神様のしょうもないミスで死んだので異世界でチャリダー無双します

メガネ太郎

第1話 神様はうっかり者

 いきなりだが、バケツをひっくり返したような雨という言葉を知っているだろうか。雨が非常に強く降っているときに使う言葉だ。 さて、なんで急にこんな話をしたのかというと……僕は日課の真っ最中に突如発生した大量の水に巻き込まれたのだ、なぜこんなところに突如としてこんな量の水がと考えたがそんな思考は水と共に流されてしまう。


「あばばば、ちょっまやばい死ぬ?!」



 夏のある日突如起こった水害により一人の青年が死んでしまうという悲惨な事故起きる。大量の真水が突如として発生した原因が全く分からない。そして、この現象は学者たちを大いに悩ませた。 数々の可能性を上げたが何一つ立証できずそして、誰一人その真相を明かすことはできなかったという。


 そして原因がわからないままこの事件は自然発生した水災害として処理された。 


 尊い犠牲となってしまった新庄走太19歳の遺体は警察の必死の捜索末発見できずそのまま葬儀は行われた。

 こうして謎の水害事件は幕を閉じたのだった……



 ーーーー




「いや、本当にすまんかった」


 目の前で一人のおじいちゃんが土下座している、それはもう見事な土下座だ。


「え、っとあれなんで俺生きてるんだ?てか何この状況」


 全く持ってついていけてない状況に混乱しまくっていたが周りを見渡すと察しがついてしまった。


 どこを見ても辺り一面真っ白だ。今いる場所だけ椅子とテーブルがあるがそれ以外は全く何もない。

 一瞬夢かとも思ったがどうもそうじゃないらしい。


「えーっと、まずは頭を上げては貰えませんか? それと、この状況も説明していただけるとありがたいんですが……」

「そ、そうじゃな。いきなりすまんかった」


 そう謝りながら立ち上がると何もなかったはずの場所に突然椅子が出現するとそれに座る。


「それで、一体ここはどこなんですか?」

「ここはな、神々が住む世界そうじゃな神界とでも言えば分かりやすいかのう。そして儂は輪廻と生命を司る神じゃ」


 神が住む世界、か……まあ、なんだろう普段なら絶対嘘かドッキリだと考えて、信じる事なんてできないけど、今そう言われると納得できてしまう。だって目の前のおじいちゃんからも神様オーラすっごいでてるし。それにうっすら覚えている、僕の最後の記憶からすると僕は死んじゃった……のかな? 段々と意識が薄れて凄く苦しかったけど……


「本当に申し訳ない」


 神様は再度土下座をする。


「いや、全然理解が追い付かないんですが。それに、今僕何も喋ってないですよ」

「ああ、一応こんな儂でも神の一柱だ。人の心を読むくらい造作もない」

「勝手に人の心読むとか酷いな。神様ならなにやってもいいと思っているタイプか(へー、それは凄いですね)」

「おぬし言っていることと思っていることが逆になってるぞ?!これは勝手にそうなっているだけで意図的にはやっておらぬ。てか、案外おぬし酷いな?!」


 流石神様ノリも神様だ。 心を読む力も本当みたいだ。


「いやいや、意味が分からんぞ。と、こんな話をしている場合じゃなかった。とても言いにくいのじゃが……」

「ん?僕が死んだこと?」

「そうおぬしは死んだのじゃ……何故死んだと言われてそんなに冷静なんじゃ。普通いきなり死んだと言われたらもっと騒ぐものだというのに」

「まあ、余り現実味がないっていうのもありますけど、殺されたとかなら理不尽を感じますが、事故や災害ならしょうがないかなと」


 まあ、これが意図的だったりしょうもなかったら怒ったりすかもしれないけどね。

 ん、そういや神様がさっき土下座しながら誤っていたよな……おいなんで目を逸らすそっちにはないもないぞ。きこえてるんだろ?


