ニャンコと飼い主。

桜牙

季節外れの花火大会

 夏の気配がすっかり消え青く高い秋の空。そこに浮かぶ太陽が縁側を温め最高のベッドに変えていた。


 寝ようかな。そう思って横になるがなかなか寝付けなくてまどろんでいた。

 空に浮かぶ雲をかき消すようにドンっという音がする。今夜は少し季節外れの花火大会。そのリハーサルの音だ。

 初めは驚いて目が覚めたが、だんだんその音のリズムが心地よくさらに深く沈んでいった。


 目が覚めるとあたりは少し暗くなっていた。空に月が見える。そろそろ晩御飯の時間だな。そんな事を考えながら座って月を眺める。


 しばらく眺めていると大好物のサンマの匂いが漂って来た。いてもたってもいられなくて、あっちにいったりこっちにいったりうろうろしていた。

 ドンっと突然また大きな音がした。どうやら花火大会が始まったようだ。

 空に花火が描かれてるのを眺めていると誰かが縁側に出てきた。

 その気配には気づかなかったが大好物の秋刀魚の匂いでそれに気が付く。

 

 珍しく浴衣を着た彼が、ゆっくりとこちらに近づいて来る。その手にはお盆を持っており、その中に秋刀魚があると想像した。お造りと焼き秋刀魚それにお酒をお盆に乗せて持って来ていた。僕がいることに気づくと隣に座って、お盆を置いた。

 お盆の中には焼いた秋刀魚とお造り、それとお酒が乗せてあった。

 座って開いた彼の膝に僕は飛び乗り座る。彼の方を見上げると、お造りを一切れくれた。

「にゃーん」

 僕が鳴くと彼は優しく頭を撫でくれた。

 彼はお酒を注ぎ少し飲み、焼き魚を少し食べた。

「いい夜ですね」

 花火を見ながら彼が言う。

「にゃーん」

 それに応えるように僕も鳴いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ニャンコと飼い主。 桜牙 @red_baster

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