あなたの世界とわたしの世界
膤古-yukiko-
第1頁 雪
「おい!男女?いや、女男だっけ?」
「どっちでもいいじゃん!キショイし!」
「おまえさー?アレだろ?"放置子(ほうちご)"ってやつ!!」
「なんか言えよなーー!?ほんっと暗いやつぅーー」
「……」
下校中、毎日くり返されること。
学校に行くと、これに人数が増える。
殴られたり蹴られたり、陰口を言われたり、ものを隠されたり、捨てられていたり、"シネ""学校くるな""気持ち悪い"とか、よくある落書きも色んなものにたくさんされる。
「きっもちわるーーーーーーーー」
ちょっとかすっただけで『呪い』と言って、他の人たちにタッチして周られたり、
虫とかの死体が給食にバラまかれたり、先生も見て見ぬふりをする…まあ、よくあるイジメを受けていた。
「おい!何か言えって!!!!」
そう言ってランドセルを叩きつけてきたのを合図に、その場にいた全員が私に襲いかかってきた。
11歳
それなりに成長してきた身体と力で、殴る蹴る引っ張る突き飛ばす服を脱がすまた殴る蹴るくり返し
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「……なあ、もう行こうぜーー?つまんねえし、汚ねえしよーーー」
一通りわたしをイジメ抜いた5人が満足して去って行った。
もともと汚くてボロボロだった服がさらに着れたものじゃない状態になっていたけど、それしかないのでもう一度着て、立ち上がる。
「痛……」
今日、初めて喋った言葉がコレ。
「ふぅ…ふぅ……ぅ……」
あちこちが痛むけど、一番やってしまったのは脇腹らしい。
こういうとき、重くてゴツいランドセルとかいうものが憎たらしい。
家に帰っても、母親は蒸発、父親は滅多に帰ってこないし、帰ってきたとしても私を見ないし、そもそも興味もないのですぐにまた出ていく。
「うえっ……あ"……ぅぇぇ、がぼっ…!?」
虫の死体を避けながら食べた給食が、胃液と一緒に出た。
「はぁ"………」
もったいないけど、今日は多分振り込まれているお金があるから、夜はカップ麺が食べられる…と思う。
「しょっぱい…」
口も目も、流すものはしょっぱい味がする。
「ん……」
バラバラになった教科書とノート、筆記用具をかき集めてランドセルに押し込む。
側にあった電柱に体重を預けて、息を整えて歩く。
ズキズキと痛む身体とボロボロと流れる涙
自分が嫌でも生きていると感じる証拠が、大嫌いだった。
大人も子供も、誰も信じられない。
何もできなくて醜い自分も大嫌い。
人間が、大嫌い
人間がいない世界なら
自分が人間じゃなかったら
どんなによかっただろう
毎日そんなことばっかり考えて過ごした。
「…冷たい」
鼻先がひんやりと冷えた。
空を見上げると、フワフワと雪が舞っていた。
そういえば、今晩は特に冷え込むとニュースで見た気がする。
「今日は、大盛り豚キムチラーメンにしよう…」
少しずつ喋るのに、白い息が出る。
ああ、今日も生きてるんだなあ…………やだなあ……
そんなことばかり考えて過ごす、ただ生きているだけの日々。
明日も、またそうなんだろうな……
耳と鼻がジンジンと痛む。
身体に寒さが沁みる。
頬が凍るかと思った。
震える自分を誤魔化すように、またくり返すだけのために、大盛り豚キムチラーメンのために、ATMに向かった。
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