「いや、そのな、これは不幸な事故なじゃ。決してわざとじゃないぞ」

「大丈夫ですよ。怒ったりしませんから(あんまりのもしょうもなかったらどうしてやろうか)」

「う、嘘じゃ。なんじゃその最高の笑顔と心の声は!怖すぎじゃろ」

「もういいから早くしてください」

「うう、段々儂の扱い酷くなってるぞ」


 全くなんて神様だ。まるで僕が神を脅しているみたいな言い草じゃないか。


「だからそうじゃと言っておろう」


 神様がぼそっと何かを言っているがニコっと最高の笑顔と無言の圧力をかけとく。


「最近の人間は神をなんだとおもっているんじゃ……わかったわかったからその笑みやめい。ふぅ、そうじゃなまず何から話したらいいか」

「手短に要所だけまとめて下さい」

「い、いや。まずここはまず回想シーンを……」

「手短に、まとめてお願いします」

「ア、ハイ」


 神様がさくっとまとめた内容がこれだ。


 神様の趣味である盆栽の手入れ中に誤ってバケツをひっくり返してしまう。

 本来なら現世に干渉することはないのだが何故か神界に綻びがありそこから水が流れてしまった。

 神界の水は無限水というらしく文字通り無限に流れるらしい。

 水が現世にこぼれていることに気づいた神様は慌てて止めようとしたが間に合わず、漏れた水に巻き込まれた僕が窒息死してしまった。

 あまりにも申し訳ないと思った神様が僕をここ神界に招いて謝罪をした。


「なるほど。ようは神様のうっかりミスで僕が死んだという事ですね」

「はい。その通りですじゃ」


 思った以上に随分としょうもない理由で死んだみたいだな。

 全くもってどうしてやろうか……取り敢えず、煮るか焼くか悩むな。


「おぬし本当に物騒な事を考えるな?!」

「え、いえいえ思っているだけで実際にはやりませんよ?」

「あたりまえじゃ!」


 全くこの神様は僕のことを何だと思っているのやら。

 さて、ざっと今の状況は理解できたけどこの僕は一体どうなるんだろう? 謝罪も終わったし、このまま輪廻の輪とやらに戻されるのかな?



「ああ、そのことなのじゃが、もしおぬしが望むなら転生させることが出来るぞ。ただ、一度死んでしまった場所世界では生き返ることができんのでなぁ、また別の世界となるがの」

「それはあれですか。よくある異世界転生コースなんですか。異世界で俺つえーをやれるんですか?」


 まさか、転生が本当にあるなんてまるでこの方は神様じゃないか。 


「いや、だから儂神様だからね? これでも偉い方なんじゃぞ?」


 ん、なんかしょうもないミスで人の人生ぶっ壊した自称神様がうるさいな。 まあ、でも異世界か~あっでも異世界と言えば争い事がやたら多いとか、生物が滅茶苦茶強いとかあるよね、流石にそれは嫌だな。


「それは本当に申し訳ないと思ってますですじゃ。で、でも儂本当にえらいんじゃぞ……なんじゃ、その人を疑う目は、いやわかった、わかったからやめい」


 いやだってねぇ。趣味でうっかり人を殺すような神様じゃねぇ。


「だから、いやもうよい。今回は儂のミスが招いたことじゃしな。だが、転生に関しては安心してよいぞ。流石にそんな危なかっしい世界に行かせたりはせんよ。 比較的に安全な世界に行ってもらう。こんな世界がいいとかあればある程度聞くがどうする?」


 おお、なんて良い神様なんだ。さて、どんな世界か……そこそこの安全は欲しいよな。そりゃあ、危険がない場所はないだろうけど、せめて世界規模の戦争や争いがない地域か世界にしてほしい。


「ほう、なんじゃやはりおぬしも争いが好きなのか?」

「どこをどうしたら僕が戦いを望む変態みたいなことになるんですか?」

「いや、そこまではいっておらんぞ。望む世界といったであろう争い事がない世界とは言わないのか?」

「別にだからって争うのが好きな訳ないじゃないです。でも、争いのない世界というのは同時に先のない世界だと僕は考えているので」

「ほう、なぜじゃ」

「だって、そんなの思考を放棄して現実から逃げているだけじゃないですか。生物は考えるから争い。争いから進化を選ぶ。争いの全くない世界というのは即ち進化することない、未来のない世界だと僕は思います」

「なるほどのう。争いからしか得るものがない、か。それも一つの答えじゃろう」

「そうだ!大事な条件があった! 自転車がある世界ってありませんか?」

「会話がいきなりぶっ飛んでぞ。なんじゃその自転車とは、ああ、いいなんかおぬしから説明を聞くとややこしくなりそうじゃ。ちょっとまっておれ」



 なんて感のい……ゲフンゲフン人の親切を無碍にするなんて、ちょっと抗議じゃない詳しく説明した上げようと思ったのに。 にしても何をしてるんだろう?急に黙ってぶつぶつ言っているが。


「ふむふむ……なるほど。地球で発達した乗り物の一種か。それとおぬしさっきから聞こえておるからな?それはそうと、ちと困ったことになってな。儂の管理している世界でまともにその自転車が発達している世界はおぬしいがいた世界以外みつからんかった」

「なら転生のお話はなかったことでお願いします。短い間でしたがお世話になりました」


 自転車がないならようはないし、生きる必要もないしさっさと輪廻に帰りますか。


「いやいや、ちょっと待ておぬし何勝手に輪廻に帰ろうとしているのじゃ!? それに話はまだおわってないぞ」


 いいや終わったね。自転車のない世界なんて必要ない……そんな世界滅んでしまえば、いいや僕が滅ぼしてやる!


