第31話 ソウタの帰還
ソウタが山を吹き飛ばした時、アクアシティの地下で隠れていた人達はもの凄く慌てていた。
「いったい上で何があったんだ!」
「もう終わりだわ...」
「もうそろそろ死ぬんだ...」
そんなネガティブな言葉が飛び交っているが、ソウタのことを信じて待っている人もいた。
「あの、少しいいですか?」
「いいよー」
私とメイが二人で話していると、女の人が来た。
「さっきの男の人って、強いんですか?」
「うん!凄く強いよ!」
「なら、魔王軍の幹部にも勝てますか?」
「え?この街に幹部がいるの?」
「はい...確か名前は、ヴァイス、だったかと」
「!?」
私が驚いている隣でメイも驚いていた。そりゃそうだろう、ヴァイスはソウタのことをボロボロにした相手なのだから。
だけど、勝つのはソウタだと信じている。だって、私の彼氏は世界で一番強いのだから!
だから女の人に教えてあげる。
「勝つよ、絶対に」
「そうですか...」
けれど女の人は不安そうにしている。この人達は魔王軍の手下にさえ怯えているのだから、人の力を信じることができないのも無理もないだろう。
なのでソウタの良いところを話したら、女の人は始め、興味なさそうに聞いていたが、話し続けているとどんどん興味がでてきたように話を集中して聞くようになり、いつの間にか周りにはたくさんの人が集まっていた。すると、
「なんだか賑やかになってんな」
「ソウタ!」「ソウタさん!」
私の最愛の彼氏が帰ってきた!しかも無傷だ!私はそれが嬉しく抱きつくと抱き返してくれた!
「おかえり!」
「あぁ、ただいま」
そのまま抱き合っていると周りから何故か拍手され、ソウタは驚いている。
「なんなんだこれは?」
「たぶん私がソウタのこといっぱい話したからだと思う」
えへへ、と笑いながら言うと「そうか」と微笑みながら言ってくれた。
すると「こほん!」とわざとらしい咳払いが聞こえ、みんなの前で抱き合うのが恥ずかしくなり、ソウタと離れた。
「魔王軍の手下達を追い払ってくれたか?」
「いいや?」
「そうか...やはりダメだったか...」
「何落ち込んでんだ?全員しっかり葬ったぞ」
「っ!?ほ、ほんと、う、なの、か?」
「あぁ」
その瞬間、「「「「「やったぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」という叫び声が響き渡った。
「そんなに嬉しいのか?」
「当たり前じゃないか!俺達はもうアクアシティに住めるなんて思ってなかったんだから!」
「そうよ!それにまたあの景色が見れると思うと...えへへへへ」
ソウタは男の人に詰め寄られ、女の人は男の人に賛同している。
「なぁ、その景色ってもしかして、山が関係しているか?」
「えぇそうよ!もうあれは最高に神秘的な山なの!それにアクアシティの観光名物でもあるのよ!」
すると、ソウタの顔からサーッと血の気が引いている。もしかして、またやっちゃったのかな?とおもっていると案の定の事、
「すまん、たぶん消し飛んだぞ」
「えっ」
女の人は固まった。だがすぐに笑い出した。
「何言ってるの?冗談でしょ?」
「まぁ、違う山かも知れないしな」
「そ、そうよ!きっとそうよ!」
そして女の人は慌てて地上へと走っていった。その女の人に続き、みんなはソウタにお礼を言って地上へと向かっていった。
私達が遅れて外に出ると、先程の女の人がガックリと項垂れていた。
その姿はあまりにもかわいそうであったが、私達は無視し、転移できる場所を探そうとした時、女の人がすごい形相をして歩いてきた。
「どうだった?」
「は、ははは、はははははははははははは」
女の人は狂ったように笑い始めた。私は怖かったのでソウタの後ろに隠れ、ぎゅっとしがみつくと、メイが私にしがみついた。
「お前ら俺を盾にすんじゃねぇ!」
「だって怖いもん!」
「そうですよ!レディーを守れない人は男失格ですよ!」
「山がなかった...ははは、どこにいったの?私の大好きなアクアマウンテン...」
アクアマウンテンという名前の山だったのか、と思っていると女の人がゆらりゆらりとソウタに近付き、肩を揺らした。
「ねぇ、私の山は!?どこいったの!?」
「だから、消し飛んだって...」
「いや!聞きたくない!」
ソウタの顔を見るとすごくうんざりした顔をしている。こういう人はやっぱり嫌いなんだろうなぁ。
「ああああぁぁぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁ!!!!」
そう叫んで女の人は気を失ってしまった。もの凄く怖かった。夢にでてきそうなぐらい怖かったのでソウタの腰を思いきり抱きしめた。
「セリス、少し力を弱めてくれ...」
「む、むりだよぉ」
「そんなに怖かったのか?」
「う、うん」
なら、仕方ないか、という感じに無理やり背負われ、おんぶの状態になった。なのでソウタの首に自分の腕を絡める。
ちなみにメイは、ソウタとセリスの二人の世界に入っていけないので転移できる場所を聞いている。
「えへへ、ありがと」
「おう」
「ちゅっ」
「っ!?」
ソウタの頬にキスをしたら顔が真っ赤になった。それが面白かったので、次は耳を甘噛みしてみると、「ひっ!」と小さく悲鳴をあげた。
その瞬間、セリスの中で新しい扉が開いた。
「ほら、こうされると恥ずかしいんでしょ?」
「や、やめ」
「ふふふ、ペロッ」
「くっ!いい加減に...!」
「こらー!!こんな道端で何してるんですか!!」
セリスがソウタを攻めているとメイに怒られてしまった。
「もう!せめて部屋の中とかでしないとダメじゃないですか!!この街の子供に悪影響でしょ!」
「はい...ごめんなさい...」
「こら!ソウタさんもきちんと反省しなさい!」
「なんで俺まで...」
そしてそれから三時間、メイに説教をされてしまった。
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