第14話 師匠
『やぁ、君が黒輝ソウタだね?私はヤエ。その子の師匠だ!』
と、自己紹介してきた女の人は俺と同じぐらいの背の高さで髪は肩まで、色は金色だ。
「こいつがお前の師匠なのか?」
「そうだよ!でもあんまりこいつとか言わないほうがいいよ?」
そうセリスが言ったとたん、俺の目の前にヤエと名のった女が来た。
「へぇー、すごい映像なんだな。」
『私は映像ではない』
そう言ったヤエは俺をぶん殴った。そして俺は本棚のある方へ飛んでいった。
「いってぇ。ていうか、は?映像じゃないのか?」
「うん!師匠の秘密の奥義なんだよ!すごいでしょ!」
『どうだ、すごいだろ!』
二人とも胸を張っている。
「魔法なのか?」
『あぁ、そうだ。本物の私の体はとっくに土に還ったさ。だがな、お前とセリスにはどうしても言っておきたかったことがあるんだ。だからその時のために霊魂という魔法を使って1度だけ話せるようにしたんだ』
「話しってなんですか?」
『その前にな、セリス。お前は本当に黒輝ソウタと一緒に旅にでるか?』
「うん!師匠が言ってくれたことでしょ?」
『こいつと一緒にいると危険な目にあうぞ?』
「私はそんなに弱くないもん!師匠に負けないぐらいの天才なんだから!」
『ははは、そうかい。なら行っておいで。』
「うん!」
勝手に話しが進んでいくがまぁいい。
「早く話してくれ」
『はぁ、女同士の話し合いに入ってくるなんていい度胸してるねぇ?』
「ならもういい。セリス、行くぞ」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」
『そうだそうだ!待ってくれよ!』
セリスとヤエが俺の腕を掴み動きをとめようとしてきたので、諦めて話しを聞くことにする。
「はぁ、早く話してくれ」
『ふふん、そんなに話しが聞きたいのかい?でもどうしよーかなー?』
なるほど、セリスはヤエに似たのか。そう思い、俺はセリスにくらわしたアイアンクローを今度はヤエにくらわせる。
『い、いたたたたたたたたたた!痛い!離して!』
「ほぉ、そんなに離して欲しいのか。どうしよーかなー?」
『痛い痛い痛い痛い!お願い!はやく離してぇ!』
「ソウタ!早く離しなさい!」
「ぐはっ!」
そう言ってセリスがセリスが俺の腹目掛けて突っ込んできた。そしてその隙に俺の手からヤエが逃げ出し、セリスに泣きつく。
『うぅ、痛かったよぉ、ありがとぉ、セリス』
「はいはい、痛かったね、師匠」
そう言う二人はまるで姉妹のようにみえる。そして数分間それが続き、ヤエが泣き止むとやっと話しが再開される。
『この世界には大迷宮というものが4つあるの。それはね、ここと空の上と海の中と亜空間にあるの。そこに行くとね、魔法と道具をくれるようになっているの』
「亜空間ってなんだよ」
『そのままよ、普通じゃいけない。でもあなたなら簡単よ。だって、空間を切り裂いてそのまま入ればいいだけなんだから』
「は、はぁ?どういうことだよ?」
『だからぁ、亜空間っていうのはようするに、この世とあの世の狭間みたいなものなの。だから普通にはいけないけど、君の創造魔法があれば簡単に亜空間にいけるわ』
「なんで亜空間に大迷宮なんてつくったんだよ」
『知らないわよ、そんなこと。攻略して聞きなさい』
「なんでお前は知らねぇんだよ」
『だってそいつ、俺は亜空間に大迷宮をつくる!って行ったっきりこっちに返って来てないもの』
「そ、そうなのか」
俺はそれ以上なにも聞かないようにした。俺の中の普通がおかしくなると思ったからだ。
『で、魔法と道具を渡すって言ったけどあなたには渡さなくていいわよね?』
「なんでだよ」
『だって私の弟子をあげるんだもん』
「あー、そうか。じゃあこいつで我慢するわ」
「ひどいよ!」
『ははは!そんなこと言って、君はセリスに惚れてるだろ?とんだツンデレだな!あははは!』
「あ゛?またアイアンクローしてやろうか?」
そう言うとヤエは顔を青くし、話しを変えた。
『さて、セリス。旅の準備は済ませているか?出来ていないなら今のうちにやってきなさい?』
「はい!師匠、あの、まだ消えない?」
『あぁ、あと10分は大丈夫だ』
「2分で支度してくる!」
セリスはそう言って走っていったので準備をしてくるのだろ。
『セリスから聞いたかい?』
「何をだ?」
『あの子が、魔人族と人間のハーフだってこと』
「あぁ、聞いたよ。すごく気にしているな」
『そうなんだよ。君に聞きたいことがある』
「なんだ?」
『セリスのことどう思う?』
「普通に、可愛いと俺は思うぞ?」
『ふふっ。そうか、ならいい。私の弟子のことを頼む。泣かせたら殺すからな?』
「それならもう泣かしたぞ。ヤエと同じようにアイアンクローをしてやった」
『貴様、あれをセリスにやったのか!?この悪魔め!』
「お、おい!やめろって!」
ドスンッ!!
という音とともに俺達は倒れた。
「いてて。おい、大丈夫か?」
『だ、大丈夫だ』
するとバサッ!後ろで音がする。
「な、な、なにをしているんですかぁぁぁぁぁ!」
こいつは何を言っているんだ?と俺とヤエは首をかしげ、状況を確認する。そして気がつく。俺がヤエを押し倒しているようにみえる状況になっていることに。
「ち、ち、ちがうぞ!」
『そ、そうだ!これは、その、えーと、仲を深めあっていただけだ!』
「だからって、会って間もない人とそういうことするのはダメだと思います!」
「だから違うんだって!」
と数分間続いた。その騒動が終わるきっかけになったのは、ヤエの体が光始めたからだ。
『あ、悪いな。もう時間だ。』
「師匠、もう、行っちゃうんですか?」
『あぁ』
「私、師匠といられて楽しかったです!」
『私もだ!』
「またいつか、会えますか?」
『もちろんだ』
「じゃあ私、今よりもっともっと強くなりますからね!その時は褒めてください!」
『あぁ』
そう言い、ヤエはセリスの頭を撫でると、セリスは泣きそうになる。
『別れの時に泣かないでくれ。私はセリスの笑顔が大好きなんだ。だから笑ってくれ』
「で、でも!」
『なぁに、永遠のお別れじゃない。ソウタのおかげでまた会えるさ。頼むぞ?ソウタ』
「あんた、いったいどこまで未来を視てんだよ」
『これから先、セリスとまた会えるか視ただけさ』
ヤエの光が次第に強くなっていく。すると、ヤエはセリスを抱きしめた。もうすぐ消えてしまうのがわかるのだろう。
『ソウタ、セリスのこと、頼んだよ?』
「任せておけ」
『ふふっ。セリス、あんたは私の最高の弟子であり最愛の家族だ。愛してる』
そう言ってヤエは消えていった。
「私も愛してます。師匠」
そう言ったセリスの顔は大人びて見えた。
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