「だから待てといっておろう。それに何とんでもなく物騒な事考えているんじゃ?! 確かに自転車が発達した世界はないと言ったが別に解決策がないわけじゃないぞ」

「それはなんですか!?自転車の為なら世界だって救って滅ぼしますとも」

「だからまずその物騒な考えをいや、もうよい話が進まない。それで解決策は二つある」

「二つも?!」

「おお、すっごい食いつきじゃな。よしよし、まず一つ目だが化学系世界に行き1から自分の手で作る。勿論必要な知識はこちらで用意する。この方法ならまず安全を保障しよう。だが、この方法だと時間がとてもかかるのが欠点といえよう。そして、二つ目じゃがこちらは自転車こそすぐ手に入るが多少のリスクがある」

「リスク?」

「そうじゃ、魔法系世界に行くという方法じゃ。この場合自転車を魔道具として渡すことになるのう」

「魔法系世界と魔道具っていうのはあれですか、よくあるファンタジー系の世界って事ですか?」

「その通りじゃ。この世界には魔物という生物も存在する上に治安もおぬしのいた場所ほどよくはない」


 ふむ、安全だけど理想の自転車を手に入れるまで時間がかかるか、命の危険を冒して手っ取り早く手に入れるか……まあ、答えなんて決まっている。


「でわ、魔法系世界でお願いします」

「ふむ、やはりそちらを選ぶか。あいわかったしばし待っておれ今話をつける」


 また、ぼーとしているな。話をつけるって他にも神様がいるのかな?


「いや、ちょっとまて何故そうなるのじゃ?!儂おぬしの上司……いや、はいすみません。はいそうです。わかりました。それでいいです」


 なんだろう、このおじいちゃんが急にただ残念なおじいちゃんに見えてきた。今明らかに部下?から叱責されていたよな。


「ゴホン、待たせたな。これがおぬしの自転車じゃ」


 わざとらしく咳ばらいをしながら神様は一つの球体をくれた。 いや、どうみてもこれ水晶なんですけど?


「ふふふ、なんとそれは万能自転車じゃ。おぬしの知識にあるありとあらゆる自転車に変化する神話級アイテム魔道具じゃ」

「おお!まさかの造像を超えてきた!なんだ、ただ残念なおじいちゃんかと思っていたけどやはりあなたは偉大な神様だ」


 まさか、僕の知識に自転車なら何でもと言われるとテンション上がるな! ロードバイクにマウンテンバイクそれにBMXと夢が膨らむ。 これだけでも危険を起こすだけの価値があるといえよう。


「喜んでるところ悪いんじゃが、それを渡すにあたってちーとばかし条件があってな」

「条件?なんですか?いえ、なんだっていいです。この自転車?をくれるならなんだってしますとも。世界救いますか?魔王ぶっばしてくればいいですか?悪い王様に正義鉄拳食らわすとか?ああ、ダンジョンもあるか、ええ、ええなんでもしますよ。さあさあさ、早く条件を言ってください」


 余りのテンションの高さに神様はドンびいているけど気にしてはいけない。


「おおう、薄々は気づいておったがおぬしの自転車に対しての熱意が半端ないのう、もはや執念とも言うべきじゃな。して、その条件なんじゃがある神に頼まれてのう、不足している魔力の補充を頼みたいのじゃ」

「補充って何をすればいいですか?」

「何簡単な事じゃ。向こうの世界で自転車をこぎ続ければよい、それようの能力も渡すしそう難しくはない」

「ようはいつも通りの生活してればいいんですね」

「そうじゃ。それともう一つ先程その水晶はおぬしの記憶にある自転車なら何でもと言ったが、それには一つ条件がる。それは、魔力量じゃ」

「魔力量ってそもそも僕魔力なんてもってないと思うんですが。あっそれも一緒にくれてりするんですか?」

「その通りじゃ。そして魔力が増えれば増えるほど乗ることの出来る自転車やパーツがが増えていく。そして最終的にはおぬしの理想通りの自転車になるであろう」



 なるほど。ただ自転車を渡されるよりよっぽど面白そうじゃん。いいね、いいよ。こういうの大好きだね。好きな事して好きなものを得る、折角くれたチャンスを大切にしなきゃ。


「ん、問題ないようじゃな。 それと向こうの世界で役に立つスキルと多少の金銭も渡しとく、流石に無一文で投げ出されても困るじゃろう」

「何から何までありがとうございます。やっぱり貴方は最高の神様だ」

「そうじゃ、儂は神様じゃからな。よし、では渡すスキルと物は直接脳内に送るので向こうに着いたら確認するがよい。あと最低限の知識と周辺の地図も入れておくとしよう。 これが最後になるが何かあればきくぞ」

「大丈夫です。あとは自力でなんとかしてみせます」

「そうか、ならさっそく転生の儀を始めるとしよう」

「はい。お世話になりました。神様のことは忘れません」

「ほっほっほ儂もおぬしのことは忘れる事はないじゃろう。こちらのミスでこんなことになってしまったがあれじゃが、楽しかったぞ」

「そうですね。神様のうっかりミスで死んでしまいましたが、心機一転して新しい人生楽しんできます」


 最後の会話が終わると、新庄走太の足元に魔法陣が浮かび上がる。そして次第に光が強くなり、転生の儀が発動される間際にふと思い出したかのように呟く。


「神様、先程から後ろに女神らしき方が睨んでいますよ?」

「へ?」


 僕の最後の一言に顔が真っ青になった神様を最後に見た新庄走太は満足げに旅立っていった。  

 その後起きるであろう神同士の修羅場を想像しながら……

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