
指輪を買うことを決めたのはここの屋台の商品を見て、この前二人にプレゼントをもらった時にお返しをすると約束していたことを思い出したからだ。
宝石店に入り、色々な指輪を見ていると女の店員さんに声をかけられた。
「プレゼントですか?」
「そうだ」
「まぁ!彼女さんのサイズは分かりますか?」
「あぁ」
実は今朝、いつでも指輪を買えるようにと思いセリスの指のサイズを測っていた。もちろんセリスが起きる前にやったのでバレていないはずだ。
「そのサイズならこちらの方にある物をお選びください」
「ここにあるので全部なのか?」
「はい!オーダーメイドでしたらお作りできますがどうしますか?」
「とりあえずここにあるのを見てから考えるよ」
「かしこまりました」
そう言って店員さんは離れていった。ここにある物で全部というだけあってかなりの種類の指輪がある。
そして二時間ぐらいかけてようやく決めた。ソウタが選んだ指輪は、真ん中にダイヤが埋め込まれていて、色はピンクゴールドのものだ。
「彼女さんにお渡しになるんですか?」
「あぁ」
「頑張ってくださいね!」
「もちろんだ」
宝石店から出ると先程の屋台のおじさんがこちらに向かっておいでおいでをするので行ってみる。
「買えたか?」
「あぁ」
「あとは渡すだけだな、俺がアドバイスしてやる」
「頼む」
おじさんはすごく真剣な顔をしながら言ってきたので、こちらも少し緊張してきた。
「いいか?絶対に噛むんじゃねぇぞ?噛んだら一生笑われるハメになるからな、俺みたいに」
「あんた、なんで大事な時に噛んだんだよ...」
「言っとくぞ!?めっっっっっちゃ緊張するからな!?尋常じゃないほど緊張するからな!?俺も渡す前までは普通でいられたさ。けどな!いざ渡すとなったら言葉がでなくなるんだよ!」
「そ、そうなのか。気をつけるようにするよ」
「おう、お前は俺みたいになるんじゃねぇぞ」
「あぁ、ありがとな」
別れ際に聞いてみたいことができたのだが聞いていいものかと悩んでいると、おじさんがその事に気付いたのか自分から言ってくれた。
「ちなみに噛んだけどOKはもらえたぞ。死ぬほど笑われたがな...」
「結果オーライだな」
「まぁな」
そして俺達は別れを告げ、宿へと戻ることにした。だが宿へ戻る途中に四人の女の人に絡まれた。
「お兄さーん、私達と遊ばない?」
「結構だ」
「もうっ、照れちゃって〜」
このこの〜と肘でつついてくる。こういう女の人は嫌いだ。化粧は濃いし香水も付けすぎなのか臭い。
そろそろ限界になったので怒るとすぐに走って逃げていった。
やれやれとため息を吐いていると、後ろから肩を叩かれた。先程のことでイラついていたソウタは怒りを露わにしながら振り向くとそこにはここにいるはずがない人がいた。
「あ、かね、さん?」
「やっぱりソウタ君だ!」
そこにはソウタの人生を正してくれた恩人、椎葉茜がいたのだった。
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