瘴気が広がり、魔物が活発化した世界。魔物の被害に苦しめられてきた人々は決意する、全ての元凶となっている「魔王」を倒そうと。魔王を倒す力を持っている者は、神に選ばれし浄化の力を授けられた聖女と、どんな敵をも屠る聖剣を持つ勇者。聖女と勇者を軸に組まれた魔王討伐隊は、世界に平和をもたらすため、旅に出る――
――ここまでは言ってしまえばごくごくありふれた普通の設定……なのですが、本作は一味違います。
なんと、この魔王討伐隊の中に、まさかの魔王本人が正体を隠して紛れ込んでいるところが味噌なのです!前代未聞!!旅に出る前から聖女の護衛を務めてきた彼は、片時も彼女から離れるまいと神官として魔王討伐隊に加わることになるのです。さらに、魔王の気配に敏感な勇者だけが彼の本当の正体(=魔王)に気がついている、という設定も本作のポイントです。勇者の気苦労が半端ない。笑
そして、口では反抗しつつも、魔王アランの敬愛ぶり(時に大分変態)になんだかんだで心を許していて、彼と一緒にいるとどうしても澄ました聖女らしからぬ人間らしい感情が飛び出てきてしまうメルヴィナの言動がとにかく愛らしい! もうもうニヤニヤしっぱなしでした……!
また、人とは違う重たい運命を背負わされた二人が、運命と感情との間で悩み揺れ動く心情描写もとても丁寧で素敵でした。役目を全うしなければならない。だけど、そうかといって心のない人形になりきることもできなくて……。
何故、このような奇妙な魔王討伐隊が結成されることとなったのか。
あなたもぜひぜひ、ニヤニヤしながらこの世界の真実をその目でお確かめください!
聖女を想うあまり、正体を隠して護衛を務める(やや変態な)魔王。
皆の前では自分を抑えながらも、魔王の前では素顔を見せてしまう聖女。
そんな魔王の正体に唯一気付いている勇者。
この設定がお見事です。いわゆる「なりすまし型コメディー」なのですが、それに勇者が気付いていることで2人の会話がニヤニヤできるものになってます。
そしてその魔法本人はといえば、聖女に尽くすことに全てを懸ける愛すべき変態。妄想と欲望が入り混じる彼の台詞は読み応え抜群。ずっと読んでられますね。
トーンはほのぼのしつつ、クスリと笑える恋愛ファンタジー。オススメです!