第二章 13
二二三五年、一月。
新年の到来など、二体にとっては露ほども関係のないことだった。夫婦は第三階層の内装作業を終え、第四階層の居住区の掘削に着手していた。語り合うべきことがなくなった二体は、長年連れ添った夫婦のように、黙々と作業に勤しんだ。
一ヵ月半後、夫婦は早くも第四階層の掘削を完了した。二度の掘削を経験したことで、さらに効率よく作業できるようになった二体は、これまでよりも早く掘削作業を終えることができるようになっていた。夫婦は、速やかに第四階層の内装作業へと移行した。妻にとって、居住区の仕上げ作業は特別な意味を持っていた。居住区は、これから生産する新生ロシア人が生活を営む場所であり、ベロボーグ計画の重要段階である子育てをする場であり、彼女にとっての主戦場だからだ。
妻は積極的に細部のデザインに言及し、夫はそれに賛同しながら作業を進める。夫婦は掘削して出た岩くずを工場で凝縮加工して深成岩の
いずれ生産される新生ロシア人たちも、さぞ喜ぶことだろう。夫婦はそのように思考しつつ内装の細部を仕上げながら、三歳児に食事をさせる様子をコンピュータ上で模擬訓練し、未来に備えるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます