第32話 元のアクアシティ
メイの説教が終わると、俺達はアクアシティの人達に歓迎会をされた。セリスとメイははしゃいでいるが、俺は少し気まずかった。
「観光名所だった山をぶっ飛ばしたのにこんなにもてなされていいのか?」
「何言ってるんですか!あなたはこの街を救ってくれたじゃないですか!」
「けどなぁ...」
周りを見ると少人数の人達は俺達に非難の目を向け、それ以外の人達はまるで英雄を称えるかのような眼差しで見てくる。どちらにしても気まずい状況には変わりない。
「お前らはなんでそんなにはしゃげるんだよ」
「だって美味しいものがいっぱいあるんだもん!」
「ソウタさんもそんなに気まずいなら創造魔法でこの街と山を治しちゃえばいいじゃないですか!」
「そうか!その手があったな!」
すると二人にじとーっとした目で見られた。その目は「え?今まで考えてなかったの?」と訴えている。
そんな目を無視し、創造魔法を発動させるためイメージする。
「それじゃ、天回ッ!」
天回を発動させると、俺の足元に魔法陣が浮かび上がり、それがアクアシティ全体を包んだ。
「ぐっ!これ、は!!」
「「ソウタ(さん)!!」」
この天回を発動をさせるために大量の魔力を使用しているので、膝をついてしまった。
「くっ、お、オォォォォォォォ!!!限界突破Lv10ッ!覇王も発動だッ!!」
その瞬間、ソウタのオーラは覇王を発動したことにより赤色に変わり、アクアシティ全体も赤色の光で包まれた。
赤い光が収まると、アクアシティで崩壊していたはずの全てが元通りになっていた。
一瞬で街が治ったことで、アクアシティに住む人達は驚いて固まってしまっている。
「よし、せい、こ、うだ、な?」
そしてソウタは魔力を全て使ってしまったことにより意識を失ってしまった。
俺が目を覚ますとどこかのベッドの上にいた。
「ここはどこだ?」
「やっと起きた!!」
「うおっ!」
目を擦りながら呟くと、セリスがどこからか腹に突っ込んできた。地味に痛い。
「なんなんだよ」
「彼女が心配してたのに何なのその反応は!!」
「眠いんだよ」
「丸二日間寝てたのにまだ寝るつもりなの!?」
「は?」
二日間寝ていたって?嘘だろ?
そんなことを思っていると、ドタドタドタッという足音が近付いてきたかと思うと扉が勢いよく開かれた。
「起きたんですか!?英雄様!!」
「もう大丈夫なんですか!英雄様!」
「お腹は空いてないですか!英雄様!」
いったいなんなんだこれは?目が覚めたらいきなり英雄呼ばわりされているんだが?
セリスを見ると何故かすごく嬉しそうな顔をしている。
「おはよう、英雄様!」
何故だろう、セリスに言われるとすごく恥ずかしい。
「なんなんだよこれ」
「ソウタがこの街を元に戻したからだよ!」
なるほど、それがこのお祭り騒ぎの原因か。俺のことを非難の目で見ていた人の態度が急変していたので気になっていたのだ。
「私はこの街の長です。ソウタさん、この度は誠にありがとうございます。魔王軍を追い払ってくれて、あまつさえ街まで元に戻してもらうなんて...もう何をしてもあなたには恩を返せる気がしません」
「気にするな、それより山もちゃんと元に戻っていたか?」
「はい!本当にありがとうございます!」
これで一安心だ。ここの観光名所という山を見てみたかったのだ。
そこで気がついたことがあった。メイがいないのだ。
「なぁセリス、メイはどこにいるんだ?」
「...知らない」
「は?」
「あんな泥棒猫知らない!」
「はぁ、いったいなにがあったんだよ...」
ため息を吐いていると、女の人が近付いてきた。
「あのー、メイさんなら牢獄にいますよ」
「は!?あいつ何したんだよ!」
「そ、それが...」
申し訳なさそうにしながらセリスの方をちらっと見てから、教えてくれた。
「ソウタさんが倒れたことに慌てて、人工呼吸をしたんです。それを見たセリスさんがメイさんを縛って牢獄の中へ放り込んだんです...」
「...ちなみに牢獄の場所を教えたのは?」
「...わ、私です!!申し訳ございません!!」
女の人は泣きながら謝ってきたので、驚いていると、セリスがどんどん不機嫌になっていく。
「おいあんた、別に怒ってないから泣かないでくれ、セリスはなんでそんなに機嫌が悪いんだよ」
「...別に」
「何が不満なんだよ」
「...メイとキスしたじゃない」
「俺は気を失ってたんだからしょうがないだろ?メイも悪気があったわけじゃないんだから」
「でも嫌なの!」
女の人の機嫌をとるなど俺には無理だ。だって初めての彼女だし、なんて言ったら女の子が喜ぶかなんて童貞16歳にはわかりません!
「なぁ、どうしたら機嫌を戻してくれるんだよ」
「そういうことは自分で考えてよ」
なので、脳をフル回転させて考えてみる。だが、いい案が思いつかなかったので、とりあえず言ってみる。
「今日もかわいいな」
「...そんな事で喜ぶと思ってるの?」
すごく冷たい目で見られた。最愛の彼女にこんな目で見られるとすごい勢いでメンタルが削られていく。
もう素直に言おう、少し恥ずかしいがこんな目で見られるよりはマシだ。
「セリス、世界で一番愛してるよ。心配してくれてありがとな。俺はお前にしか興味がないからメイのことも大目に見てやってくれないか?」
「...うん」
よし、これでもう大丈夫だろう!
だがそんな思いは一瞬で砕け散った。
「なんて言うと思った?男ってこういう時絶対に「世界で一番愛してるよ」とか言うよね。なんなのそれ?そんなこと言ったら許されると思ってるの?まぁ今回はただの救命活動ってことにしておいてあげる」
「...はい、ありがとうございます」
セリスってこういう時本当に怖いんだよ。もう怒らせないようにしよう。
そう誓うソウタであった。
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