#263(6週目水曜日・午後・セイン)

「せい! やぁ! ったぁ!」

「 ………。」


 昼、遅れてギルドに顔を出すと、当然のようにスバルとSKが手合わせをしていた。傍から見るとこの2人、お互い戦闘狂で、上手くやれているように見えるが…、やはり静と動、同じようで真逆をいくスタイルが見ていて違和感を感じてしまう。


「あ、お兄ちゃん、おつかれー」

「おつかれさん。そう言えばニャン子は来ていないんだな?」

「あぁ~、まぁ避けられている部分があるのは事実だろうけど、忙しいのは本当みたいだよ?」

「そうらしいな。詮索するつもりはないが……」


 手合わせを眺めながら、動画編集をするユンユンと他愛のない会話をする。


「そういえば、用事は大丈夫だったの?」


 先ほどまで、例のPKKについて草餅のところに話を聞きに行っていた。結論を纏めると「詳しいことは分からない」となる。本当に知らないのか、あるいは言えないのか…。こういう時は多角的な視点が必要になる。そのためにも、昨日はレイにも話を聞いていた。


「あぁ、まぁ概ね予想通りだったかな? そっちはPKKについて、何か聞いているか?」

「例のED狩りよね? 自警団が1枚噛んでいるのは確かだと思うけど、それ以上は…」


 PKKは、EDメンバーを中心に「悪質なPKを取り締まる」と言う名目でおこなわれており、中には指名手配されているメンバーまでいる。これ自体はBLを公開した時点で予想は出来ていた展開だが、気になるのはタイミングと勢力だ。


 侵攻イベントが終わった直後に、侵攻イベントに参加して"いなかった"EDメンバーが標的にされる。どう考えても同盟の制裁だろうが…、なぜか同盟は関与を否定している。つまりは「俺には教えられない」って事なんだろうけど…、こんなあからさまな制裁を秘密にする意味はあるのだろうか?


「師匠、お疲れさまです」

「よっ、アニキ」

「2人ともおつかれ。手合わせはもういいのか?」

「ん~、スバルには悪いけど、やっぱりアニキじゃないとな~」

「いや、ボクだって!?」

「あぁ、わかったわかった。スタイルが噛み合っていないのは見ていてよく分かる」

「「 ………。」」


 気まずい雰囲気。仲が悪いとまでは言わないが、残念ながらこれ以上の進展は見込み薄のようだ。まぁ、恋愛否定派の俺としてはコレくらいの方が安心できるのだが…。


 話はそれたが、制裁だって話なら、むしろ俺に声がかかってもいい話。俺に頼めば、制裁だけでなく、関係が冷え込んでいる俺への関係強化にもなって一石二鳥だ。さらにせないのが、そこに自警団も絡んでいる点だろう。


「そうだ! SKも、よかったら私の動画に出演してみない? あれだったら、戦っているところを素材として使わせてもらうだけでもいいんだけど…」

「ん~、アタシの映像を使うのはいいけど…、出演とかはな~」


 別に、EDメンバーの情報をBLに登録して、結果として「EDに恨みを持っている自警団がPKKに参加する」と言う流れなら、まだ理解できる。しかし、時系列を追ってみると、自警団は最初からPKKに参加している。敵対組織であるはずの、自警団がだ…。


「意外ですよね。SKって、もっと派手で目立つのが好きだと思っていました」

「戦闘スタイルはそんな感じだよね~」

「えぇ、アタシってそんな風に見られていたの!?」


 俺よりも自警団に頼るって事は、これからはC√に頼らないクリーン路線でいくって事なのか? しかし、それなら参加したPKも吊るし上げるべきだ。まぁ「どちらに転んでも大丈夫なように」って事なんだろうけど…。同盟は基本的に(リーダーが不在なので)方針を多数決で決める。白の賢者が居なくなっただけで、方針が反転するほど変われるものだろうか?


「そう言えば、基本ソロですよね。今まで臨時PTとかに参加しなかったんですか?」

「SKの腕なら、けっこう誘われたんじゃな~い?」

「ん~、ちょっとだけ参加したんだけど…、勝手に突っ走るなって怒られたな」

「「あぁ~」」


 考えられるのは、意見が割れて、なおかつ方針を1本に絞り切れない状態になっている事だ。分裂しかかっていると思えば喜ばしい事だが、不確定な動きをされるのは困りものだ。


 特に自警団に協力するのはいただけない。自警団はすでに無視できないほど影響力を拡大している。それでも、(ユーザーとして)行き過ぎた行動さえなければ問題はない。BLは確かに脅威だが「初見の相手に全く意味がない」事や「転生後の明確に勢力が分かれた状態では必要性は薄くなる」などの難点を抱えている。しかし、BLはそれでいいのだ。あくまで「未転生時は自重しろよ」と言う運営の意志にそった形になっている。


「うわっ、納得された。どうせアタシは協調性ないですよ~」

「協調性もそうだけど、SKの場合だと動きと言うか、反応速度についてこられる人が限られそう」

「たしかに」

「そうかな~」


 しかし、能動的にPKKまでするようになれば、転生PCも標的になりかねない。そうなれば完全に√間の均衡が崩れて、Cの進行度が足らずに重要イベントが発生しなくなる。それは同盟も容認しがたいだろうし、俺も困る。別に最速を目指してはいないので、多少遅れる分にはいいのだが、多少ですまないのなら、それは許せるものではない。


「スバル君だったら、その辺大丈夫じゃない?」

「いや、でもボクは…」

「そう言えば、その首輪、昨日までなかったよね? お兄ちゃんと狩りに行ったときに手に入れたの?」

「あ、はい! えへへ、師匠に貰っちゃいました~」

「ん~、でも、ちょっと見た目がパンクすぎない?」

「え? そうですか?」

「ははは。でも首輪だけだから世紀末っていうより、ドMの人みたいだよね~」

「え~、ボク、そんな風に見えますか?」

「でゅふふ、スバル君にそんな趣味が…」

「いやだな~。ボク、そんな趣味ないですから」

「「ははははは~」」


 このまま自重してくれるなら、同盟や自警団には介入するつもりは無かったが…、どうやら、まだ安心して放置できる状態ではないようだ。場合によっては"アイツ"にも声をかける必要が出てくるだろう。




 こうして、悩みは尽きないものの、ひとまずは狩りへと出かける事となった。

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