星屑だって、ヒーローだって

寿タヱ

プロローグ


何かを失う。


失った。


着いた頃には、もう遅くて

恐ろしいくらい美しい君が、真っ白なベッドで

眠っていた。

眠っていると思いたかった。


約五年振りの再会がこれなもんだから

俺は、涙すら出なかった。

ただ、心に穴が空いた気分だった。


俺が唯一、親友と呼べるたった一人の存在。


「貴方を守りたいって言ったら、

貴方は笑うだろうね。きっと」


君のそんなシャボン玉みたいな、声。

君からしたら、沢山いる友達の中の一人。

だけど俺からすると、唯一の......



「貴方......川野さんでいらっしゃいますか?」


思い出に浸る俺を、遮って来たのは

中年の男。

彼は、親族だと言っていた。

さぞかし、贅沢な生活をして来たんだろう。

シャツからはちきれそうな、贅肉が物語ってる。


「あぁ、俺、川野であってますよ」


こんな男には微塵も興味がない。


しかし、そんな気持ちの俺を気にもせず

資料が沢山入っていそうなビジネスバッグを漁ってから、


「これ、亡くなった浜さんの遺言のコピーなんです。

そこに貴方の名前が入ってしまして......」


と、無造作に折りたたまれた紙を渡して来た。

そこには確かに俺の名前があった。

しかし、問題はその内容だった。


"私が死んだら、私の大切な弟の真空を彼に預けて欲しい"


5秒、いや10秒は停止した。

しかし、15秒後には見つけてしまったのだ。


儚げな、色素の薄い髪と瞳。

真珠のような白い肌に、愛らしい桜色の唇。


俺の親友、浜 色雨(いろあ)の生き写しの様な、


まだ少年の浜 真空(まそら)だった。

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